これが未来の先端医療「スマート治療室」だ!東京女子医大の「SCOT ハイパーモデル」手術室を報道陣に公開

案内されたSCOTスマート治療室は、手術台や電気メス、4Kモニタを含む手術ナビゲーションシステム、MRI装置などが設置されていた。普段一般の人はもちろん、報道陣も滅多に踏み入れることのない場所だけに緊張感が漂い、MRI装置の周囲はカメラ器材のデータが消えてしまうような磁場が常時発生している範囲を知らせる「5ガウスライン」が敷かれていた。

手術室内の様々な医療機器を接続し、手術室外との連携も行う、カメラや遠隔通信、IoTを活用した「スマート治療室」をAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が推進していくことを発表したことは既報の通り。関連記事「【速報】AMED、IoTを活用した最先端「スマート治療室」のスタンダードモデルの臨床研究の開始を発表!東京女子医科大学、信州大学、デンソーらと連携で


スマート治療室は、AMEDが主導し、東京女子医科大学、信州大学等の5大学、デンソー、日立製作所など企業11社と共に推進していく先端治療室のパッケージ製品となる。この次世代手術室は「SCOT」 (Smart Cyber Operating Theater)と呼ばれ、現時点で3つのモデルが存在している。



スマート治療室の製品化はSCOTスタンダードモデル

製品としては「SCOT スタンダードモデル」(スタンダード SCOT)というパッケージで販売が検討される見込みだ。ミドルウェアには工場などの産業用機器やロボットとの連携で既に利用されてきたデンソーの「ORiN」(オライン)をコア技術として、治療室用インターフェース「OPeLiNK」(オペリンク)を同社が中心となり開発したものが活用される。MRIなどの機器は日立製作所製のものをパッケージとして用意可能だが、別のメーカーのものでも機器を選ばずに選択して接続できるように配慮されていると言う。この「OPeLiNK」を備えた「スタンダードモデル」手術室が信州大学病院の包括先進医療棟内に完成。各種医療情報を「時系列の治療記録」として収集・提供(表示)するシステムだ。また、手術室外の医師・技師等にも共有することにより、治療の効率性や安全性の向上が期待できると言う。これらの検証のため脳腫瘍に関する臨床研究を今月より開始したことも発表された。


■ベーシックモデル
広島大学に2016年から設置。術中MRIを中心とした国産医療機器を情報統合可能な形にパッケージ化したもの。スタンダードモデル向けにOPeLiNKネットワークの研究開発を実施。広島大学では、脳外科以外の整形外科等へも展開中。

■スタンダードモデル
信州大学に2017-18年から設置。臨床利用可能なレベルのOPeLiNKが導入されたスマート治療室。手術室のほぼ全ての機器がネットワークで接続されている。2018年7月より脳外科にて臨床研究開始。情報統合による手術の効率性・安全性を実証する。

■ハイパーモデル
東京女子医科大学にプロトタイプとして2016年に設置、病院に2019年に設置予定。スタンダードに加え、新規開発のロボットベッド等のロボット化、情報のAI化を目指し、高密度集束超音波等の新規精密誘導治療の検討を行う。今年度末に東京女子医大に臨床研究可能な手術室を設置し、2019年度事業化のスタンダードモデルに新たな技術を導入していく。


スマート治療室 ハイパーモデルを公開

では、実際にスマート治療室とはどんなものなのか?
「SCOT スタンダードモデル」とは別に「SCOT スタンダードモデル」に最先端のシステムを加えて臨床研究可能な「SCOT ハイパーモデル」を東京女子医科大学に設置された。今回の記者発表会では、この「SCOT ハイパーモデル」が報道陣に公開された。

左がたくさんの情報を集中して表示できる手術ナビゲーションシステム、右に顕微鏡やロボット手術台が見える

案内されたSCOTスマート治療室は、手術台や電気メス、4Kモニタを含む手術ナビゲーションシステム、次世代の顕微鏡、MRI装置などが設置されていた。普段一般の人はもちろん、報道陣も滅多に踏み入れることのない場所だけに緊張感が漂い、MRI装置の周囲はカメラ器材のデータが消えてしまうような磁場が常時発生している範囲を知らせる「5ガウスライン」が敷かれていた。

手前がロボット手術台。億にMRIが見える。床には「5ガウスライン」が敷かれている(右下の床)

手術ナビゲーションシステムには手術中の患部が大きく写し出されるとともに、メスを動かした軌跡(トラッキング)や、切除した部位などが記録される。それと同時に戦略デスクにはその映像がリアルタイムに送られ、遠隔地から別の医師や識者、研究者などのアドバイス等を得たり、音声でオピニオンを仰ぐことができる。戦略デスクから各種データベースにアクセスして、多くの症例や過去の事例などを参照しつつ、最適な手術を行うための情報支援が可能となっている。


例え執刀医が若手の医師であっても、各種情報を参照しながら高精度な手術を行うことができ、熟練医のアドバイスも音声や画像で受けることができる。

公開された様子とデモが下記の動画で確認できる。解説しているのは「OPeLiNK」の開発元、株式会社デンソーの新事業統括部メディカル事業室 室長 奧田英樹氏によるもの。

■AMED「スマート治療室」ハイパーSCOTの公開デモ動画



戦略デスクと手術室の交信やアドバイスのデモ

戦略デスクから手術室へアドバイスや指示を行うことを想定したデモも公開された。下記の動画では、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授 村垣善浩氏によるアドバイスの例(デモ)が見られる。


■AMED「スマート治療室」戦略デスクと手術室の交信とアドバイスのデモ動画

従来はほとんどデータの連携が行われてこないスタンドアローンだった手術室の機器類をOPeLiNKが連携、データの共有や見える化を実現していく。このシステムが目指すのは、より高い水準の安全な未来の手術の姿だ。若手の医師であっても熟練医の意見を聞いてより安全な手術に取り組むことができるよう、情報やノウハウの見える化を行い、手術の室や効率の継続的な改善を促していく。


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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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