鹿島、自動化施工システムを造成工事へ本格適用 振動ローラの自動運転と複数台の連携など「現場の工場化」を推進

鹿島は、建設業界の課題である「人手不足・熟練技能者不足への対応」、「生産性向上」、「労働災害撲滅」を目的に、自動化施工システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)の開発を進め、主にダム工事に導入をしてきた。

2020年度から適用した秋田県東成瀬村の成瀬ダム堤体打設工事では最大で3機種14台の自動化建設機械を3~4名のITパイロット(管制員)で稼働させ、2022年10月には月間打設量の日本記録を62年ぶりに更新するなど、大きな成果を上げた。

鹿島は、最大の生産性を得る施工マネジメントシステムと最大の作業効率を得る自律自動運転システムで構成されるA4CSELを、他工種への展開を進めるべくシステム開発を継続しており、造成工事である「岡崎市阿知和地区工業団地造成事業」に自動化改造した振動ローラ2台を導入し、稼働を開始した。

ダム工事で培った技術を適用しつつ、造成工事特有の条件や制約などに対応できるシステムに深化させ、「現場の工場化」を進めるとしている。

造成工事の生産性向上に重要なこととは

A4CSEL概念図

造成工事の生産性を向上させるためには、重機土工の効率化が最大のカギであり、そのためには個人の技量によらない建設機械施工の自動化が必須となる。

そこで、ダム工事で実績を積んだ建設機械の自動運転を核として、最適化された施工計画に基づき複数機械の連携作業を自動で行うことで、効率よく安全に工事を進めることができるA4CSELを造成工事に本格適用する検討を開始した。


最適化された施工計画とは

最適化された施工計画とは、想定される多くの施工方法や手順、使用機械の組み合わせなどから、最も短時間で施工が終わる計画や、最も少ない機械台数で完了する計画のこと。その計画を実行するためには、計画を構成する個々の作業を確実に、一定の時間内で完了させることが必要となる。このため、個人の技量に依存していた作業を標準化し、定式化することが作業の自動化に繋がる。このプロセスを経てダム工事では顕著な実績を収めることができた。

造成工事では、ダム工事と類似の作業でも工事進捗や場所ごとに変化する地形・地質など、様々に変化する現場条件への対応という技術的な課題があり、まずは、振動ローラの自動運転を皮切りに実現場で運用しつつ技術的課題を解決するとしている。


自動化改造した2台のローラによる連携作業

A4CSEL本格適用の造成現場

愛知県の中央に位置し、名古屋市から南東に約35kmの立地にある岡崎市が進める「岡崎市阿知和地区工業団地造成事業」は、約63haの敷地に、工業団地とスマートインターチェンジおよび周辺アクセス道路を整備するPFI事業。

本現場にA4CSELを本格適用することで、造成現場における課題を抽出し、日々改善・最適化を図り、より汎用性のあるシステムへと高める。

造成工事 自動振動ローラ用施工計画システムの開発


A4CSELは、造成工事の盛土作業を対象とし、振動ローラに特化して自動化の開発を行った。作業エリアなど日々変化する現場条件にあわせて最適な施工計画を自動で作成でき、複雑な地形(盛土形状)や高低差(排水勾配)に対応可能。

本システムによりデータが重機管理システム、自動運転プログラムへと流れることで、計画から施工まで一気通貫で行うことができる。

1:CADで作成された計画平面図から自動振動ローラの転圧する領域(ユーザ指定場所)を取得

2:取得した転圧領域と自動振動ローラの設定値(機体固有の情報と自動転圧作業に関する情報)をもとに自動振動ローラの作業領域(実作業場所)を生成

3:自動振動ローラの作業領域のデータを重機管理システムに送信すると経路・軌道が自動生成され、自動運転プログラムへ指令送信

4:自動振動ローラが自律自動運転で作業開始

今回開発した自動振動ローラ用施工計画システムは、従来の施工計画システムと比較して、複雑な形状に合わせた走行作業レーン割を可能とした。さらに、2台の自動振動ローラが各々の位置を把握して、安全で無駄のない施工を行う。

今後の展開

鹿島は今後、造成工事におけるA⁴CSELの普及展開を図るため、現場の規模や使用条件に応じて柔軟に対応できる汎用性の高いシステムに深化させるとともに、機種も増やす。

また、管制業務においても、これまでの現場に設置する「現地管制室」、神奈川県小田原市の鹿島西湘実験フィールドの「遠隔管制室」に加えて、「移動管制室」を新たに整備することで働き方の提案もしていくとしている。

工事概要
工事名 岡崎市阿知和地区工業団地造成事業
工事場所 愛知県岡崎市東阿知和町、西阿知和町及び真福寺町地内
発注者 岡崎市
施工者 鹿島・竹中土木・朝日阿知和工業団地造成工事共同企業体
規模 宅地造成(開発面積:約63ha、土工量約250万m³、場内道路約4km、調整池3カ所)、
水道施設(ダクタイル鋳鉄管他Φ300~Φ100、L=約4km)
北アクセス道路(L=約 1km)、井ノ口橋架替(PCラーメン橋撤去(橋長L=42m)、鋼単純少数桁橋新設(橋長L=44m)、西阿知和橋撤去(PCラーメン橋(橋長L=42m))
工期 2023年10月~2027年3月


関連サイト
鹿島建設株式会社

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