ロボホン(RoBoHoN)のビジネス活用を提案する展示会が都内で開催された。「認定開発パートナー」10社が出展、独自に開発したシステムやサービスを披露した。ロボホンのビジネス利用が加速しはじめている。
シャープは兼ねてより、法人様向けアプリケーションを開発・販売される事業者を「認定開発パートナー」として認定、支援することを公表している。今回の展示会もその一環として開催されたもので、ロボホンの法人向けソリューションの数々とシャープの法人営業の顧客を繋げる機会となった。
では、ロボホンを活用したビジネスソリューションはどのようなものがあったのか、を紹介して行こう。
1. タブレットの画面に合わせてロボホンが解説(シャープマーケティングジャパン)
2. 受付でロボホンがテレビ・ドアホン代わりに(シャープマーケティングジャパン)
3. PowerPointのメモ欄をロボホンが読み上げ(サテライトオフィス)
4. ホームページ内の文章をロボホンが読み上げ(サテライトオフィス)
5. 受付・接客ソリューション/IBM Watson連携 音声AIチャットボット(トランスコスモス)
6. 音声チャットソリューション「Spika」/声でメッセージの読み上げ&返信(イサナドットネット)
7. ビーコンと連携してロボホンがその場所を解説「ロボットガイド」(ボクシーズ)
8. ロボホンがスタンプラリーを盛り上げる(コンピュータ・ハイテック)
9. ロボホンで服薬管理(プライム・ファクターズ)
10. Slackで投稿した文字をロボホンがリアルタイムで読み上げ(ソフトウィング)
11. 就活前にロボホンが性格や適正な仕事をアドバイス(ビットソリューション)
12. 手書き数字をロボホンが読み上げ(アンクシステムズ)
タブレットの画面に合わせてロボホンが解説(シャープマーケティングジャパン)
シャープマーケティングジャパンは2種類のソリューションを展示した。
ひとつは、Androidタブレットの動きにロボホンが連携して話すシステムで、温泉のあるホテルや旅館や民宿などの施設で使用することを想定したものだ。
デモでは、タブレット画面に「近くのコンビニ」「温泉のご案内」「朝食のご案内(ENGLISH)」などのメニューが並ぶ。「近くのコンビニ」を選択するとコンビニまでの行き方が表示されるが、道順や目印はロボホンがしゃべって案内してくれる。
タブレットだけなら既に、受付やカウンターなどの様々なところで見かけるようになったが、ロボホンが連動することで、写真や地図などはタブレット画面で、解説はロボホンの読み上げで行われるため、利用者のわかりやすさは格段に上がると感じた。また、ロボホンの解説は英語と中国語にも対応させることができるので、インバウンド(海外旅行者)にも対応できる。
ロボホンとタブレットが固定されてひとつのユニットを採用していて、ロボホンは一見、宙に浮いているようにも見える。ロボホンは携帯性が高い反面、盗難が心配だが、このシステムではロボホンはユニットにワイヤーで固定され、盗難を防止するしくみになっている。
■接客・案内システム
受付でロボホンがテレビ・ドアホン代わりに(シャープマーケティングジャパン)
もうひとつは、受付で、ロボホンがいわばテレビ・ドアホンの役割をするシステムだ。受付にやってきた顧客をロボホンが検知するか、顧客がロボホンの頭を押すと「ピンポン」と鳴って、オフィス内のタブレットにはロボホンのカメラで撮影した映像が表示される。また、来客がロボホンに話した言葉も聞くことができる。オフィス内のスタッフはテンプレートの一覧から文字を選ぶと、ロボホンが来客にその言葉をしゃべって伝えるしくみだ。なお、タブレット側からロボホンを操作し、受付の周辺を見回すこともできる。
■テレビ・ドアホンのようにロボホンが受付で活躍
PowerPointのメモ欄をロボホンが読み上げ(サテライトオフィス)
ロボホンとタブレットが連携し、Microsoft PowerPoint(パワーポイント)で作ったプレゼンテーションを行うことができる。パワーポイントのスライド画面はタブレットに表示され、「メモ」に記載した文章はロボホンがスライドに合わせて読み上げるしくみだ。
ホームページ内の文章をロボホンが読み上げ(サテライトオフィス)
もうひとつがWindows用のウェブブラウザ「ロボットブラウザ」。ロボットブラウザを使って、あるホームページにアクセスするとロボホンが「いらっしゃいませ、僕は××会社のロボホンです」と話しはじめた。ロボットブラウザはロボホンにセリフをしゃべらせることかできるブラウザだ。しゃべる言葉は、ホームページのHTMLコード内に専用の「ロボットタグ」を使ってテキストで埋め込まれたものだ。
デモでは、ロボホンとMicrosoft Surfaceが連携して受付を行うシステムが紹介された。これもHTMLで作られたページで、ロボットブラウザを使って全画面表示をすることでアプリのように受付の画面として動作する。なお、ロボットブラウザからOffice365やSkype for business、G Suite等と連携させることができる。デモでは受付で顧客が社員リストから選択すると、その社員にロボホンから電子メールで来客が来たことが通知されるが、それはOutlookとの連携機能を使ったものだ。
