【私大初】東京工科大学がNVIDIA DGXのAIスパコンを構築 「AI大学」構想を掲げて

東京工科大学は、AI教育と研究を加速させるため、NVIDIA Blackwellをベースとした日本の私立大学最大のAIスーパーコンピューターを構築し、2025年10月に本格稼働させることを予定していることを明らかにした。
AI は今後全ての学部の生徒が活用する技術
東京工科大学は、国内でもいち早くAI教育に取り組んできた。2019年にはコンピュータサイエンス学部に人工知能専攻を設置したほか、全学部の学生が自主的に参加可能なプログラムでAI活用に触れられる環境を用意してきた。
東京工科大学は現在AI技術を大学の教育・研究の中核に据え、次世代の技術者育成や社会課題の解決、産業界との連携強化を目指す総合的な取り組みとして「AI大学」構想を掲げている。
その中核拠点として2025年4月に八王子キャンパスにAIテクノロジーセンターを開設。開設された大きな目的の一つとして、最新鋭の AI プラットフォームの導入により、学内外の AI 研究、教育の基盤を強化することが挙げられる。
日本の私立大学最大のAIスーパーコンピューターを構築
東京工科大学は、DGX B200を国内で最初に導入する大学の一つだ。12台のDGX B200をNVIDIA Quantum InfiniBandの高速ネットワークで接続し、NVIDIA DGX BasePODリファレンス アーキテクチャに基づいてスーパーコンピューターを設計する。
システム全体のAI学習理論性能(FP8)が0.9EFLOPS、推論性能(FP4)は1.7EFLOPSに達する日本の私立大学最大のAIスーパーコンピューターとなる見込みとなる。
NVIDIA DGX BasePODリファレンスアーキテクチャはコンピューティング、ネットワーク、ストレージ、電力、冷却など、NVIDIA と各種構成要素のパートナーが共同で設計、検証しており、事前構成済みのインフラとして提供される。これにより、導入期間の短縮と運用管理の簡素化が可能となる。
今後の教育・研究・プロジェクトの展望
東京工科大学は、AIスーパーコンピューターの導入により、下記のようなプロジェクトや研究での活用を予定している。教育面では、学生が次世代のAI社会に対応できる実践的なスキルを習得するための環境整備を進め、研究面では、最先端の AI 技術や高性能計算資源を活かした高度な課題解決を目指す。
1.AI 活用人材の実践育成プログラム
AI 技術の実装経験を通じて、産業界で即戦力となる AI人材を育成するプログラムを推進する。
2.学内専用 LLM(大規模言語モデル)の構築と活用
セキュアな学内環境において、専用の大規模言語モデルを構築し、教育・研究・業務支援への応用を図る。
3.AI 倫理・ガバナンス検証環境(AI Ethics)
AI の社会実装において求められる倫理的、法的観点の教育と検証を行う環境を整備し、責任ある AI の活用を促進する。
4.デジタルツイン プロジェクト
NVIDIA Omniverseのテクノロジを用いた、現実世界と仮想空間を結びつけるデジタルツインの構築により、ものづくりや都市設計における革新的な実証研究を行う。
5.XAI(説明可能AI)によるAI 倫理・法的信頼性研究
AI の判断根拠を人間が理解できるようにする技術(XAI)を用いて、透明性・公平性・法的信頼性のあるAIの開発を目指す。
6.大規模物理シミュレーションと AI を用いた物理現象の解析
高性能計算機と AI の融合により、従来の手法では困難だった複雑な物理現象の高精度な解析と予測を可能にする。
NVIDIA とのさらなるコラボレーション
NVIDIAの日本法人は東京工科大学と2023年に学術交流連携を締結して以来、AIにとどまらず、人材育成や研究のコラボレーションも推進してきた。NVIDIAテクノロジの活用と啓蒙が可能な学生の育成を目指す「NVIDIA 学生アンバサダープログラム」では、東京工科大学の学生が NVIDIA社員のサポートを受けながら生成AIやロボティクス、デジタルツインのテクノロジを習得している。
また、東京工科大学は AI スーパーコンピューターを導入するうえで、学内に構築するデータセンターのデジタルツインを作成することをNVIDIAと共に検討してるとし、これにより最適な運用環境、また稼働開始後の効率的な運用方法などをシミュレーション予定。
NVIDIAは、東京工科大学がAIスーパーコンピューターの導入後に展開するさまざまなプロジェクトにおいても、このようなコラボレーションを通じて継続的に支援するとしている。
尚、本AIスーパーコンピューターは、東京工科大学八王子キャンパスAIテクノロジーセンターの「AI中核拠点(TUT AI CORE BASE)」に設置され、2025年10月の稼働開始を予定している。
コメント
東京工科大学 AIテクノロジーセンター・ICT部門長 生野壮一郎教授
AIスキルを身につけるための最短ルートは実践にあると考えています。しかし、学生が小規模なデータや小規模なプロジェクトだけで満足していては、将来イノベーションを生み出すようなAI活用の本質を学ぶことはできません。現在、東京工科大学では、生成AIをはじめとする最新のデータドリブン型アプリケーションを学べる環境を整えているだけでなく、デジタルツインを活用した産学連携プロジェクトや、シミュレーション技術の高度化に取り組む実践的な場も提供しています。学生たちはこれらに積極的に参加し、多様な経験を積んでいます。こうした学生が、計算資源の制約にとらわれることなく、大規模データと高性能な計算環境を活用しながら学び続けられるようにすることが、世界で活躍できる優秀なAI人材の育成につながると確信しています。また、AIは今後全ての学部の生徒が活用する技術です。本学の全学生に今後重要となるAI Ethics(AI倫理)の実践教育もしたいと考えています。そのために、私たちはさらなる大規模なコンピューティング基盤への投資を決意しました。
東京工科大学学長 香川豊 氏
AIリテラシーを持つ人材育成が喫緊の課題です。しかし、日本のAI教育は世界と比べて遅れていると言わざるを得ません。東京工科大学は『AI as a TOOL』を合言葉に、国内最高レベルのAI教育を開始します。NVIDIAのテクノロジを活用しながら、現在はもちろん、10年、20年先の未来社会で求められるAI技術を学ぶための、日本一の環境を提供します。本学では、AIの基礎・基盤から最新の応用までを学ぶことが可能です。学生、社会人は問いません。多種多様な価値観を持つ、様々な国の人が一緒に最新技術を学び、本学を離れた後にもそれぞれの人生ステージに合わせてアップデートし続けることを可能にします。東京工科大学で学んだ人たちが、これからの社会で課題に直面した時、AI 技術を駆使した解決策を提案し、実行できる人材になることを願っています。
NVIDIA 高等教育および研究コンピューティング担当ディレクター ジャック ウェルズ (Jack Wells) 氏
AI がビジネスや社会を再形成する中で、日本の大学はイノベーションや研究のためのツールとして AI を取り入れることで、次世代を導くことができます。AIによって教育を変革し、批判的思考を養い、急速に変化する世界で活躍する学生を育むことができるでしょう。東京工科大学は、NVIDIA Blackwell DGXインフラを活用することで、日本の未来に必要な批判的思考力とAI対応力を備えたリーダーを育成するための基盤を築いています。
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