自分が育てた「タチコマ」が現実世界に降臨 タチコマサービス実証実験開始へ
株式会社プロダクション・アイジー(I.G)は、2016年12月15日、松村礼央氏の株式会社karakuri productsと協力し、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズのキャラクター「タチコマ」を活用した接客サービスの実証実験を、同社オフィシャルストア「I.Gストア(http://ig-store.jp/)」と「I.Gストア出張店」で実施すると発表した。
実証実験は、12月23日(金・祝)より、渋谷マルイにある「I.Gストア」を皮切りにスタートする。
具体的にはkarakuri productsが12月16日(金)より配信しているiPhone用のアプリ「バーチャルエージェント・タチコマ(https://itunes.apple.com/us/app/id1179820147?ls=1&mt=8)」内でユーザーが育成した「タチコマ」が、実際の店頭のリアルエージェント・タチコマを通じて、アプリで予約購入した商品の受取り体験ができるというもの。
アプリ内のソフトウェアのエージェント・タチコマが、店頭のロボットのタチコマと同期することで、各ユーザーが育てたタチコマと現実世界での出会いを演出する。同時に事業者はユーザーの実店舗への来店を誘導することができる。
1/2タチコマのサイズは高さ130cm、重さは60kg。後ろに重心があるデザインに苦心したという。
この事業は、2014年秋から始まった「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」、株式会社 DMM.com、株式会社karakuri products、海内工業 株式会社、ならびに協賛企業各社が進める「攻殻機動隊 S.A.C. 1/2サイズ タチコマ リアライズプロジェクト」、及び、経済産業省平成28年度『ロボット導入実証事業』の一環としておこなわれる。ユーザーは士郎正宗氏によるSF漫画『攻殻機動隊』の世界を体感すると同時に、得られた知見は非製造業分野でのロボットの社会実装のために活用される。
I.Gとkarakuri productsは、本事業を通して、商業施設や小売店舗などでの接客・案内サービスを可能するロボットのためのインフラ基盤の充実を目指す。I.Gは、アニメーションキャラクターによる個人に適応した接客サービスという新たな付加価値の創出および収益の拡大を目指すとしている。
実施スケジュールは下記のとおり。
■ 渋谷マルイ 7階 「I.G ストア」
住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-22-6
期間:2016年12月23日〜2017年1月15日 (予定)
■アジア太平洋トレードセンター 「I.G ストア出張店」
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北2-1-10
期間:2017年1月19日〜2017年1月30日 (予定)
■実験地調整中(大阪)
期間:2017年2月3日〜2017年2月12日 (予定)
スマホ内のバーチャルエージェント・タチコマと実世界のタチコマの同期
12月16日(金)から配信中のアプリ「バーチャルエージェント・タチコマ」では、タチコマとの会話を通じて、タチコマの記憶を取り戻していくといったかたちで、アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」劇中の記憶を取り戻していくという体裁になっている(S.A.C 2ndGIGの出島空爆後の設定で、タチコマの記憶が部分的に失われている)。
ユーザーは、タチコマとの会話や「攻殻機動隊」の名台詞を楽しんだり、タチコマの姿をカスタマイズしたりできる。
またそれだけでなく、タチコマから「I.Gストア」ならびに「I.Gストア出張店」の商品の予約ができる。
具体的には23日以降にアプリから商品を予約してキャンペーン期間中に来店し、指定の画面を開いて店舗内の指定の台の上に置くと、BLEでペアリングが行われ、店舗内のタチコマのロボットと、バーチャルエージェント・タチコマが同期。そして、自分が育てたタチコマから名前を呼んでもらったり、予約商品を受け取ることができる。
商品は残念ながら手渡しではない。タチコマが予約商品が載せられた台を押しながら移動し、渡してくれる予定だという。なお、タチコマの動きは半自律で行う。店員からの遠隔制御だ。
実証実験開始に先立つ22日には、渋谷マルイ「I.Gストア」にて、プレス向け事前体験会が行われた。
株式会社プロダクション・アイジー執行役員の郡司幹雄氏は「『攻殻機動隊』に描かれた未来が多大な影響を与えている。接客がどれだけ集客や収益に影響するかも検証したい」と挨拶した。
株式会社karakuri productsの松村礼央氏は「アプリの連携が肝だ」と述べた。「接客時間を拡大しようと思うと人を増やすかリーチ数を増やすかしかない。スマートフォンから情報増やし、来店のきっかけとなるコンテンツを楽しんでもらう」と語った。
繰り返しになるが、今回のアプリでは23日から商品をお取り置きする機能が追加され、ユーザーが育てたタチコマが実機に乗り移るという仕掛けになっている。その際たる部分は名前を呼んでくれる部分にある。名前は株式会社エーアイの音声合成技術で実際の声優から収録した音素から合成する。
「自宅で楽しんだタチコマに実際に接客もしてもらえることで、小規模なテーマパークを実現できる」と松村氏は語った。
また、コミュニケーションロボットの普及にはロボットのインフラをどう支えるかが肝になるが、リッチな環境を整えるためのコストを払ってもらうための仕掛けの提案が今回のタチコマだという。なお、松村氏のねらいについては、本誌で以前お届けしたインタビュー「物語の力でロボットを導入する環境を整える 「karakuri products」松村礼央氏インタビュー」(https://robotstart.info/2016/08/25/moriyama_mikata-no10.html)をお読みいただきたい。
今回のデモでは残念ながらまだまだ未完成の感が強かった。体験ももしかしたら後半のほうが出来がよくなっているかもしれない。
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!