【羽田卓生のロボットビジネス入門vol.6】コミュニケーションロボットvsスマートスピーカーの行方
当連載、6回目の今回は、発表が相次ぐスマートスピーカーについて書いてみたい。スマートスピーカーには、どのような製品があるのかをまとめ。そこから、先行するコミュニケーションロボット市場との違い、影響を考えてみる。
世界で発表されるロボット、スマートスピーカーはあまりにも膨大な数があり、それらをまとめた情報は存在していない。本稿では、把握できていない製品もありえるが、これらをまとめていくこととする。
Hamic Bearの登場でいきなりの低価格競争
Hamee(ハミィ)株式会社は、クマ型メッセージロボット「Hamic Bear」を発表した。なんと価格は、3,685円。頭部、手や脚などの駆動する部分もないシンプルなものだが、この低価格には驚きだ。世界でこの価格帯でロボットと呼ばれるものは、香港のWowWee Group Limitedの「COJI」の、31.99ドル(約3,450円)ぐらいだ。世界最安値ゾーンのロボットが、突如日本から、それもロボット会社、おもちゃ会社じゃないところから出てきたのが驚きだ。
世界で確認されたスマートスピーカー、コミュニケーションロボット
改めて、世界で発表・発売されているスマートスピーカー、コミュニケーションロボットを調べてみたい。
なお、今回の記事では、「スマートスピーカーは音声による操作、出力がメインで、駆動やディスプレイなどの出力がメインでないもの。または、デザイン的にスピーカー的であるもの」とし、「それ以外をロボット」と定義した。
やはり、先行するコミュニケーションロボットの方がその製品数は多い。すでに、コミュニケーションロボットと呼ばれるものは、200製品近くも世界で、発表・発売されている。この中で特長的なのが、「Alexa」搭載の製品がすでに15製品も登場していることだ。すでに、プラットフォームとして確立しはじめている。「Alexa」に追随して、様々なプラットフォーム搭載モデルも登場している。このようなAIアシスタントプラットフォームが出現以前は、各メーカーが、音声AI機能を内製したり、汎用の音声AIを搭載するなどを行っていた。当然、開発コストも時間もかかる。「Alexa」 などのプラットフォームを使えば、独自開発が不要になるし、同一プラットフォームでの「機能」の流通も容易になる。このようなプラットフォームの後押しもあり、この分野への新製品の開発競争はますます加速し、その機種数もさらに増えるであろうと思われる。
躍進するAmazon Alexa系スマートスピーカーの現状
Amazon Alexaは、2014年11月に、Amazon Alexa搭載の「echo」と同時にリリースされて以来、3年かからない間に、15機種もの対応デバイスを発売、発表してきた。シンプルな1万円を切るスピーカータイプの「echo」から、フォルクスワーゲン社の自動車に搭載されているもの、二足歩行ロボットに搭載されているもの、LG社の冷蔵庫に搭載されているものまで、幅広くラインナップされている。これは先に述べた通り、Alexaがプラットフォームであり、メーカーがデバイスを開発する上で、分業で開発を進められるからだ。1社ですべてを開発するより、機能機能で分業するほうがコスト、時間とも有利なケースも多い。
上記のマップの通り、Alexa搭載デバイスは、幅広く存在する。サイズも機能もいろいろ。Amazonとしては、この中で、普及するデバイスが出てくればいい。まだ、誰もこの分野の正解はわからない。いろいろ試し、トライアンドエラーするしかない。
先ほどのマップに価格情報を加えてみると、ご覧のとおりになる。すでに、1万円を切っているものも存在する。「Dash Wand」の場合は、実質0円だ。このデバイスを購入するをAmazonのサービスの無料体験などがついており、その金銭価値を考えると、実質無料となる。もう、スマートスピーカーは無料配布モデルまで行われているのだ。
どのプラットフォームが勝つ? 2万を超えるスキルがすでに開発
スマートフォンの魅力の一つに、多くのアプリの存在がある。Androidアプリは、すでに200万以上のアプリが存在しているという。そのアプリの数はプラットフォームの強さでもあるし、そのデバイスで出来ることの多さも意味する。では、コミュニケーションロボット、スマートスピーカーはどうなっているかというと、Alexaのスキル数(Alexaではスキルと呼ばれている)は、2万を超えて、他と比較にならないほど多い。Alexaは、デバイスのバリエーションも、スキルの数も多くあり、エコシステムが上手く機能していることを確認できる。
価格か機能か。ユーザーの求めるものは?
冒頭に紹介したHamic、または、Amazonによる実質無料デバイス。これらにより、価格を追求するモデルは一つの答えが出るのではないかと思う。そして、価格による勝負も確実に行われ続けるであろう。一方、どんな機能、価値を提供すれば、市場が切り開けるかは、まだ見えていない。この連載においては、あえて、コミュニケーションロボットとスマートスピーカーを対比的に扱ったが、ユーザーの求めるものは、どちらに対しても同じではないかと思う。コミュニケーションロボットとスマートスピーカーの違いを、頭部、手足のあるロボット的なものと、見た目がスピーカー的なものとすると、それはあまり本質的ではない。ただ、どちらも、何がキラーコンテンツなのか? はまだ見えていない。音声によるインタラクションの便利さ、または、ペット的な愛くるしさなのか。それとも身体を使ったコミュニケーションなのか、何か作業してくれる有能さなのか。その正解はまだ誰にもわからない。本当にユーザーに求められるものを探す戦いはまだまだこれからだ。
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羽田 卓生1998年にソフトバンク入社後、メディアビジネスや通信ビジネスに主に従事。2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン代表幹事。