月額6万5千円〜のWatson連携、Pepperが高度な会話で受付と接客を実現する「eレセプションマネージャー for Guide」

ソフトブレーンはIBM Watson 日本語版(以下、Watson)と連携した「ソリューションパッケージ」として「eレセプションマネージャー for Guide」をリリースしています。
Pepperを使って受付や接客を行うシステムです。
このソリューションのポイントは、Pepperが来客と対話して受付や案内係などを行うこと、Watsonと連携しているので比較的高度な会話にも対応できること、Watson連携システムにも関わらず月額65,000円から利用できるところです。
この日はロボスタのために「eレセプションマネージャー for Guide」の解説とデモをしてもらう機会をもらいましたのでその様子をお伝えします。また、Watson連携の学習データの設定画面も見せてもらいましたので、Watsonの学習方法に興味のある方はぜひチェックしてみてください。

sbscr-02

ソフトブレーン株式会社 執行役員 製品開発部 兼 システム開発部 部長 小田健太氏




受付・接客Pepper、with IBM Watson

Pepperを使った受付は既に珍しくない光景となりましたが、eレセプションマネージャー for GuideはWatsonと連携しているため、Pepper単体と比べると来客の対応能力がアップしています。どのような対応が可能かというと、ホームページ上では「学習」「ヒアリング」「応対」「お出迎え」「通知」「ご案内」といった項目が並んでいます。

sbscr-01
Pepperはコミュニケーションロボットとして今ではいろいろなところで活躍していますが、一方的に誰かに向かって発話する、いわばプレゼンテーションのような使い方が主となっています。Pepperにはヒトの言葉を聞いてそれを理解する能力もありますが、業務で使おうと思うと高レベルの会話能力と精度が要求されます。例えば、顔認識して誰が来社したのかを判別したり、会話の内容を理解して応対することなどは、Pepper単体では役不足のケースが生まれます。そんな時にPepperの能力を拡張するのがクラウドとの連携です。
会話能力についてはクラウド上のWatsonの助けを借ります。Watsonは質疑応答が得意なコグニティブシステムなので、会話の意図をくんで、顧客との会話がきちんと成立させる範囲が拡がります。

sbscr-15

見た目は普通のPepperと変わりないが、Watsonと連携していると思うと、心なしか頼もしく感じる




eレセプションマネージャー通常版と「for Guide」

ソフトブレーンはPepper単体で受付を行う「eレセプションマネージャー」(通常版)というシステムを持っています。こちらはWatsonとは連携していません。
eレセプションマネージャーが対応する受付・接客シーンはBtoB、BtoCの2つに大別できます。

sbscr-03
例えば、企業の入口でお客様を迎えるPepper向けのeレセプションマネージャー(通常版)は「お客様とのお付き合いは10年前の今頃、××さんとの名刺交換からはじまったんですよぉ〜♪」とか、「今日はお誕生日ですね、おめでとうございますぅ〜♪」といった感じで応対できます。また、Pepperがこうして顧客と会話した内容を担当者と共有することができるため、取り次がれた担当者が「お誕生日おめでとうございます」と連携してアイスブレイクの材料にしたりと、顧客情報を基に機械的に受け付ける以上の対応を目指します。

sbscr-04

BtoBでの受付。WEB画面から事前に受付スケジュールを登録、来客用QRコードの発行も可能。来客時にPepperに表示された名前かQRコードをかざして受付を行うことができる。お客様が来客したことは担当者へ電話やメールで通知するとともに、Pepperが話した内容はスマートフォンで確認できる

BtoCでの課題は定型的で簡単な質問に店員が時間を取られている、希望の場所が分からず、案内してくれるヒトを探す手間がある、担当者によって応対品質にバラツキがあるといった課題を抱えているケースが多くあります。
BtoBとBtoCで、どちらにもある課題、複雑な会話対応をロボットにさせたいという課題をPepperとWatsonの連携によって解決しようというものが「eレセプションマネージャー for Guide」です。

sbscr-05
具体例とプロセスはこうです。
(1)顧客が来店し、「新しい携帯電話が欲しいので、担当者をお願いします」と言ったとします。
(2)Pepperはその音声をネットワーク上のWatsonに送ります。
(3)Watsonは「Speech to Text」(音声を文字に変換する機能)を使い、NLC(自然言語分類)を使って用件の照会を行い、データベースから最適の回答を探して、Pepperに返します。
(4)Pepperを通じて「機種変更」の情報を今度は担当者データベースに照会して、適切な担当者(機種変更担当)を呼び出します。

sbscr-06
ショッピングモールのインフォメーションをPepperが担当するシーンを例に、デモが行われました。

「テレビを買いたいんですけど・・・」と来店客が言うと、「ただいまお探ししています」と応えて、数秒後にPepperが「ご用件は家電量販店でよろしいですか♪」と返します。来店客が「はい」と返事をすると胸のタブレットに地図を表示するとともに「噴水広場をまっすぐ行くと家電量販店○×に着きますよぉ〜♪」と案内します。

