ALSの武藤将胤さんが視線でDJ、脳波でロボットアームを動かす 車椅子ダンサー神原さんとOriHime、圧巻のダンスパフォーマンスを披露

少し先のおもしろい未来を垣間見ることができる体験イベント「ちょっと先のおもしろい未来」(略称 ちょもろー)が、東京・竹芝エリアで2023年9月17日(日)と18日(祝)の2日間開催された。ワークショップは、ロボット達と触れあう子ども連れでにぎわっていた。
一方、会場のメインステージでは、画期的なイノベーションによるパフォーマンスが公開されていた。それは、ALSの武藤さんが視線入力でDJを行い、脳波でロボットアームを動かし、車椅子ダンサーの神原健太さんとアバターロボット「OriHime」とのダンスコラボレーションを実現したのだ。

「ちょもろー」のオープニングセレモニーで初公開したパフォーマンス


視線でDJ、BMIでロボットアームを制御

「ちょもろー」のオープニングセレモニーでそれは初公開された。
「Brain Body Jockey Project」。ステージの中央には車椅子に座ったALSを煩っているEYE VDJ MASA(武藤 将胤)氏がいて、車椅子の背後にはロボットアームが搭載されている。


MASA氏は音楽に合わせてアームを上下に動作させていたかと思うと、会場に詰めかけた、聴衆に手拍子をリクエストした。


ウワサには聞いていたがこれは凄い。なぜならEYE VDJ MASA氏は視線入力でDJを行いながら、脳波を通じてMASA氏の意図を信号抽出し、それをアームに連携させて動かすサイバーネティック・アバター技術が使われているからだ。更にはNTT人間情報研究所のクロスリンガル音声合成技術で生成された音声により空間をジャック。手が動かなくても目と脳波でダンスパフォーマンスを行っているのだ。





車椅子ダンサー神原さんの圧巻のパフォーマンス

中盤からは車椅子ダンサーとして活躍する神原 健太さんが登場。車椅子とドリフトリフト(車椅子型全方位移動体)と、鍛え抜かれた生身のダンスパフォーマンスを披露。



ステージの左には、デスクトップ型のアバターロボット「OriHime」も登場し、音楽に合わせて大きなロボットアームとともにリズムを刻んだ。


ダンスパフォーマンスが終了した後、盛大な拍手が送られ、感動で涙ぐんでいる観客もいた。


身体の拡張を実現したこれまでにない表現を聴衆に公開した瞬間だった。

■ Brain Body Jockey Project

武藤 将胤氏が代表を務める一般社団法人 WITH ALSと電通サイエンスジャムが連携し、更には慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科が、「ムーンショット型研究開発事業・目標1: 身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」(PM:南澤 孝太氏) が先端技術を用いて人の能力を拡張する新たな取り組みとして、発足したのが「Brain Body Jockeyプロジェクト」(通称:B2Jプロジェクト)だ。
観劇した後、人の拡張性と、ALSをわずらった人たちの可能性を広げる新たな希望の未来を見た気がして感動が心の奥から沸き起こっていた。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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