「DLLAB DAY 2018 深層学習を使いこなす日」開催「AI技術は現実の問題解決に活用されるべき」金出氏

6月21日、東京都内で「DLLAB DAY 2018 深層学習を使いこなす日」が開催された。
DLLABとはディープラーニングラボの略。ディープラーニングラボとは、ディープラーニングに関連する、開発事例や最新技術動向を情報発信するコミュニティだ。Preferred Networks(PFN)とマイクロソフト コーポレーション(日本マイクロソフト)が中心となり、「テクノロジー」「人材育成」「マーケティング」の3つの軸で連携を進め、ディープラーニングの研究、勉強会、社会実装、普及など、さまざまな角度から情報共有や共創を進めている。
DLLABの一周年を記念して、このイベントが開催された。

基調講演に登壇した日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)、マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役 社長の榊原 彰氏


金出氏「AIは人をより賢く、生産的にすることに利用されるべき」

当初、基調講演にはカーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授の金出武雄氏も登壇する予定だったが、大阪で発生した地震で被災された関係で、金出氏はスカイプでの参加となった。

地震の被害のため、スカイプでの参加になったカーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授の金出武雄氏


ディープラーニングはパーフェクトストーム

金出氏は「ディープラーニング」を「パーフェクトストーム」に例えた。
「パーフェクトストーム」は複数の厄災が同時に起こり、想定を超えた事態が起こること。1991年、3つの気象条件、巨大な嵐が重なったことで、歴史に残る大嵐・大波が巻き起こったことに由来する。ディープラーニングにおいては、金出氏はこれをいい意味として引用し、3つ波が大きな波を生み出したことを示唆した。
それはディープラーニングの醸成、ソーシャルネットワークを含めてデータを集めるしくみ(ビッグデータ)、GPUを含めた強力なコンピュータの登場であり、この3つがタイミング良く実現したことによって、新しい技術革新が次々に生まれていることに基づくものだ。


AI技術は現実の問題解決のために活用されるべき

新しいAIの時代にとって最も重要なことは、ディープラーニングの活用そのものが目標とするのではなく、社会に存在する大きな問題を解くためにAIの技術を活用することだと語った。

金出氏は、初期の人工知能研究の研究者であるカーネギーメロン大学のアレン・ニューウェル氏の言葉「良い科学は現実の問題に応答しなければならない」という言葉が好きだと語り、この言葉に込められている意味は、科学は問題を解くために使われることが大切であり、道具を使うことが目標となってはいけない、それによって衰退も生まれるとした。
人の能力を凌ぐだろうとも言われる「AI」技術はどこに使われるべきか、という点においては、「人をより賢く、生産的にする」こと、「Brain amplifier」であることだとした。

基調講演にはこのほかに、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)の榊原 彰氏、株式会社Preferred Networksの創業者であり代表取締役社長 最高経営責任者の西川徹氏、理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏らが登壇した。

ディープラーニングやビッグデータの活用を加速するHPCのインフラ化、TSUBAME3.0、「Post-K」(ポスト京コンピュータ)等について語る松岡聡氏

Microsoftの榊原氏の講演は関連記事「MS ExcelやWordにAI機能を今秋追加!マイクロソフトがIoTを睨んだエッジAIとFPGA「BrainWave」とは?」(ロボスタ)で公開中。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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