MUSE、ストアロボット「Armo One」を「SMTS2025」に出展 100kg搬送可、品出し支援、売場活性化、棚卸しまで

株式会社MUSEは、2025年2月12日(水)~14日(金)の3日間の日程で幕張メッセにて開催された商談展示会「第59回スーパーマーケット・トレードショー2025」の株式会社オカムラブース内にて、MUSEが開発した小売店向けロボット「Armo One(アルモワン)」の実機デモンストレーションを行った。「Armo」はこれまでに米国での展示会には出展しているが、国内の展示会では初出展となり、製品版の日本国内のお披露目は初めて。出荷予定は2025年3月以降。

MUSEのストアロボット「Armo One」


■ストアロボット「Armo One」 品出し支援、売り場活性化、棚卸し

「SMTS2025」オカムラブース内に出展されたMUSEのストアロボット「Armo One」。拡張ユニットと繋がり、多用途に使える

「Armo One」はスーパーマーケットなど小売店舗の人手不足解消と、売り場の活性化を目指した小型自律移動ロボット。フットプリントは家庭用の掃除ロボットくらいと小さく、重量は約10kg。だが専用アタッチメントを介して拡張ユニットと繋がることで、100kgまでの重量物を運んだり牽引したりできる。

牽引も可能。本体重量10kgながら、100kgまで搬送可能

小売店舗では一般に業務の約40%が、バックヤードから店頭へ商品を出す「品出し」だと言われている。「Armo One」は台車と接続することで、品出し業務のうち搬送を手助けする。ロボットが搬送を担うことで、人は他の作業に時間を割くことができる。搬送には専用カートを用いるか、カスタマイズ対応も可能。

接続する棚を変えることで販促や案内などもできる

また、販促用の棚やサイネージを運びながら移動することで売り場の活性化も手伝う。

棚卸し用途にも使える

売り場画像を撮影し、商品棚の状況を可視化。画像解析の結果を同社が独自開発したクラウドサービス「Eureka Platform」上でデータベース化することで、欠品や値札の状況などを確認して、最適な棚割り作成に活用できる。

今回、オカムラのブースでの出展に至った理由は、搬送用の棚などをオカムラが手掛けていることから。MUSE代表取締役社長兼CEOの笠置泰孝氏によれば「もともとは展示会で出会った」とのこと。「小売の販路にも強いですし、棚の撮影やレイアウト周りなど色々な部分で協業の余地があると考えている」という。


■スーパー「ベルク」10店舗で運用中

*動画

2025年2月以降、スーパーマーケットチェーン「ベルク」10店舗で使われている。1店舗あたり2台が導入されており、現状では品出し補助と売り場活性化を担っている。「ベルク」では2023年6月から運用検証を進め、効果が認められたことから導入に至ったという。

具体的な導入コスト等はまだ非公開だが、MUSEでは、Armoによって品出し工数を最大30%削減が可能としている。


■「売り場データにはものすごい価値がある」

MUSE代表取締役社長兼CEO 笠置泰孝氏。前職はZMP

MUSEは「ロボットで世界の人々に、インスピレーションを」をミッションとして2022年4月に創業。「ロボットを使う『人』に光をあて、本来の人間の力(創造性、ひらめき、優しさ、コミュニケーション)にインスピレーションを届ける」ことを目指し、省人化や人件費削減だけでなく、プラスアルファの価値を追求している。2024年6月には事業会社及び金融機関 11社より、総額5.7億円の資金調達を行った。

「Armo」の実物を見て、何より驚いたのは大きさだ。本当に小さい。笠置氏も「小さく作ることは意識した。小売店舗内では大きいと邪魔になる。バックヤードでの置き場も、ものすごく重要。だからできるだけ小さくして、かつ、重いものを運べるようにした。10kgのロボットで100kgのモノを運べるロボットは多分あんまりないと思う。タイヤがスリップしないよう、重量がロボットに伝わるように機構も工夫している」と語る。

そして「移動性能も運用上問題ないところまで来た。もちろん継続的にブラッシュアップする。メンバーは長年、自律移動ロボットをやっていた人間を集めている」(笠置氏)とのことだった。カスタマーサクセスメンバーも募集している(https://open.talentio.com/r/1/c/muse/homes/4049)。

ロボット本体は家庭用掃除ロボット程度。そして多用途に使うことでロボット全体のコストを下げる

ロボットを使った棚卸しについては、これまでにもいくつもの企業がトライしてきた。だが成功していない。この点については「これまで棚卸しに取り組んできた各社の開発チームとも何回も議論させて頂いた。課題はクリアだし『その機能自体は欲しい』と顧客からも言われている。だが提供する価値に対してコストが高すぎる。全てを満たそうと思って完全なものを作ると高コストになる。だが本当にそれらが全部揃ってないとダメなのか。一度考え直す必要がある。どこまで行けば、お客さんがお金を払う価値が出てくるのか。そこを見極めてバランスをとることが重要」とのことだった。

クラウドサービス「Eureka Platform」についても「売り場データにはものすごく価値があると感じている」(笠置氏)。そして「いま、本気でデータを取りに行こうとしているプレイヤーはほとんどいない。解析できるベンダーは結構いる。だが、データ取得にはものすごくコストがかかる。それを最低限の『プラスアルファ』のコストで実現し、データベース化もできれば、ニーズはある。今までデータ化に取り組まなかった企業でも興味を持ってくれる一つのきっかけになる」と自信を見せる。

実際、売り場の可視化をしてみると、意外なことが見えてくることは間違いない。部品の流れが整流化されている工場でさえ、見える化すると、思わぬ動きをしていた、というのは良く聞く話だ。

「小売店では売り場の可視化をやっていないのが普通なので、それをやることのメリットが今ひとつ体感できてないのが現状。どこかで一社でも、データ化することで業務改善に繋げることができたという事例ができれば、一気にオペレーションも変わっていくのではないか」(笠置氏)とのことだった。


■3月の「リテールテック」にも出展予定

「Armo One」を後方から

「Armo One」は今後、3月4日(火)~3月7日(金)、東京ビッグサイトで開催される「第41回リテールテックJAPAN2025」の東芝テック株式会社ブース内にも出展される予定だ。

関連サイト
株式会社MUSE

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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