Watsonは「テレビを買いたい」「テレビが欲しい」「テレビ売り場どこ?」などの多くの表現がある質問でも、実は同じ回答が適切であることを理解しています。モールでの案内などでは顧客がどのような聞き方をするか分からないので、Pepper単体で対応する場合は、聞き取りや適切な回答を返す精度は低下してしまいますが、Watsonでは学習によって精度が上がっていきます。

また、インフォメーションに人間が立つ場合、「店名」や「婦人服のお店」で聞くと返答できるものの、「大きめの婦人服はどこかで売ってる?」と聞いた場合には回答できないケースも多いと言います。そんな場合でもPepperとeレセプションマネージャー for Guideなら、あらかじめ登録しておけば、大きめの婦人服を扱っている店舗を案内することができる、と言います。

顧客の用件が特定できない場合にこそ、Watsonの能力が活かせるのです。



高齢者介護施設での活用

そのほかの事例として、介護施設での活用をあげました。既に介護施設での導入が決まっていて、その具体的な実例となります。
介護施設では「離職率が高い」「高齢者が何度も同じ質問や話をするのでスタッフが疲弊してしまう」「下のお世話に関することなどを高齢者はスタッフに伝えづらい」などの課題があります。
これらも、Pepperが内容によって適切に判断して、Pepperが会話で対応する、担当者を呼ぶなど、用件によって対応方法を変えることもできます。スタッフでしかできないことをスタッフがやることで効率の高い業務体系に変えていく試みです。

sbscr-09



イベントでの受付

今後はeレセプションマネージャーをイベントでの受付にも対応していく予定です。
この例はWatsonとの連携はしていませんが、QRコードをPepperに見せることで受け付けを行い、Pepperはコードを読み取って来場者の情報をクラウドに送信、出欠席の管理に反映し、その情報をCRMや顧客情報管理データベースに反映することができます。

sbscr-10
受付時にPepperが常連顧客を判断してVIP席に案内することも可能です。また、既に実証実験を実施していて、1000人規模のイベントの受付を3台のPepperで行い、スタッフが受付を行うより効率がよかったという成果が出ています。

eレセプションマネージャーは、ソフトブレーン以外のCRMシステムと連携することもできます。その場合はソフトブレーンが用意している接続用のAPIを使うことで他社システムとの連携を行うことも可能です。また、eレセプションマネージャーは単独で使用可能ですので、CRMを導入していない企業であっても、Pepperとeレセプションマネージャーで受付や接客を行うこともできます。


気になる料金は?

WatsonとPepperが連携するeレセプションマネージャー for Guideの料金は、Pepperの1台目が月額65,000円、2台目以降は月額35,000円です。(Pepper for Bizの料金は別)
Pepper設定代行費用と学習データ作成代行は規模や質問回答数によって大きく変わるので一概には言えませんが、ソフトブレーンが代行した場合は50万円程度~が目安です。
ただ、設定代行や作成代行というだけあって、導入企業自身でそれらを行うこともできます。その場合はPepper設定代行費用と学習データ作成代行費用はかからないので、月額65,000円から導入できることになります。

sbscr-08



これがWatsonの学習の基礎となるデータ

導入企業が学習データを作成するのにはどのような作業をイメージすればいいのでしょうか。
現場の担当者によって質疑応答のリスト出しを行い、エクセルなどで入力することになります。具体的にするため、eレセプションマネージャー for Guideで使用するWatsonの学習設定の画面を見せてもらいました。
まずモールに設置する場合、場所ごとに質問内容が変わりますので、設置場所を選択します。

sbscr-11
Watsonに学習させるデータはエクセルやCSV形式で保存したファイルがもとになっています。
「海外旅行に行くのですが、今のスマホって使えるんですか?」という質問に対しては「携帯電話」に関する質問であり「生活家電」に関するものだという関連づけを登録しておきます。

sbscr-12
携帯電話や生活家電に関する質問については別の画面で登録しておきます。生活家電のお店として家電量販店を案内するための情報です。

sbscr-13
最後にPepperが発話するセリフとタブレットに表示するマップを登録します。

sbscr-14
このように簡単なUI、操作画面を採用しているので、設定やPepperのセリフや案内に使用する画像は、パソコンが使えるスタッフであれば入力したり設定することができ、簡単に使いこなせる仕様になっています。

Watsonのシステムというと、高額なイメージがありますが、eレセプションマネージャー for Guideは企業が導入するには比較的廉価な料金で始めることができます。同社では、様々な業界に向けて、今後も積極的に導入していく予定です。

■eレセプションマネージャー for Guideの紹介動画

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。