猫型ロボットや教材ロボのElephant Roboticsその他、深センのハードウェアメーカーが「AI・人工知能 EXPO」に出展

2023年5月10日(水)~12日(金) の日程で東京ビッグサイトにて「NexTech Week2023春」の一環として「第7回 AI・人工知能 EXPO【春】」が行われた。各種AIソリューションの展示会で、以前はチャットボットばかりだったが、今回はより実務的な、外観検査や検品自動化などの用途のAIの紹介が目立った。もちろん、いま話題のChatGPTや生成系AIを使ったソリューション提案も多かった。とにかく「ビジネスにどう活用するか」ということについて、出展側も来場者側も以前よりも真剣に捉えようとしている雰囲気を感じた。

様々なソリューションが並ぶ「第7回 AI・人工知能 EXPO【春】」

また、中国・深センのハードウェアアクセラレーター「iMakerbase」がプロデュースしたブースも出展。深セン企業15社が展示を行っていた。ロボット関連では、Maker向けツールの開発や販売を行っている株式会社スイッチサイエンスが代理店となって日本国内で販売中の Elephant Robotics(エレファントロボティクス)社の教材ロボットアームを使ったシステムや、猫型ロボット「MarsCat」が出展されていた。この機会に紹介しておきたい。


教材ロボット「mechArm」

mechArmを使った搬送システム教材

Elephant Roboticsはロボット開発を手がける企業。協働ロボットのElephantRoboticsシリーズと、「MarsCat」というペット型ロボットを独自に開発し、販売している。Elephant Roboticsでは後者のことは「Bionic Robots」と呼んでいる。

今回出展されていたロボットアーム教材は、6自由度の小型ロボット「mechArm」を使ったもの。ロボットはM5Stack Basic搭載モデルと、RaspberryPi4 搭載モデルを、単体だけで頑張って動かすのか、パソコンと組み合わせるのかといった用途に応じて選ぶことができる。

ロボット本体の重さは1kgでペイロードは250g。作業半径は270mm。PythonやROS、Arduino、Roboflow等のプログラミングに対応している。

ロボット一体のペイロードは250g

今回のデモでは2台のロボットアームと、コンベアベルト、カメラを組み合わせた搬送を行なっていた。単体だけではなく、各種要素モジュールを組み合わせる結合テストのような体験までできるというわけだ。カリキュラム等もあるとのこと。

■動画

価格は M5Stack搭載モデルはおおよそ10万円(実際の価格はスイッチサイエンスのウェブショップページを参照)。

スイッチサイエンス Global Business Development 高須正和氏

なお教材以外の用途だが、手先位置精度はカタログスペックではそこそこ出ることになっているのだが、展示解説を行なっていたスイッチサイエンス 国際事業開発担当の高須正和氏によれば、「硬い用途ではなく、もっと柔らかい使い方に向いている」とのこと。

いわゆる業務に使うようなロボットアプリケーションではなく、「たとえば二つのアームを使って、片方はカメラ、片方は照明を当てるといった使い方」なら使えるとのことだった。

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小型AGVと組み合わせてモバイルマニピュレーターにすることも可能

「myAGV」に搭載することでモバイルマニピュレーターにすることも可能

ロボットアームを小型AGVの「myAGV」に搭載し、モバイルマニピュレータ型にしたロボットも出展されていた。こちらも2022年12月からスイッチサイエンスにて国内販売されている(販売ページ)。

小型ながらカメラやLiDARも搭載

「myAGV」の大きさは311 x 236 x 130 mm、重さは3.6 kg。ホイールはメカナムホイールで全方向に移動可能。カメラや2D LiDAR、Raspberry Pi 4を搭載しており、ROSによる開発が可能。




猫型ロボット「MarsCat」と「metaCat」

「metaCat」(左)と「MarsCat」(右)

このほか、猫型ロボットの「MarsCat」と「metaCat」も出展されていた。まずふわふわの毛皮に覆われた「metaCat」は大きく動くことはできないが、音声やLEDの目によってちょっとしたインタラクションができるコンパニオンロボットだ。ロボット系ぬいぐるみと言ったほうがいいかもしれない。こちらはスイッチサイエンスでは扱っていない。

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「MarsCat」は猫型の自律移動ロボットだ。自由度は16。Rasberry Piを搭載し、鼻のカメラや口の測距センサを使って移動できる。そのほか静電容量タッチセンサなども搭載しているという。カラバリは4色あるとのこと。会場では動作デモは行なっていなかったが、動きはスイッチサイエンスの動画で確認できる。

■動画

ソニー「aibo」のようなペット型ロボットだが、実物は意外と大きい印象を受けた。このほか、アプリでステイタスを確認したり、QRコードを環境側に貼って読み取らせることで、場所に応じた動作を実行させることもできるという。詳細はスイッチサイエンスのブログで紹介されている。

「MarsCat」の鼻はカメラ、口は測距センサー

「MarsCat」はアプリケーション開発もできることから、スイッチサイエンスでも取り扱う予定。なお、なぜ「MarsCat」という名前なのかについては「わからない」とのことだった。

お腹側にはインターフェースも




ビルを掃除するロボットや工場内搬送ロボットも

PLECOBOTのビル掃除ロボットの模型

このほか、ブースでは窓を掃除するロボットや搬送ロボットの会社がパネルを使って展示を行なっていた。PLECOBOTはビルの窓や壁を清掃するロボットをビデオと模型で展示していた。1日あたりの清掃量は1000平米。

■動画

Youibot Roboticsは搬送ロボットを主力製品としている企業。半導体ウェハの搬送では大きなシェアを持っているという。今回パネルで展示されていた「L300」はリフトアップしてものを運ぶタイプのAMRで、ペイロードは300kg。他社の同様のソリューションに比べると「価格競争力がある」とのこと。

■動画


ハードウェアアクセラレーター「iMakerbase」とは

ブース全体のプロデュースは深センのハードウェアアクセラレーター「iMakerbase」

前述のとおり、今回の展示は深センのハードウェアアクセラレーター「iMakerbase」によるもの。スイッチサイエンスだけでなくiMakerbaseにも所属している高須正和氏によれば、今回の出展は3月末から1週間で15社集めたという。政府が補助を出し出展料は無料、渡航費用は各社持ちで出展したとのこと。iMakerbaseについては高須氏の記事に詳しい。

高須正和氏は世界の様々なMaker Faireに参加し、国内外のMakerカルチャーを相互に伝える活動でも著名

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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