現在、「社会保険料」が一部の国民にとって大きな負担になっています。
社会保険料は主に、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上)などで構成されています。
このうち、健康保険・厚生年金・介護保険は原則として本人と会社が概ね折半で負担し、雇用保険は本人と会社の双方が一定割合を負担します(労災保険は全額会社負担)。
年収350万円の会社員が負担している年間の社会保険料は
実際に社会保険料がいくら支払われているかを見ると、地域や加入する健康保険組合によって差はあるものの、「40歳未満で年収350万円の会社員」を例にすると、本人負担は年間で約51万~52万円、会社もほぼ同額以上を別途負担しており、合計では「約105万~107万円程度」に達します。
社会保険の必要性は多くの人が理解している一方で、年収350万円の一人に対して、本人と会社を合わせて年間100万円を超える負担(給料原資)が生じている点は、決して小さくない負担と言えます。
フリーランスは軽い負担に見えて、保障が限定
一方、フリーランスの場合、国民健康保険と国民年金を個人で負担することになり、表面上の支払総額は会社員より少なく見えるものの、その分、将来の年金や傷病時・失業時の保障は大きく限定されます。「元気で働けることが前提」の制度となっていて、会社員と同等の保障を期待したい場合、自身で国民年金基金やiDeCo、民間の医療・所得補償保険などに加入することが勧められます。
増え続ける医療費を抑える
一方で高齢化の進行により、医療費は構造的に増加を続けています。国(厚生労働省)が把握している日本の医療費総額については、2024年度(令和6年度)の「概算医療費」で48兆円を超え、今年度はさらに増加する見通しとなっています。
こうした状況を背景に、医療費の増加という社会課題に向き合う企業の取り組みも始まっています。(ここまで編集部調べ)

■ソフトバンクが挑む、医療費抑制へのアプローチ
ここからは、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社についての本題です。
ソフトバンク株式会社の子会社、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社は2025年12月8日、メディア関係者向け勉強会を開催し、同社の取り組みを紹介しました。
医療費の増加という現状の課題を踏まえた上で、増大する医療費を抑える仕組みづくりに挑もうとしています。

既にホンダや三井住友海上、東急不動産、ゴールドウィン健康保険組合、宮崎トヨタ自動車、大東建託健康保険組合、北海道電力、藤枝市、いわき市、八街市など、多くの企業や健康保険組合、地方自治体に導入されはじめています。

社会課題としての医療費増大に向き合うソフトバンクの視点
ソフトバンクがなぜヘルスケア分野に取り組むのでしょうか。
同社には「通信事業以外にも柱となる事業を開拓していく。そしてそれは、現在の深刻な社会課題を解決すること」というビジョンがあります。

その中で同社が注目した課題は、「日本の労働力の低下」と「増え続ける医療費」です。


人々が健康で過ごせる社会を実現し、医療費を抑制するためのEX化やAI化を推進していくとしています。こうしてヘルスケアテクノロジーズは設立されました。

ちなみに最近話題になっている「一般用医薬品(OTC)に似た処方薬(いわゆるOTC類似薬)」を公的医療保険の対象から外したり、個人負担を見直したりする議論も、増え続ける医療費を適正に抑制する方法を模索する動きの一環です。
ヘルスケア関連企業は大別すると、医療従事者や医療機関にサービスを提供する企業と、生活者に対してサービスを提供する企業に分けられます。同社は、生活者に向けてサービスやソリューションを提供する立ち位置(下図の右側)になるとしています。

人的アセットとSaaSを掛け合わせたヘルスケア支援モデル
意外だったのは、ヘルスケアテクノロジーズ自体が医師、看護師、薬剤師などの人的アセットを保有している点です。健康経営エキスパートアドバイザーなども含め、運営オペレーションにも携わっており、すでに10年以上勤務しているメンバーも多いといいます。

具体的なソリューションとしては、SaaS型の「HELPO」と「Well-Gate」を開発・提供しています。また、「医療費を削減したい」という同社のコンセプトに賛同した医療機関などと提携し、サービスを実現しています。
鴻池氏は「医療機関の運営をデジタル化する支援など、人的アセットとSaaSソリューションを掛け合わせながら事業展開している」と説明しました。
核となる「HELPO」と「Well-Gate」
24時間365日、医療従事者のサポートが受けられる健康相談アプリが「HELPO(ヘルポ)」です。食事や睡眠、歩数などのヘルスケアデータ(PHR)と、薬歴、既往歴、診療記録、バイタルなどのメディカルデータ(EMR)を収集・解析し、ユーザーの健康相談に適切な回答を行ったり、オンライン診療を提供したりすることで、行動変容を促します。

ユーザーにとって何よりの利点は、自身の実データに基づいて医療従事者(専門家)から回答が得られる点にあり、その安心感は大きいと感じました。
もうひとつが法人向けアプリの「Well-Gate(ウェルゲート)」です。ユーザーから提供された健康診断や人間ドックのデータを管理・活用するソリューションで、人事部が担う産業保健領域の業務を効率化します。

企業や従業員から利用許諾を得たうえで、従業員の健康管理をサポートしているとしています。人事部には従業員の健康管理を支援する役割がありますが、実際には十分に手が回らない企業も少なくありません。そこを同社が担い、従業員の健康管理やフォローを支援することで、企業と従業員の双方にメリットを提供していくというコンセプトです。
健康保険組合向けの展開も進めています。保険組合は健康診断やレセプトなどの診療履歴(医療費データ)、処方薬の履歴といったデータを保有しており、それらを基に医療費の妥当性をチェックするとともに、メタボ予備軍などへの特定保健指導も支援しています。
企業・健保・自治体まで広がる具体的な導入事例
実際に導入されている事例として、法人企業、健康保険組合、地方自治体などが紹介されました。医療費の削減と、具体的な従業員の健康促進に向けた動きは既に始まっています。

さらに具体例として、宮崎トヨタ自動車(HELPOとWell-Gateを導入し、人事部と連携して従業員の健康促進を実施)、大東建託健康保険組合(HELPOによるオンライン診療など)、北海道電力(同社が開発した健康管理・健康促進サービスとして機能提供)といった事例も紹介されました。