■ロボットブラウザでロボホンが受付
受付・接客ソリューション/IBM Watson連携 音声AIチャットボット(トランスコスモス)
トランスコスモスはロボホンとタブレットを使った受付・接客ソリューション「ロボティクスマーケティング」(音声AIチャットボット)を展示した。
ユーザーと会話をしたり、ユーザーからの質問に対してロボホンが回答する。ロボホンはネットワーク経由でIBM Watsonと接続し、高度な質問にも回答することができる。同社によれば、一般にユーザーからの質問のうち70〜80%はFAQに回答があるもので、それらはAIでの回答で対応可能と言う。課題は残りの20〜30%の高度な質問だが、同社のシステムではIBM Watsonが回答できない場合、コールセンターのオペレーターに接続し、ロボホンを通じてオペレーター(人間)が回答するしくみも用意した。
トランスコスモスと言えば、コールセンターの運用や人材派遣で知られる最大手だ。IBM WatsonなどのAI関連の機械学習に重要な、膨大なFAQデータや知見を持っている。それを活用してロボホンに高精度な回答をさせると同時に、コールセンターへの切替によって100%の回答を目指す。
なお、ロボホンを通じてユーザーとオペレーターが接続された場合、オペレーターの操作はすべてテキスト・チャット形式で行い、ユーザーとロボホンとの対話はすべて音声会話で継続されるしくみになっている。
音声チャットソリューション「Spika」/声でメッセージの読み上げ&返信(イサナドットネット)
イサナドットネットが展示したのはチャットソリューション「Spika」(スピカ)。スピカはスマートフォンやパソコン、スマートウォッチ、ロボット、スマートスピーカーなど、様々なデバイスでチャットができるツールだが、その端末としてロボホンが加わった格好だ。
スピカの最大の特徴のひとつが音声チャットだ。スマートスピーカーの登場で音声によるコミュニケーションが見直されつつあるが、スピカもスマートスピーカーやロボットを使って「手ぶらでチャット」を提案している。手が離せない作業中や目が離せない業務を行っている場合は特に、音声でなら誰か(人)に「商品Aを10箱届けるお客様はどこだっけ?」と聞いたり、グループウェアやデータベース、Microsoft Cognitive ServiceやGoogle Cloud PlatformなどのクラウドAIに対して「今日の16時、会議室は空いてる?」「商品Aの内部電源の配線コードって何色?」など、作業を行ったまま問い合わせるなど、人×人、人×コンピュータのどちらともコミュニケーションできる。
スピカを使うと、パソコンやスマートフォン、スマートスピーカーやロボットなど、デバイスに合わせてシステムを開発する必要はない。対話の形態も音声×音声、音声×テキストなど、デバイスに合わせて最適なものを設定すれば自動的に変換される。例えば、受付において音声で顧客を迎えるデバイスとして、スマートスピーカーを設置するケースもあれば、受付に明るいオモテナシを導入したいと感じればロボホンのようなロボットを設置するなど、自由にデバイスは選択することができるしくみだ。
デモでは、ロボホンに届いているメッセージを聞き、そのメッセージに対して返信する実演が行われた。
家庭でも料理をしながら、視線も変えずに、自然な会話で次のレシピの手順がロボホンに聞けたら便利だと感じる。業務でもそのような作業環境にある人には音声によるコミュニケーションは便利だ。また、新しい業務の手順をいつも先輩に聞いてばかりいると、先輩の時間も取られるという課題もある。音声デバイスに質問して回答を得ることで「働き方改革」にも繋がるだろう。
■ロボホンでメッセージを確認、メッセージを返信(Spikaの活用)
ビーコンと連携してロボホンがその場所を解説「ロボットガイド」(ボクシーズ)
所定の場所に設置したビーコンとロボホンが通信して、ロボホンが場所に合った解説やプレゼンテーションを音声で行うシステム「ロボットガイド」を展示した。
例えば、施設の各部屋にそれぞれビーコンを設置しておき、受付で来場者にロボホンを渡す。来場者はロボホンを持って施設内を歩くと、訪れた部屋で「ロボホン教えて!」と話しかけると、ビーコンとロボホンが通信してその施設に合った説明を音声で行うような活用法が想定されている。ビーコンはとても小さいもので、電池で動作するため、置いたり両面テーブで設置できる。
■ビーコンと連動して、場所に合わせてロボホンが解説
ロボホンがスタンプラリーを盛り上げる(コンピュータ・ハイテック)
ロボットでスタンプラリーを盛り上げる「ロボスタンプ」を展示した。既に「ATCロボットストリート」(大阪)では9台のロボットと連携して活用され、子どもたちにも大人気だったと言う。
様々な場所にスタンプ台を設置し、利用者が押していくのがスタンプラリーだが、ロボスタンプではスタンプ台にロボホンが乗っていて迎えてくれる。スタンプを押す前にQRコードをかざすと、「レンくん、こんにちわ!」と名前を呼んで挨拶してくれたり、いくつめのスタンプかでロボホンのセリフを変更したり、「がんばってね」と応援してくれるシステムになっている。
