【医療ICTにAIとロボット】慈恵医大がPepperを医療ICTに活用する実証実験を発表!フライトシステムとジェナと共同研究開発

「医療ICTでロボットが本当に役に立つのか、どのような成果が得られるのかを、実証実験を通して見極めていきたい」
変革に向けた新たなチャレンジが始まろうとしている。

東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)は「Pepper」を使った医療ICTの取り組みと実証実験を、今年度から来年度にかけて実施していくことを発表した。システム開発は、PepperアプリやAI技術を使ったシステムを多数開発してきたフライトシステムコンサルティングとジェナが行うということで、その共同記者発表会が都内で行なわれた。記者発表会では、実証実験の内容と「医療ICTの現状と展望」についての解説が行われた。

慈恵医大の高尾准教授は「医療ICTにおいてはコミュニケーションロボットの活用について興味がある。ロボットの導入にはコストがかかるが、成果と費用対効果を明らかにし、病院や医療機関にとって会話ロボットが有効かどうかをこれから実施する実証実験で確認していきたい」と抱負を語った。

東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座 准教授 高尾洋之氏


Pepperが行う実証実験の内容


検診センターのコンシェルジュ

慈恵医大の検診センター内で、Pepperがコンシェルジュの役割を担う。患者の予約の確認や受付、当日の検査の流れや行き先の案内などを行う。また、顔認識機能を使い、一度受診した患者を認識して個別の案内を行うことができる。例えば、顔認証によって「○○さん、今日は心臓の検査ですね、突き当たりの待合室でお待ちください」と案内するなどが考えられる。実証実験では個々に合わせた会話にも対応していきたいとしている。


また、最近は訪日外国人による検診センターの利用が増えていて、多言語対応による案内のニーズが高まっていると言う。Pepperは日中英の言語に対応していく。

顔認証を行い、ネットで検査予定を確認して適切に案内を行う

■検診センター イメージ動画


血圧測定で緊張を和らげる

血圧の測定では白衣高血圧(医師や看護師など白衣を着ている人を見ると緊張で血圧が上がる)の患者など、正常に血圧が測定しづらい患者も多い。Pepperは会話によって人を和ませることが得意なので、その機能を活用してPepperの会話によって血圧測定時に外来患者の緊張をほぐすとともに、Pepperは感情認識機能を使って患者がリラックスした最適なタイミングを見計らって血圧測定を行うシステム。Pepperと血圧測定器が連動して測定を行うしくみ。


Pepperが緊張を和らげ、リラックスしたのを確認して測定する

■血圧測定 イメージ動画


認知機能検査を自然な会話の中で行う

Pepperと自然な会話をすることで、認知症の疑いを発見するシステム。すでに多くの実績がある認知症検査エンジンとの連携によって精度の向上をはかる。フライトシステムの代表取締役社長の片山氏は「認知症予備軍は700万人もいると言われている。認知機能を検査するアプリケーションは既に実績を上げているので、ロボットとの会話だけで認知症の疑いを発見することは可能ではないかと考えている。医師不足に悩む地方では、遠隔治療の促進にも繋がるのではないか」と語った。将来は認知症だけでなく鬱病などの発見も視野に入れる。


株式会社フライトシステムコンサルティング 代表取締役社長 片山圭一朗氏


会話ロボットと医療ICTの連携

フライトシステムコンサルティング社とジェナが提供する「Scenaria」(シナリア)は、コンテンツ管理サーバと連携し、Pepperのアプリを創ったり、AI技術と連携したり、複数のPepperを集中管理すること等ができるシステム。管理用ウェブサイトからPepperのアプリの更新や一括でのコントロール等が可能だ。

「Scenaria」はPepperの動作を制御するアプリを創ったり、複数のPepperの運用管理が可能

ジェナはIBM Watsonを活用したシステム開発でも知られ、同社が提供するチャットボット「hitTO」にもWatsonが使われている。
ジェナと慈恵医大とはこれまで、附属病院にビーコンを使った院内ナビゲーションシステムを導入するなどで提携してきた。また、附属病院の高木会館にPepperを導入し、Pepperは慈恵医大の歴史などを解説する傍ら、会話する人々の年齢や感情を分析してきた。

慈恵医大病院内にビーコンを配置し、院内ナビゲーションシステムを実現している

慈恵医大病院に配置されたPepper。慈恵医大の歴史などを解説するとともに、来院者の性別や感情を分析している。

Pepperが解析した感情分析の結果、「悲しい」感情を抱いている人が多かった

ジェナの代表取締役社長の手塚氏は「Pepperが分析した結果、病院を訪れる人や入院している人の多くは悲しみやさみしさを感じている。自分が入院したときも同じような気持ちだった。今後はPepperとの会話等によって患者や高齢者のさみしさを和らげられるようなしくみを提供していきたい。また、今回の実証実験では、血圧測定のときにリラックスしてもらうための会話をPepperがおこなっていくが、Pepperと連携した血圧計を企業が導入することで、健康経営の促進にも繋がるのではないか」と言う。

株式会社ジェナ 代表取締役 手塚康夫氏

今回の実証実験に「Scenaria」を使う理由として、慈恵医大の高尾准教授は”実証実験の際にはアプリ設定の変更や更新を頻繁に行いながら、実験結果を見ていくていく必要があるが、「Scenaria」は変更が簡単なので対応が早く、またそれらの変更についても遠隔で操作・管理できるので、スタッフや学生が常駐しなくても済む”という利点をあげた。

会話ロボットは医療ICTの現場で実証実験を通して試される段階に入っている。実証実験の結果は順次公開していく予定とのこと。「ロボットは医療現場で本当に成果を上げることができるのか」、結果を見るのが楽しみだ。



ロボット×AIが創る未来のソリューション

なお、フライトシステムとジェナは、「Scenaria」とPepper、AI技術についての無料セミナーを12月1日(金)に東京六本木(六本木アカデミーヒルズ)で開催する(無料)。
ゲスト講演として日本アイ・ビー・エムやロボットスタートも登壇するので、興味のある方は参加を検討してみては如何だろうか。

「ロボット × AI が創る未来のソリューション」詳細はこちら

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。