AOSデータ、フェイクデータ解析と証拠調査を行う「ディープフェイクフォレンジック」取組を開始 調査の手順と特定するしくみ

AOSデータ株式会社は、映像や音声の真偽を判断し、生成された偽の映像や音声などのフェイクデータの証拠調査を行う「ディープフェイクフォレンジック」サービスの取り組みを開始する。「ディープフェイクフォレンジック」の市場規模は、2020年が1億4400万ドルだったが、2028年までに約6億6900万ドルに拡大するとの予測もある。


ディープフェイクフォレンジックとは?

AOSデータが提供する「ディープフェイクフォレンジック」とは、ディープフェイク技術によって作成された映像や音声の真偽を判断し、人工的に作り出される痕跡を検出してその信頼性を評価するための技術や手法のことを指す。

ディープフェイクフォレンジックでは映像や音声の特徴を分析し、「映像のピクセルや音声の波形の解析」「映像や音声の特徴量の抽出」「深層学習を用いたパターン認識」「映像や音声の調整・比較」などの手法を用いて、その信頼性や真偽を判定する。

近年、メディアはニュースやビデオの信頼性を高めるために、ディープフェイク検出技術を使用するなど、様々な対策を講じている。また、各国政府や国際機関、民間団体などもディープフェイク問題を扱っており、アメリカ合衆国の国家安全保障局は、「ディープフェイクニュース対策プログラム」を開始し、欧州連合も同様の動きがある。

しかし、これらは「メディアフォレンジック(Media Forensics)」と呼ばれ、その多くは、フェイクニュースによって報じられた内容の真正を検証するものにとどまっており、「発信者が誰で」「どのような組織の支援の下に行われているのか」を調査し、「発信されている文字情報、画像、音声、動画像、音声つき動画像が加工されていないか」などには言及されない。こうした加工が施されているか否かまでも検証を踏み込んでいくディープフェイクフォレンジック技術に対して期待が高まっている。



年平均27.2%の成長率と市場予測

ディープフェイク技術を用いたわかりやすい例を挙げるならば、政治的なフェイクニュースや、セレブリティの顔を合成したポルノグラフィーの製作などだろう。

しかしこのような合成のみならず、架空のデータ(フェイクデータ)を利用し、科学的研究や学術論文の偽造や偽の研究結果を報告するといった事例も発生しており、科学研究や学術界において信頼性を損ね、社会的な問題を引き起こすという事態になっている。

このような背景から、2021年に発表されたGrand View Researchの調査によると、2028年までにディープフェイクフォレンジック市場の年間成長率は年平均27.2%と予測。2020年の市場規模は1億4,400万ドルだったが、2028年までに約6億6,900万ドルに拡大すると予測されており、この数字からもディープフェイクフォレンジックが必要とされるようになっていくかがわかる。


ディープフェイクフォレンジックが必要とされる分野

AOSデータはディープフェイクフォレンジックが必要とされる分野と活用方法について次のように挙げており、様々な分野で必要とされ、社会的な問題解決に貢献することが期待されている。

ディープフェイク フォレンジックの分野と活用


ディープフェイクフォレンジック調査の手順

ディープフェイクフォレンジックの主な具遺体的な調査手順の流れは次のようになる。

1.データ収集

検証する映像や音声データを収集。データの収集には、オリジナルの映像や音声データ、および疑わしいDeepFake映像や音声データが含まれまる。特定されたメディアファイルを収集し、可能であれば、作成された日時や作成者、共有元など、メタデータも収集する。

2.データ解析

解析ツールを使用し、映像や音声データを検証する。検証には、DeepFakeが使われているかどうかを特定するために、様々な手法を使用する。DeepFakeで生成された映像の場合、データの中に生成元として使用された複数の画像が含まれていることがある。
ディープフェイクを作成するために使用される可能性のあるツールを特定する。これには、ニューラルネットワークや深層学習モデルなども含まれ、そのツールを使用するために必要な技術的なスキルや知識も特定する。

【テクスチャ解析】
ディープフェイクのテクスチャ解析を行う。これは、画像の解像度を高くしたり、テクスチャのパターンを分析することで、画像の本来の特徴を抽出することができる。

【フェイスマッチング】
元の映像や画像を特定するために、ディープフェイクの顔のマッチングを行う。これには、画像やビデオフレームを分析し、ディープフェイクに使用された顔と似た顔を持つ人物を特定することが含まれる。

3.特徴検出

DeepFakeを作成する際に使用された特徴を検出する。対象者の表情、口の動き、声のトーン、背景音などが使用されることがある。
ディープフェイクである可能性があるメディアファイル(動画、画像など)を特定。これは、不自然な映像や不自然な動き、顔や体の動きのずれ、顔の輪郭線の異常、音声の変化などを確認することで行う。

【背景の特定】
DeepFakeは、オリジナルの映像から切り抜かれた人物を別の背景に貼り付けることで作成される。背景の特定を行うことで、DeepFakeである可能性があるかどうかを判断することができる。

【顔の特定】
DeepFakeでは、人物の顔がデジタル処理され、他の人物の顔に置き換えられることがある。顔の特定を行い、オリジナルの顔と異なる点を特定することで、DeepFakeである可能性があるかどうかを判断することができる。

【声の特定】
DeepFakeの音声は、元の音声を加工して作成される。音声の特定を行い、オリジナルの音声と異なる点を特定することで、DeepFakeである可能性があるかどうかを判断することができる。

4.モデルトレーニング

DeepFakeを検出するために、検出アルゴリズムをトレーニングする。トレーニングには、DeepFakeを作成する際に使用される特徴を学習するために、ディープラーニングや機械学習を使用することがある。

5. 詳細分析

ディープフェイクの作成方法、作成者、および使用された技術的な手法などを特定。この段階では、異常なノイズ、フレームの飛び、コンテキスト不一致などを確認し、ディープフェイクであることを特定することができる。

6.検証結果の報告

検証結果を報告し、偽の映像や音声を特定。また、偽の映像や音声が発見された場合には、その影響を評価し、必要に応じて適切な措置を取る。


ディープフォレンジックの流れ

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ロボスタ編集部

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