中国 深センのUBTECH ROBOTICSは「ハイテクと高齢者介護サービス産業の融合」をテーマにしたフォーラムを8月31日に開催した。UBTECHは日本のビジネス向け市場で「Cruzr」(クルーザー)の開発で知られている。
フォーラムでは、スマート高齢者介護のグローバル戦略「The Global Strategy of Smart Elderly-care of UBTECH ROBOTICS CORP LTD」を発表した。また、ヘルスケアと高齢者介護サービス業界の専門家およびプロが集まり、テクノロジー主導のスマート高齢者介護システムの開発、導入について議論し、同分野における貴重な経験と知見をお互いに紹介した。
さらに、UBTECHはこのイベントで、具体的な高齢者介護シナリオに対応した複数のサブシステムを備えたスマート高齢者介護システムの構築戦略を発表し、ヘルスケアや高齢者介護領域向けのロボット製品、5機種を紹介した。そして、China Merchants Health Care、今月に合弁会社を設立の予定の日本のメディカル・ケア・サービス株式会社(MCS)、China Academy of Transportation Sciences Groupとの戦略的提携協定も発表している。
高齢者層向けに知能ロボットとAI技術を連携
クラウドベースのUBTECHスマート高齢者介護プラットフォームを開発し、高齢者層向けに知能ロボットとAI技術を組み合わせている。システム全体が、自宅やコミュニティーセンターで生活する高齢者に介護サービスを提供する。
クラウドプラットフォームベースのソリューションが、サービス管理、日常ケア管理、セキュリティーと健康管理、物忘れ予防、感情サポート、リハビリの6つの主要シナリオに焦点を当てている。高い信頼性と安全性を備えた包括的なシステムを構築し、高齢者に幸福で健康的かつ質の高い生き方の提供を目指している、という。
UBTECH ROBOTICS CORP LTDの共同最高技術責任者、兼、UBTECH Healthcare Business UnitゼネラルマネジャーのHuan Tan氏は、同社がいかにAI、ロボット、その他のハイテク手法を開発、統合し、高齢者の生活の質を向上させてきたかを紹介した。同社は、こうした技術を高齢者介護業界に応用し、新しいサービスとエコシステムをつくり出すことで、実質的に新しい価値を業界に生み出したい考えだ。
新たなテクノロジーがもたらす新サービスには、積極的な意思疎通や親交、途切れない自動的なドア・ツー・ドア・ケア提供のための自律的ナビゲーション、個人と環境の安全性の継続的監視、認知障害者・心身障害者用の正確な評価、介入計画、リハビリ訓練などがある。
この新しいエコシステムは、ロボットとスマートデバイスを高齢者介護サービスシステムに統合し、人間、ロボット、機械、デバイス、ITインフラによる協働作業を可能にするとしている。
これらのロボットはインテリジェント・サービスプロバイダーと見なされており、高齢者向けヘルスケアサービスの信頼性と質の大幅な向上を実現する重要な技術革新である。施設、コミュニティー、家庭内で、高齢者介護サービス産業とコネクテッド高齢者介護サービスのエンドユーザー向けに、新サービスと新しいエコシステムに基づく新たな価値が生み出されている。施設やコミュニティーの運営は大きく改善され、高齢者はより正確で親切かつ積極的なサービスを受け、これまで以上に質の高い生活を送れるようになることが目的だ。
5種類のサービスロボットを展示
UBTECH Healthcare Business Unitは、歩行支援ロボット「Wassi」、コンテナ型配送ロボット「DR」、スマート車椅子ロボット「PathFynder」、オープンシェルフ型配送ロボット「OSDR」、コンパニオンロボット「Welli」と、5つのサービスロボットを展示した。
これらのロボットは、スマート高齢者介護エコシステム内のその他のハードウエアやソフトウエア要素と組み合わせることで、介護者の不足、世界的な高齢化人口の急増、質の高いヘルスケアサービスに対する需要の高まり、といった各種の課題に対処するもの。
加えてUBTECHは、高齢者介護サービス領域でサービスロボットとIoTデバイス間のサービスを調整できるクラウドベースのインテリジェント高齢者介護サービスプラットフォーム「スーパーブレーン」を初公開した。これらのロボットは、介護施設、介護付き住宅、病院、その他のヘルスケア施設において安全に稼働し、高齢者に個別化されたサービスを提供できる。
介護分野で提携を拡大
