Pepperの普及を影で支える日立システムズに聞く ~マルチロボット対応で導入から保守サービスまでワンストップ提供

ソフトバンクロボティクスの「Pepper」と「日立システムズ」との関係をご存じでしょうか。

ぴんと来ない、結びつきを全く感じない、という人が多いかもしれません。
しかし実は、Pepperの普及や活用において、日立システムズは縁の下の力持ち、とても重要な存在になっています。

例えば、Pepperの保守サービス。ロボットの故障時にかけつけてくれて、代替機と交換してくれるサポートセンターの多くは日立システムズが担っています。同社では、Pepperのメンテナンス研修を受けたカスタマーエンジニアが全国で約300拠点、約400名もの体制で活動しています。故障時の代替ロボットとして配置しているPepperは全国の保管センターに配備されています。
万が一、仕事中のPepperが故障したり、具合が悪くなったとしても、代替機を運んで駆けつけてくれるので、業務の中断を最小限で抑えられるよう努力してくれます。


Pepper専用の輸送箱を自社開発

その業務遂行のためにPepper専用の輸送箱も開発しました。配送時に雨や衝撃などによる破損を防ぐ工夫が施され、4面に持ち運びしやすい取っ手、一人で持ち運べるキャスターストッパー、Pepperを出し入れしやすいスロープまで装備されています。更に輸送箱に収納したままでPepperに充電できるすぐれもの、「日本パッケージングコンテスト2016 大型・重量輸送部門賞」に入賞した実績があります。

「日本パッケージングコンテスト2016 大型・重量輸送部門賞」に入賞したPepper輸送箱の特徴

輸送箱に入れたままPepperを充電したり、持ち運びしやすい取っ手が装備されている


全国の小中学校に2,000台を導入

保守サポートだけではありません。
導入や設定も請け負っています。Pepperが職場にやってきて、そのまますぐに活躍できるわけではありません。Pepperを業務に利用できるようにするには導入時の設定をきちんと行う必要があります。

ソフトバンクグループは「Pepper 社会貢献プログラム」の一環として、プログラミング教育支援のために総額約50億円規模を投じ、全国17自治体の小中学校約300校にPepperを貸与する「スクールチャレンジ」を実施しました。納入するPepperの数は約2,000台にのぼります。

約2,000台のPepperを1.5ヶ月という短期間で導入・設定、稼働を支援したのは日立システムズです。この事例は同社の保守サポートセンターの対応力を示すものでしょう。


アプリの開発も行い、導入から保守までワンストップ提供

日立システムズの特長はそれだけではありません。同社で長年実績を積んできたシステム開発部門がロボアプリの開発を請け負っています。
例えば、ある生命保険会社では営業職員を補完する業務にPepperを抜擢。ライフプランアドバイザーを支援したり、支社や店頭で新商品や各種サービス、イベントの情報提供などをこなしたり、子どもや高齢者を対象に対話やゲーム、ダンスや歌などのエンターテイメント・パフォーマンスを提供していますが、その開発の一翼を担っています。この会社は100台以上のPepperが活躍、金融機関としては最大規模の導入台数となります。


すなわち日立システムズは、導入前の相談、業務に合わせたロボアプリの開発、Pepperの導入と設定、保守メンテナンス(交換)までを「ワンストップで提供」しています。
更に、Pepperに限らず、マルチロボットへ対応を拡大しています。

■「ロボティクスサポートサービス」コンセプト動画

ロボティクスサポートサービスの詳細を、日立システムズのロボット事業推進部 曽谷英司氏と 内村修一氏に聞きました。
更にドローンと最新撮影技術を使った驚きの画像も紹介します。


日立システムズに聞く 「ロボティクスサポート事業と最新ドローンの撮影技術」

編集部

まずロボティクスサポートサービスについて教えてください

曽谷(敬称略)

ロボティクスサポートサービスは2016年3月にスタートし、Pepperの導入や交換といったサポートサービスからはじめました。Pepperの場合、企業に導入する場合は導入時のアプリ設定なども必要なので、Pepperのロボアプリや各種設定に関する知識の研修も実施し、スタッフの育成を行いました。
その結果、ソフトバンクロボティクス(SBR)様からはアドバンストパートナーとして認定を受けて、最近ではロボアプリの品質を維持するため、開発についての基準やルールを整備しようということで、SBR様と協力してアプリ開発の公式マニュアルなどを作成するなど、体制面でも協力関係にあります。

株式会社日立システムズ 金融事業グループ 金融営業統括本部 本部主管 兼 ロボット事業推進部 部長 曽谷英司氏

編集部

ロボアプリやクラウド連携のシステム開発なども行っていますね。

曽谷(敬称略)