スタンプ台には感圧センサーが組み込まれていて、実際にスタンプを押したかどうかを検知している。ロボットとスタンプ台を含めてネットワークで連携しているので、どのスタンプ台であっても個々のユーザーが押したいくつめのスタンプかを判別したり、ゴールには特別な言葉と演出で達成を盛り上げることもできる。
スタンプ台とロボット、システム込みのレンタルとなっていて、今後はイベント会場だけでなく、ショッピングモールなどの商業施設にも導入していきたい、としている。
ロボホンで服薬管理(プライム・ファクターズ)
ロボホンでは、標準で用意されている「ロボリンク」機能などを活用すると、ロボホンが定時になるとユーザーに「お薬飲んだ?」と確認させることができる。医療機関のアドバイスの元で服薬管理に特化した機能としてブラッシュアップしたものが「お薬管理」(仮)だ。
このシステムは、MSDが2017年に開催した、糖尿病領域における医療課題解決のためのビジネスコンテスト「Diabetes Innovation Challenge」において、「コミュニケーションロボットを活用した服薬管理サービスの提供」として優秀賞を受賞した。アクセラレーションプログラムを経て、来春に開発完了を予定している。
このシステムの特長は、ロボホンが定時になると服薬を確認する。自然な音声コミュニケーションと親しみやすさ、愛着心などがスマートフォンにはないものだ。ユーザーが薬を飲んだことを伝えると、ソニーの服薬支援システム「harmo」(電子お薬手帳)と連携して飲んだことが記録される。医師や看護士、療法士は「harmo」の情報を参照することで、きちんと服薬がなされているかが確認できる。また、患者が飲んだことを忘れて重複して服薬してしまうケースも考えられるが、それを防ぐしくみも取り入れる予定だ。電子お薬手帳も「harmo」以外のシステムにも対応していくことは可能としている。
ロボホンは携帯できるロボットなので、患者が持ち歩くことで外出先でも服薬管理ができるロボットとして期待したい。
Slackで投稿した文字をロボホンがリアルタイムで読み上げ(ソフトウィング)
「RoBoTalk」(ロボトーク)と「RoBoSlack」(ロボスラック)を展示した。
ロボトークはロボホンが質問に応えるアプリ。Googleの自然言語対話プラットフォーム「Dialogflow」と連携することで、対話シナリオを増やすことかできる。
「RoBoSlack」(ロボスラック)はコミュニケーションツール「Slack」と連携できる。例えば、スマートフォンやパソコンから、Slackの指定チャンネルに投稿した文字をロボホンに発話させることができる。
また、Slackの複数の指定チャンネルにロボットを割り当てて、複数のロボットが連携して動作をさせることもできる。例えば、デモではSlackの指定チャンネルに「01」と投稿すると、予め01として登録してあるダンスをロボホンが踊り出す様子を実演した。これを応用すると、複数のロボホンで同時にダンスをさせる制御もできる。
■「RoBoTalk」(ロボトーク)と「RoBoSlack」(ロボスラック)
就活前にロボホンが性格や適正な仕事をアドバイス(ビットソリューション)
ビットソリューションは「キャリナビ」と「首都クイズ」を展示した。
「キャリナビ」は、就職や転職をしたい求職者が自己分析したり、適する職業をロボホンがアドバイスするアプリとなっている。キャリアコンサルタントの有資格者など、適性検査のスペシャリストが監修にあたった。8問の質問に回答するだけで、性格や適職などをアドバイスしてくれる。
人から言われると角が立つ内容でも、ロボホンからのアドバイスであれば聞き入れやすい。質疑応答からアドバイスまですべて音声で行うため簡単にできるということもあって、求職者セミナーや学生の就職支援課などからの問合わせがあると言う。「首都クイズ」は学校や塾、子ども向け施設などで教育用も兼ねて作成されたアプリ。
■ロボホンからの8つの質問に回答する「キャリナビ」
手書き数字をロボホンが読み上げ(アンクシステムズ)
手書きで書いた数字をカメラ機能を使ってスキャンし、ロボホンが数字を当てる機能を展示した。また、ロボホンに送信した画像に何が写っているかを解析するデモも行った(ケータイ電話を撮った画像をロボホンに送ると「携帯電話かな」とロボホンが発話する)。
同社は受託開発を行う会社で、現在ロボホンを様々な技術を組み込む研究をしている最中で、これらのデモもその一環だと言う。
■手書き数字をロボホンが認識して読み上げるシステム
ロボホン「認定開発パートナー」の販売支援は今後も継続
いよいよロボホンのビジネス活用が本格的にはじまった。
かわいい仕草で人目を引くだけでなく、音声による説明や会話は、利用者にもやさしいのがロボホンの特長だ。
来場者も開発パートナー各社が開発したシステムやサービスに興味深く耳を傾けていた。
ビジネスへのコミュニケーションロボットの利用ははじまったばかり。用途の提案や、さまざまなセンサーやAI関連技術との連携など、今後の可能性は大きい。シャープでは、今後も開発認定パートナーとの連携強化を予定している。
「開発認定パートナー」の詳細は下記の公式ページを参照。
認定開発パートナー – ロボホン