株式会社NTTドコモは「5GC on AWSを用いたニーズに応える次世代クラウドスライシング」を「docomo OpenHouse’24」で展示した(5GCとは、5G Core networkの略)。この技術とか実現することで様々な場所、時間の状況に応じて、適切な品質のネットワークが利用できるようになり、AI技術など、これまで実現できなかった様々なユースケースの実現が期待できるという。AWSのようにクラウドで提供される場合、省電力化と、使いたい時に使いたいネットワーク品質の実現など、サステナブルなネットワーク利用も可能となる。
時間やエリアに基づくネットワーク制御でクラウドからリソースを迅速展開
クラウドサービス、AI、IoTなどの利用拡大に伴い、扱う情報量の増加やリアルタイム性が必要な処理など、ユーザーの利用用途が多様化している。
計算能力の拡大や省電力技術の発達、AI技術の成熟などによって、ネットワークの利用方法の多様化が進み、またモバイルにおいても色々な通信品質が求められるようになってきた。しかし、品質要件に応じて、それぞれネットワークを用意していくることは無駄も多いのが実情だ。
解決となる取り組みとして、オーケストレーターとの連携により。時間やエリアに基づくネットワーク制御を行いつつ、クラウドからリソースを迅速展開することで、様々な通信品質のネットワーク提供を実現することがあげられる。End to End でネットワークを制御するE2Eオーケストレータ技術だ。
また、スライスのユーザーごとのQoSを可視化・監視する技術としても提供される。さらにパブリッククラウドをモバイルコアに適用する「5GC on AWS」といえる。
利用用途に応じたネットワークスライシングを提供
NTTドコモは、自動運転やドローン、ロボット制御など、今後活用が見込まれる領域への対応を含めたユーザーからのさまざまな要望に応えるべく、利用用途に応じたネットワークスライシングの提供をめざし、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)、日本電気株式会社(NEC)、Sandvineの4社で、ハイブリッドクラウド構成で構築した5Gコアネットワーク(5GC)とドコモが提供する5G SA(スタンドアローン)の商用無線基地局を利用し、エリアや時間を指定して「ネットワークスライス」を提供する技術の実現に向けた実証実験を行い、成功したことを2024年1月15日に発表した。
同技術の活用により、イベント会場や災害地域など通信トラフィックが集中する特定スポットで日時を指定して利用用途に応じた最適なネットワークを提供するなどをめざしていく。また、QoS/QoE可視化することで、提供するネットワーク品質の監視も可能となる。
なお、同技術の実証実験成功は世界初(2024年1月15日時点、ドコモ調べ)となっている。
実証実験の概要
同実証実験は、ドコモ、NTT Com、NEC、Sandvine、日本電信電話株式会社、Hewlett Packard Enterprise合同で実施。パブリッククラウド上に構築した5GCの実験環境と、ドコモが提供する5Gを接続したハイブリッドクラウド環境で動作する5Gネットワークに対し、オーケストレータによりオンデマンドに利用エリア・時間等の要件に応じたネットワークスライスを構築。加えて、ARM-Powered UPF および UPF on Outpostsへのスライス収容、トラフィック制御ソリューションおよびGPUアクセラレーション機能を連携し、ネットワークスライスのQoS/QoEなどのネットワーク品質が可視化できることを確認した。
実施期間
2023年9月21日(木)~2024年1月15日(月)
実証実験で使用した技術要素・各社の役割
ドコモ | ・コアネットワークや無線基地局装置などの5G SA商用環境およびノウハウの提供 ・実証実験全体の計画策定、全体管理 ・実現方式の検討およびネットワーク構成の設計 |
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NTT Com | ・Qmonus(ネットワークオーケストレータ) クラウドネイティブアプリケーションおよび強化された配信と運用のための Platform-as-a-Service テクノロジー ・AWS OutpostsサーバーとFlexible InterConnect(ハイブリッドクラウド) インターコネクトサービスFlexible InterConnectを活用してUPFとAWS上の5GCの間を安定的かつセキュアに接続するNWインテグレーション技術 ・Qmonusへのオンデマンドスライス生成機能の実装・AWS OutpostsサーバーおよびAWS環境、Flexible InterConnect提供 ・各社環境の相互接続のためのネットワーク構成の設計および開発 |
NEC | ・パブリッククラウドに最適化された5GC 柔軟性と拡張性に優れたパブリッククラウド上に構築可能な5GC ・ARM-Powered UPF ARMアーキテクチャ採用により、従来製品と比較して電力消費量を低減 ・UPF on Outposts ・パブリッククラウドの宅内エッジサーバー上にUPFを搭載 ・パブリッククラウド上への5GCの構築 ・ARM-Powered UPFの開発 ・AWS OutpostsサーバーへのUPF搭載 |
Sandvine | ・トラフィック制御ソリューション 実ネットワーク上のトラフィックのネットワークスライス情報を識別し、スライス毎、加入者毎、アプリケーション毎のQoS/QoE等のネットワーク品質の数値化、品質監視を提供 ・トラフィック、およびアプリケーション識別・制御ソリューションの5GC装置への適用開発 |
日本電信電話株式会社 | ・ISAP (アクセラレータによるサービス高速化機能) ネットワークとコンピューティング基盤を連携し、通信品質・サービス要件に応じて動的にアプリケーションの情報処理を制御し高速化するプラットフォーム ・ドコモ5GCとGPUアクセラレーション機能を連携するための開発 ・ISAP基盤とAI映像解析アプリケーションの結合・実装 |
Hewlett Packard Enterprise | ・HPE ProLiant RL300 Gen11 高いコア密度、電力あたりの性能向上、省電力化を特長とする次世代サーバー |
同実証実験の具体的な内容
具体的な実証実験内容は、以下の4点だ。
オンデマンドかつ即時対応を実現するネットワークスライス生成技術実証
オーケストレーションプラットフォームであるQmonus(クモナス)より、ハイブリッドクラウド構成で構築した5GCに対してオンデマンドで利用エリアや時間を指定したネットワークスライスを生成すること
5Gネットワーク上でのネットワークスライス接続技術実証
ハイブリッドクラウド上の5GCで生成したネットワークスライスと商用環境の5G SAの無線基地局を接続した実通信が利用可能であること
ネットワークスライスを活用した、高精度の映像処理ユースケース実証
ユーザー通信処理装置(UPF)であるARM-Powered UPFおよび UPF on Outpostsとインクルーシブコアアーキテクチャの要素技術であるISAPを活用したGPUアクセラレーション機能を連携することで、高速かつ高精度にAI映像解析ができること
ネットワークスライスの品質監視技術実証
トラフィック、及びアプリケーション識別・制御ソリューションを活用し、ネットワークスライスごとにQoS/QoEなどのネットワーク品質監視ができること
利用エリアや時間などの利用用途に応じたネットワークスライスをオンデマンドで生成し、そのネットワークスライスが5Gネットワーク上で利用可能であることをユースケース含めて商用の無線基地局環境で確認した。
今後について
同実証実験の中で、ハイブリッドクラウド環境上の5GC、従来のCPUと比較し消費電力を抑えたARM-Powered UPF および UPF on Outpostsを活用していいる。このことによりネットワークの迅速な構築や分散設置に加え、環境負荷低減が期待される。4社は同技術の導入に向けた検討を進めるとともに、今後も多様化するネットワーク需要へ柔軟に対応するため、5G時代に求められるネットワークスライシングを活用したネットワークの研究開発およびサービス提供を推進して行くと述べている。なお、「次世代クラウドスライシング」の取り組みは、2024年1月17日(水)からドコモが開催する「docomo Open Houseʼ24」へ出展している。
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