もともと当社ではシステム開発業務の受託を行っているため、IT分野で開発をお手伝いさせて頂いているクライアント様が約2万社あります。そこに対して「当社はロボットを始めました!」(笑)ということでご案内をしたり、アプローチをさせて頂いています。
Pepperも業務で活用するにはアプリやクラウド連携の開発が必要な場合が多いので、まずはご相談から導入、開発、保守サポートまで、一括してご利用頂くケースが増えています。

内村(敬称略)

Pepperが株価と連動して情報を読み上げるサービスを某お客様で開発しました。具体的には証券会社さんの店舗にPepperがいて、対話形式で銘柄を言うと株価を応えてくれたり、注目のニュースを教えてくれます。

株式会社日立システムズ 金融事業グループ 金融営業統括本部 ロボット事業推進部 部長代理 内村修一氏

編集部

なるほど、本格的なシステム開発にも対応できるということですね。開発を含めて、強みは「ワンストップでのサービス提供」ということになりますね。

曽谷

「マルチロボット」対応も特長だと考えています。Pepperだけでなく、SBRの「NAO」、それに加えてイノフィス社の製品を中心に「パワーアシストスーツ」の取扱もしています。今後は、タピアやロボホンなどの開発・保守も視野に入れていこうと思っています。また、当社は本来コンピュータのハードウェア保守サービスを特長の一つとしていますので、Pepperの保守にも対応させて頂きました。従いまして、どんな機種のロボットであってもご相談頂ければ保守サポートについては検討させて頂く姿勢でいます。

内村

企業によっては拠点ごとに異なるロボットを配置していたり、ひとつの施設で複数の種類のロボットを活用するようなケースも増えてくると考えています。例えば、Pepperとタピア、ロボホンを複数台導入して全国の拠点にまちまちに配置するなどですね。そんなユースケースでは当社のようにマルチロボットに対応したロボアプリやシステムを開発したり、保守サポートまでワンストップで対応できることが重要になるのではないかと考えています。
また、昨年9月からドローンの対応も始めました。

編集部

ドローンのサポートサービスですか?

曽谷

はい、ドローン運用統合管理サービスです。ドローンの場合は、実際の業務ですぐに利用して頂くための「SI」(システム・インテグレーション)サービスに近いと思います。今はエンルート社とDJI社のドローンに対応していますが、当社が所有しているドローンを使って空撮したり、撮影した映像を見やすく加工して納品する業務が多くなっています。

編集部

ドローンの撮影は「測量」や「検査」、「点検」分野の業務でニーズが大きいと聞きます。

曽谷

はい、それらの分野でのお問い合わせが急増しています。最近はソーラーパネルの点検をドローンで行うことは既に一般的になってきました。他には、橋梁、プラント工場、電力会社等の送電線、配電線、携帯電話等の基地局、煙突など、従来は高いところに作業員が登って確認しなければならなかった部分をドローンを飛ばして高解像度の画像で撮影して確認します。それらを画像としてクライアントに提供したり、見やすく加工して提供するサービスです。

※クリックして拡大

編集部

具体的にはどのようなしくみなのでしょうか。

曽谷

まず、現地に行って当社のドローンを飛行させて撮影します。次に撮影したデータを当社のクラウドにアップロードして保管します。その後で業務に合わせてデータの加工を行います。例えば、3次元化して測量に利用したり、亀裂や破損がないかの診断に利用したり、時には解析したデータとして提供することもあります。

編集部

なるほど。クライアントはこれらの画像を加工したり解析するシステムを自社で持っていなくても、ドローン撮影を基にした三次元データを入手したり、利用することができるということですね。機械学習によって傷や亀裂などの有無の診断結果を提供してもらえば効率的ですね。

曽谷

そうですね。実際にはこのようなデータ加工や解析システムはまだほとんど出回っていないので、自社でシステムを持っているクライアント様はほぼありません。そのため、このドローンサービスは付加価値が高いのです。

内村

その精度も驚くと思います。約1億画素のカメラを使用し、ドローンで離れたところから撮影した画像でも「0.2mmのひび割れ」を発見することが十分に可能なんです。



実際の映像を見せてもらいましたが、まさに驚きの精度です。ドローンが飛んでいる100m超の上空は風が吹いているにもかかわらず、補正技術によって映像はほとんどブレません。しかも、煙突の中までクリアに確認することができ、0.2mmのひび割れも見逃さないとなると、まさに人の作業を代替するツールとして十分だと感じました。多くの問合わせが来るのもうなずけます。

■ ドローンでここまで高倍率で確認できる

(実際のサービスでは動画で提供されます)





■「ドローン運用統合管理サービス」商品紹介動画

今後、ロボットの業務利用が拡大していくことが予想される中、日立システムズのように導入から保守サポートまで、規模の大小にかかわらず一括で対応できるパートナーは重要だと感じました。

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ロボスタ編集部

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