これまでUBTECHのスマート高齢者介護サービスと製品ポートフォリオの統合ソリューションは既に導入が始まっていて、病院、介護付き住宅、介護施設、退職者居住地区など複数の現場で継続的にサービス提供している。UBTECHは、深センのChina Merchants Health Care、上海のXinkai Senior Care Facility、香港大学深セン医院、山東省泰山療養院との提携も正式に発表した。
日本のメディカル・ケア・サービス社とも提携
UBTECHはエコロジカル・コミュニティー構築の開始式で、前述のChina Merchants Health Care、日本のメディカル・ケア・サービス株式会社(MCS)、China Academy of Transportation Sciences Groupなど12の提携先を発表した。提携先は、高齢者介護サービス事業者、医療施設運営事業者、技術系企業などである。
China Merchants Health CareのゼネラルマネジャーのYanhong Wen氏は次のようにコメントしている。
「UBTECHのような企業の協力により、ロボットは高齢者に健康リスクのスクリーニング、健康の継続的監視、医療計画の評価や査定、早期の警告や介入、積極的かつ相互作用的な交流、認知・身体のリハビリといった重要サービスが提供できると思う」
両社は、今後も協力してスマート住宅施設づくりを進め、地域の高齢化ニーズに合った高齢者介護サービスを提供、人間味あふれるケア、包括的なエンドツーエンド・サービスを届けていく。
MCS創業者の高橋誠一氏は、リモートビデオでのスピーチで次のように語った。
「私は23年前、日本で初めて退職者のための施設を立ち上げた。2017年には、日本一の認知症病床数を運営するまでになった。現在は、介護施設や認知症治療施設など計322の保健施設を運営している。7年前には中国の南通市に介護施設を開設し、その後、他の都市でも新たな高齢者介護プロジェクトを立ち上げた。UBTECHとの提携により、最新のAI技術や知能ロボット、その他の製品を組み合わせ、中国市場を変革していきたい」
MCSグループ取締役でMCS ChinaのGrace Wangゼネラルマネジャーは、今回の提携により、介護とテクノロジー、デジタルトランスフォーメーション、予防という3つの主要分野で高齢者へのサービスをよりスマートに提供するソリューションが実現すると語った。
China Academy of Transportation Sciences GroupのゼネラルマネジャーのYong Li氏は「UBTECHと協力してスマートな輸送と移動の統合、イノベーションに取り組み、中国全土の公共交通機関のバリアフリー拠点でスマートな移動の商業化モデルづくりをしていきたい」とあいさつした。
高齢者介護サービス産業の市場規模
高齢者介護サービス産業は、欧州諸国や米国など先進国では国内総生産(GDP)の20%以上を占めているが、中国では7%に過ぎず、大きな潜在市場である。中国の市場規模は、2022年には10兆2900億人民元(約1兆5000億米ドル)に達すると予想されている。
高齢者介護産業との包括的統合を活用することで、ハイテク主導の高齢者介護サービスは、全家族の生活の質と健康をさらに向上させ、革新的ソリューションにより同国の高齢者層に恩恵をもたらす、と見ている。
UBTECHの創業者、兼、会長兼最高経営責任者(CEO)のJian Zhou氏は次のコメントを寄せている。
「当社は、技術革新を通じて持続可能で真の長期的価値を提供し、中国の地域社会の主要課題に対処していくことを約束している。高齢者介護業界では、新しく革新的なAIベースのソリューションを活用し、人々と彼らが住むコミュニティーにより良いサービスを提供し、質を重視したインテリジェント・ヘルスケア分野の成長を加速させていく」
UBTECHについて
UBTECHは、これまでAIとインテリジェントロボティクス技術を中心に、10年以上の専門知識とノウハウを蓄積してきた。2017年の高齢者向けサービスづくりの模索、ヘルスケア分野に特化した2019年の北米での研究開発センター設立、さまざまな高齢者介護シーンでのソリューション活用に特化した2021年のヘルスケア事業部の設立から、2022年のスマート高齢者介護のグローバル戦略発表まで、UBTECHはスマートヘルスケア分野に注力したきた。UBTECHは、ロボティクスやプラットフォーム技術でヘルスケア業界の変革目指し「高齢者介護経済の持続可能な開発というビジョンに、業界パートナーと共に取り組んでいる」としている。
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