ロボット開発を手がけるAgile Robotsは、安定性、柔軟性、触覚、コミュニケーション能力を追求して設計された新型ヒューマノイドロボット「Agile ONE」を発表した。人間のような器用な手と、独自の階層型AIシステムを搭載し、産業界における複雑なタスクの自動化を目指す。
器用な手と階層型AI
「Agile ONE」の最大の特徴は、世界トップクラスの器用な手にある。人間の手の動きを忠実に模倣するよう設計されており、指先と全ての関節に力覚・トルクセンサーを内蔵している。これにより、繊細な部品の組み立てから力強い作業まで、これまでにない精度と安定性、そして高い適応能力で幅広いタスクをこなすことが可能である。
この器用な動作を支えるのが、同社が導入する画期的な階層型AIアーキテクチャだ。このシステムは、認知と制御のレベルごとにAIの役割を特化させている。戦略的な推論やタスクの計画を行う層、状況に応じて迅速な応答を担う層、そして精密なモーター制御を実行する層が連携して機能する。この構造により、「Agile ONE」は深い認知能力と繊細な触覚技術を融合させ、非常に高い適応能力を発揮する。
実世界データで磨かれた知能と人間との共存
「Agile ONE」に搭載されるAIモデルは、欧州最大級の実世界の産業データセットに加え、シミュレーションデータや人間が収集したデータを基に訓練されている。これにより、予測不可能な事態が発生しやすい現実の作業環境においても、的確にタスクを処理する能力が大幅に強化された。
また、人間との安全で円滑な協働も重視されている。明るいカラーリング、周囲の状況に反応して動く目、人や物との距離を測る近接センサー、そして胸部に設置された情報ディスプレイなど、人間親和性の高いユーザーエクスペリエンス(UX)に重点を置いた設計が随所に見られる。これらは、人間とロボットが共存する環境において、効率的で安全、かつ快適なインタラクションを実現することを目的としている。
Agile Robotsは、2026年初頭からドイツ・バイエルン州の新施設で「Agile ONE」の本格生産を開始する予定だ。
同社はハードウェアの生産プロセス全体を自社で一貫して管理し、品質の維持向上を図る。ドイツ航空宇宙センター(DLR)の専門家らによって設立されてから7年、同社の売上高は毎年倍増を続け、2億ユーロに達している。