独ダイムラーが2018年2月2日、新型メルセデス・ベンツ Aクラスを世界初公開した。
ロボスタとして注目したいのは、このAクラスに搭載された最新インフォテインメントシステム「MBUX」だ。
Mercedes-Benz / World premiere at CES 2018: MBUX: A completely new user experience for the new compact cars
REUTERS / ‘Hey Mercedes’ – Daimler takes on Silicon Valley with hi-tech A-Class
Mercedes-Benz A-Class
「MBUX」を初搭載する新型Aクラスのメルセデス・ベンツとしての位置付けはエントリーモデルだ。ハッチバック型のコンパクトカーで、サイズ的にも価格的にもこのメーカーとしては小型で廉価なモデルである。
この手の新技術はフラッグシップモデルから搭載していくのが一般的なのだが、今回は最も量産されるモデルから搭載することになる。
MBUXは、今年後半にAクラス全車両に搭載され、次いでクラスを問わず新しいメルセデス・ベンツ全車両に搭載される予定だ。
MBUXとは?
MBUXは「Mercedes-Benz User Experience」(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)の略で、最新トレンド満載の車載システムだ。「MBUX」搭載車両は、ダッシュボードに巨大な高解像度ディスプレイを2つ水平に並べたものになっている。しかもタッチスクリーンはレスポンス良く動き、iPhoneと同じような操作感を実現しているという。
システムはNVIDIAの技術が採用されており、AIを活用してドライバーやパッセンジャーの好みに合わせることを目指しているという。
具体的には、自動車での帰宅時にお気に入りの音楽を自動的に提案したり、夕食時にはなじみのレストランへの道筋を示したりすることができるという。他にもガソリンスタンドにおけるガソリン価格、利用可能なコインパーキング情報、駐車時に衝撃を受けた際のメッセージ送信機能などできることを例示するとキリがないほどだ。
また車載システムでネット接続がない状態または不安定な状態で全く機能しないのは実用的ではないため、オフラインでの機能できるように配慮されているという。このシステムは音声認識の大手ベンダー、Nuance Communicationsの組み込みソフトウェアが採用されている。
オフラインでの動作対応については、Amazon Alexaにおける「Alexa Onboard」と同様の考え方だろう。
MBUXの起動はウェイクワード「Hey Mercedes!」(ヘイ、メルセデス!)による音声起動、またはハンドルのボタンを押すことによる起動がある。
起動後に、コマンドを伝えるのはスマートスピーカーと同じだが、さらに上を行く自然言語処理が実装されているようだ。公式のプレスリリースによれば、「ラスベガスの天気を教えて」「エアコンの温度を24度にして」といったコマンドを使う必要はなく、単に「明日はサンダルでも大丈夫?」「寒いなぁ」のように人間と会話するスタイルで話しかけることができるという。
このMBUXは今後23か国語に対応し、日々最新の俗語に対応できるようにアップデートされていくという。
MBUXの動画
以下メルセデス・ベンツが公開しているMBUXの紹介動画だ。
僕はこう思った:
自動車メーカーの音声アシスタントの車載の流れは加速しています。メルセデス・ベンツのライバルとなるドイツ高級車大手のBMWはAlexa、Google両対応の方針を打ち出しています。一方メルセデス・ベンツは独自路線を選んだのが意外な展開でした。日本語版MBUX搭載のAクラス、日本上陸したら是非乗ってみたいものです。
蛇足ですが、以前アメリカで活動していた「HEY MERCEDES」というバンドがあって、「ヘイ、メルセデス、ヘイメルセデスの曲をかけて・・・」とかややこしいことになりそうですね。
ロボスタ / 音声アシスタント特集
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中橋 義博1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。