今年はロボット競技の世界大会「ロボカップ(RoboCup)」が、7月末に名古屋で開催されます。このロボカップ、第一回大会が名古屋で開催された日本発祥の国際イベントです。
この大会の目標は「西暦2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに自律型ヒューマノイドロボットのチームで勝利する」こと。大きな夢を抱えてスタートしました。
ロボスタでは「ロボカップ2017名古屋世界大会」の事前情報や現地の様子なども報道していきたいと思います。
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の北野宏明氏は、ロボカップ発起人のひとり。
ロボカップの公式ホームページでは、ロボカップ第一回大会からの飛躍やみどころなどについて北野氏のインタビュー記事が掲載されています(必見!)。
ロボスタ編集部でも北野氏を直撃し、ロボットの現状と未来、デザイン、会話機能、ソニーが取り組むロボットなどの質問をぶつけたいと思います。
今回は最も気になる話題のひとつ「ソニーが次に開発するのはどんなロボット?」。
編集部
ソニーは新たにロボットの開発を進めることを表明しています。
報道によれば「楽しむより役に立つロボットを重視」するということですが、なにか理由があるのでしょうか。
北野氏
「楽しいだけのロボットをソニーはやらない」と言うことではないんです。
ソニーが以前に手がけたロボットと言えば、1999年に発表した「AIBO」を思い出されるかと思います。AIBOを企画検討する際、土井さん(当時の土井利忠常務)に「2年くらいで開発するとなるとどんなロボットができる?」と聞かれ、開発期間が2年しかないなら今の技術では人間の仕事をこなすロボットは難しいと答えました。それならばエンターテインメント性があって楽しい、インタクティブなロボットで何か考えようということになり、AIBOができたのです。
では今、次にソニーがやるのはどんなロボットかと考えたときに、最近はルンバなど生活に役立つロボットが出てきて、一般にも認知されるようになりました。当時と比較してロボットやAIの技術が格段に進歩したことを考えれば、楽しいロボットもいいけれど、ただ楽しいだけでは受け入れられるものでもない、と考えています。
技術面からみて生活に役立つものが作れる段階になったにも関わらず、役に立つロボットにチャレンジしないという手もないだろうということです。
そもそもこれからは単品のロボット製品を出してもビジネス上の勝者にはなれないと考えています。
編集部
勝者になるには何が必要なのでしょうか?
北野氏
「AI×ロボティクス」の分野では「エコシステム」を構築すること、エコシステムをつくる戦略が大切です。
ソニーはロボットを作るけれど、ビジネス・パートナーもロボットを作って構わないし、一緒に成長していく構造体系やしくみが重要です。その上で、楽しいだけのロボットがあってもいいかもしれないが、楽しいだけでなく役に立つロボットが重要ではないかと思っています。
編集部
いろいろなロボットを開発していくと意味も含まれていますか?
北野氏
楽しいものから役に立つものまで「面」で製品戦略を考えていきます。デザインもいろいろなデザインが考えられます。家の中だけでなく外にいるロボットもやりたい…。
開発するひとつひとつの製品がいいものであることはもちろんですが、製品単体で見るのではなくて少し離れて俯瞰して見ると、実は様々に関連して繋がっていたんだと感じられるような、そんな製品でエコシステムを作っていきたいと考えています。
ただ、それらの構想の中で何をどの順番で発売していくかはまだ解らないし、多くのものを一度に製品化することもできないので、今は未だ言えないし、少し時間をかけて長い目で見守って欲しいと思っています。
次回は、ロボット×AIブーム、コミュニケーションロボットの会話機能、デザインについてお聞きします。おたのしみに。
※ ソニーが次に開発するロボットとは? PINOやAIBOの開発に関わったソニーCSLの北野宏明氏に聞く(後編)につづく (2月16日公開予定)
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。