少子高齢化に伴う買い物弱者の増加や人手不足などを背景に、自律走行ロボットを活用した配送や物資輸送のニーズが高まっている。また、2020年に特定自動配送ロボット等の公道実証実験に関する制度が整備されたこともあり、配送ロボットの社会実装に向けて、屋内外でさまざまな実証実験が行われている。
地図の作成や位置情報の共有プラットフォームが必要
ロボットの自律走行や、ARナビゲーションのようなアプリケーションの稼働には、位置情報や建物の情報などを取得して地図を作成し、事前にルート設定を行う必要があるが、地図の規格や基準となる座標が事業者によって異なるため、別の事業者が同じエリアでロボットなどを導入する場合でも、新たに地図の作成や位置情報の登録を行う必要があり、その工数やコストが配送ロボットなどの導入の障壁となっている。
そこで、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社、ソフトバンク株式会社および株式会社ビーブリッジの3社は、共通の規格である空間IDに空間情報や地図情報などのデータを紐付け、ダイナミックマッププラットフォームが開発した「地図・GIS基盤システム」を通して異なる企業のシステム間でデータを共有することで、地図の作成や位置情報の登録などの作業を効率化することを目的に実証実験を行った。
なお、同実証実験は、デジタル庁から受託した「デジタルツイン構築に関する調査研究」の一環として行われた。
異なる企業のシステム間でデータ共有を可能に
この実証実験では、空間情報(ロボットの配送地点や建物内の情報)や地図情報などのデータをに紐付けることで、ソフトバンクが開発した配送実証向けの自律走行ロボットや、ビーブリッジが提供するARナビゲーションアプリといった、異なる企業のシステム間でデータを共有することが可能になった。この仕組みで共有されたデータを活用することで、地図の作成や位置情報の登録などの作業を効率化することができる。例えばソフトバンクの場合、従来自律走行ロボット用の地図の作成にかかっていた工数を、最大8割程度削減できると考えられる。また、ビーブリッジの場合、より効率よく、正確なARナビゲーションを提供することが可能になる。今後3社は、実証実験で得られた知見を基に、さまざまな企業のシステム間でデータの共有を進めることで、自律走行ロボットをはじめとする空間IDの活用事例の拡充を進めていくとのことだ。
空間IDとは、3次元空間をボックス状に切り分けることで、空間情報の基準が異なる場合でも、一意に位置を特定できる規格のことです。空間IDに静的・動的な情報を紐付けることで、空間IDをキーにして空間情報を簡易に統合・検索したり、データを高速で処理したりすることが可能になります。現在、デジタル庁と経済産業省の主導で規格の標準化に向けた整備が進められている。
同実証実験の内容
今回は東京ポートシティ竹芝(東京都港区)で、「空間情報やロボット用の地図などを空間IDに紐付け」「空間IDを活用した自律走行ロボットによる配送」「空間IDに紐付いたデータの共有」「共有データを活用したARナビゲーションの実施」の4つについて実験を行った。
空間情報やロボット用の地図などを空間IDに紐付け
ソフトバンクが、ロボット用の地図を作成し、ロボットの出発地・経由地・目的地や建物の情報などの空間情報や、作成した地図の情報を空間IDに紐付け、「地図・GIS基盤システム」に登録した。
空間IDを活用した自律走行ロボットによる配送
ソフトバンクが開発した自律走行ロボット「Cuboid」を活用して、「地図・GIS基盤システム」を通して空間IDに紐付いた建物の情報を読み込むとともに、登録した出発地・経由地・目的地のデータを基にルートを設定して、物資の配送を行った。
空間IDに紐付いたデータの共有
空間IDに紐付いた空間情報や地図の情報を、異なる企業のシステムでも活用できることを検証するため、「地図・GIS基盤システム」を通してビーブリッジにデータを共有した。
共有データを活用したARナビゲーションの実施
ビーブリッジが、「地図・GIS基盤システム」を通して共有されたデータを活用し、ARナビゲーションアプリで建物内の目的地までのルートや店舗情報などを表示することで、人による配送のサポートを行った。
▼各社の役割
ダイナミックマッププラットフォーム | 「地図・GIS基盤システム」の提供 |
---|---|
ソフトバンク | 自律走行ロボットの提供と自律走行システムの運用、ロボット用の地図の作成、空間情報やロボット用の地図情報の空間IDへの紐付け |
ビーブリッジ | ARナビゲーションアプリの開発、ARナビゲーション用の地図の作成、ARナビゲーションに必要な情報の空間IDへの紐付け |
Cuboid関連記事(ロボスタ)