MR技術で熟練看護師の目線の動きを再現 看護師の「器械出し」習得を支援する「HoloMe」 メドトロニックと日立ソリューションズが開発

日本メドトロニック株式会社、株式会社日立ソリューションズ、株式会社日立ソリューションズ・クリエイトは、Mixed Reality(以下、MR)技術を活用し、手術室看護師の器械出し(手術がスムーズに進行するように器材等の準備や適切な手渡しと受け取りなどを行い、術者を介助する業務)方法の習得を支援するトレーニングツール「HoloMe」(ホロミー)を開発したことを発表した。メドトロニックは今後新たに器械を導入する顧客に向けて、その安全かつ適正な使用を推進するために、11月22日からトレーニングツールを提供する。


「HoloMe」の開発背景

少子高齢化が進む日本の地域医療において、医師や看護師の労働量の増加や患者一人にかけられるリソース不足などが病院経営の課題になっている。また、医療技術の高度化が進んでおり、多忙な日常業務の合間に新しい医療機器の使用方法などの学習を効率的に行いたいというニーズが高まっている。

手術に使用される医療機器にはさまざまな構成部品があり、かつ使用方法が特殊。手術室で「器械出し」業務を行う看護師は的確かつ素早い組み立てと操作が求められるため、医療機器の使用方法を熟知し、器械を差し出すタイミングも的確でなければならない。この「器械出し」業務の習得状況は熟練者と非熟練者で大きく差があり、熟練者は手術中、先の手順を見越して目配りしている。しかしこの目線を外見から追うことは難しく、熟練者が業務外の時間などで、非熟練者にきめ細やかに指導する必要があり、業務負荷の低減が課題となっている。また、新型コロナウイルス感染拡大を避けた上で、医療現場で十分な臨床実習の機会を確保するという課題もある。

そこでメドトロニックは日立ソリューションズ、日立ソリューションズ・クリエイトと協業し、課題の解決及び顧客満足度向上と地域医療への貢献も視野に入れて、医療機器の使用方法とタイミングを熟知した器械出し看護師の目線の動きをMR技術を活用して空間上に可視化することで、医療機器をより適切かつ安全に利用するためのトレーニングツールの開発に至った。


熟練看護師の目線の動きを学習できるトレーニングツール「HoloMe」

「HoloMe」(ホロミー)ではマイクロソフト社のMRデバイス「Microsoft HoloLens2」を利用し、熟練看護師の目線の動きを現実の空間上に表示し録画することで、その録画データを非熟練看護師が視聴し学習できるトレーニングツール。非熟練看護師は医療機器の複雑な組み立て方法や操作、手術の手順に合わせた的確な器械出しの方法を、熟練看護師の映像と比較することで効率的に学ぶことができる。

視覚を追跡するアイトラッキングの機能を設定している様子

熟練看護師の目線が、緑のマークとして投影されている様子
■トレーニングツールの特長
1.熟練器械出し看護師の目線の動きを可視化し、教育教材としての活用を支援
医療機器の組み立て、操作の際の熟練看護師の目線の動きを「HoloMe」で録画し、教育教材として活用することが可能。経験豊富な熟練看護師の動きをデータ化することで、医療機器の組み立てや操作を学ぶことはもちろん、手術の手順に合わせた的確で効率的な器械出しスキルを学べる教材を作成することができる。

2.非熟練者の学習中の目線を録画し、継続的な改善が可能
作成した教育教材(動画)を見ること、または同じ医療機器の組み立てや操作、器械出しの手順を非熟練看護師も録画し、熟練看護師の動画と比較再生することで気付きが得られ、器械出しスキルの改善を図ることが可能。

3.医療機器活用への満足度向上に貢献
実際の医療機器を利用しながら、3Dナビゲーションによって、医療機器の組み立てや操作方法を具体的に学ぶことが可能。目線に合わせてテキストをスクロールするなど、ハンズフリーで操作できる。自らのスケジュールに合わせて学習することができるため、時間の有効活用が可能となる。



今後について

今後3社はマイクロソフト社の「Dynamics 365 Guides」、「Dynamics 365 Remote Assist」などのアプリケーションをベースに、医療機器マニュアルの3D化や、遠隔支援の仕組みも開発する予定。最新のデジタル技術を活用した効率的な医療教育ツールを提供することで、医療機器の安全な活用と看護師の生産性向上を支援し、持続可能な地域医療の実現に貢献していく。


メドトロニック、日本マイクロソフトからのコメント

■メドトロニック トレーニング&エデュケーション ディレクター 浦田美智雄氏からのコメント

「HoloMe」はメドトロニック従業員のアイデアから生まれたトレーニング教材です。医療現場から実際に課題として声があがっていた「医療従事者の人材不足」や「長時間労働」といった医療現場における人的リソースの問題を解決したいという思いから今回のアイデアが誕生しました。医療業界において医師向けのトレーニングは比較的充実していますが、看護師向けのトレーニング教材は潤沢ではなく、また病院の人的リソースの問題で看護師の製品取り扱いに関するトレーニングが十分に実施できていない施設もあります。今回メドトロニックが看護師向けのトレーニング教材を提供することは、自社製品を安全かつ適正に使用していただくことに繋がるだけでなく、医療現場の人的リソースの課題解決にも繋がるのではと考えています。人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばすという会社のミッションのもと、医療現場のニーズにあった質の高いトレーニングを提供することで医療へのさらなる貢献をめざしてまいります。

■日本マイクロソフト 業務執行役員パートナー技術統括本部 統括本部長 伊藤信博氏からのコメント

日本マイクロソフトは、この度の日本メドトロニック、日立ソリューションズ、日立ソリューションズ・クリエイトの複合現実(MR)技術を活用した、手術室看護師のトレーニングツール「HoloMe」の提供開始を心より歓迎いたします。現在、少子高齢化が進む日本の地域医療において、医師や看護師の労働量の増加や患者一人にかけられるリソース不足などが、病院経営の課題になっています。「HoloMe」がこのようなお客様の課題を解決に貢献できるものと期待しております。今後も日本マイクロソフトは、日本メドトロニック、日立ソリューションズ、日立ソリューションズ・クリエイトとの強力な連携を通じて、お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献してまいります。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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