「人と味覚を共有する」ってどういうこと? ドコモの世界初「味覚共有」人間拡張基盤を体験してきた
以前より気になっているNTTドコモの技術があった。CMで綾瀬はるかさん達が出演している「味覚を共有する」という技術だ。いったいどういうしくみなのか?
■「あなたと世界を変えていく。」 フィールテック・味覚共有篇 30秒
NTTドコモは「docomo Open House’24」において、世界初の「味覚を共有する技術」人間拡張基盤を展示した(FEEL TECH)。遠くにいる人と味覚を共有する技術を体験してみた。
世界初の「味覚共有」人間拡張基盤とその技術
この技術の開発に携わっているのは、NTTドコモのほかに、明治大学総合数理学部 宮下芳明研究室、H2L株式会社。ドコモが開発した「人間拡張基盤」と、宮下芳明研究室とH2Lが研究開発した味覚を再現する技術を連携し、相手の感じ方に合わせた味覚を共有する技術となっている。
要するに、人それぞれに感じ方の異なる味覚を、相手の感じ方に合わせて味覚を調整した液体を味わうことで「味覚を共有する」というしくみだ。なお、この基盤技術の開発は世界初となっている。
タブレットで生活習慣や味覚の好みに関する約25の設問アンケートに応える
この技術を体験する流れはまず、タブレットを使って、自分の生活習慣(喫煙や飲酒など)や、味覚の好みに関する約25項目の設問アンケートに応え、著者の個人的な嗜好を判定し(標準の味覚との差異を測るものだろう)、味覚の感度に対する個人差を推定して共有する「人間拡張基盤」に登録される。これが前提となる。
美味しくできたはずのトマトスープだったが・・
デモのシチュエーションとしては、母親がトマトスープを作った。
母親は友人宅にいる娘にトマトスープを味覚共有デバイスで味見してもらうが「まずい!」と言われてしまう。
母親は美味しいと思って作れているのに「娘にはどのように味覚が感じられているのだろう?」ということで、味覚共有デバイスで「娘が感じている」トマトスープの味を体験してみる、という流れになっている。
「うわっ、まずい!!」娘がトマトスープをこんな風に感じているなら、たしかに美味しくないという意見はもっともだ。ちなみにその後、実際のトマトスープ(母親が感じている味覚)のものを試飲させてもらったが、これは美味しいトマトスープの味だった。娘の味覚に合わせて、このトマトスープを調味料等で味付けを変えてみる必要がある。
■ドコモの世界初「味覚共有」人間拡張基盤を体験してみた
味覚共有を構成する機器
すなわち、デバイスの構成としてはアンケートをおこなうタブレット、味覚に関するデータを把握する機器(センシングデバイス)、味覚を再現する駆動機器(アクチュエーションデバイス)の3つで構成して実現される。
具体的なしくみをもう一度おさらいすると、伝えたい味をセンシングデバイスで分析・数値化したものと、共有する相手の味覚の感じ方を、約25項目のデータをもとに人間拡張基盤上で独自アルゴリズムを用いて推定し、それらをアクチュエーションデバイスを通じて、相手に伝えたい味を再現する。アクチュエーションンデバイスは、味の基本となる五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を味覚の標準液を用いて再現される。
この3つの構成により、ことばではうまく伝えられない味を、人間拡張基盤を通して相手に共有することが可能となる、としている。
今後の展開や活用方法
たとえば、これまで視覚的・聴覚的な世界であったメタバース空間内のバーチャル体験や、映画やアニメのコンテンツでの活用が期待できるという。作者が伝えたい味をコンテンツに付加することで、よりリッチなコンテンツ提供の実現と、ユーザーはこれまでに無い臨場感溢れる新しい体験が実現できるかもしれない。
例1 メタバースコンテンツ
バーチャルな体験の中で提供される仮想的な食べ物や飲み物について、これまでの視覚・聴覚に加えて、味覚も再現可能となる。例えば、バーチャルカフェで友だちと集まってケーキをシェアしたり、デジタル空間で料理を共有したりすることができるようになるだろう。
例2 映画・アニメコンテンツ
映画の中にしか存在しない体験が可能となる。例えば、未来の食事や古代の食事など、作者が思い描いた味覚を視聴者にそのまま伝えることができる。6Gネットワークでいつでもどこでも、リアルタイムに体験することが期待できる。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。