AIやロボット、建機で農業や林業を変革する「スマート農業アライアンス」の成果を発表 〜オプティムやコマツ、佐賀市など登壇

株式会社オプティムは、AI・IoT・ビッグデータを活用した「スマート農業アライアンス」におけるこれまでの成果発表の会を東京都内で開催した。オプティムのほか、小松製作所、みちのく銀行、佐賀県佐賀市、農林水産省などが参加し、成果とともに今後の展望なども発表された。会場には約260名が来場した。

そこでは農業に建機や重機を活用したり、ドローンやAIを使うことで、農業を効率的にもっと稼げる産業にしていこうと言う提案が行われた。

「スマート農業アライアンス」とは、2017年12月、AI・IoT・ビッグデータを活用して“楽しく、かっこよく、稼げる農業”の実現を推進する未来志向の取り組みとしてオプティムが設立した。農家だけではなく、企業や金融機関、自治体、大学など、スマート農業を共に実現する未来志向があれば誰でも参画できる。現在約300名が加盟している。「スマート農業アライアンス」に参画すると「スマートアグリフードプロジェクト」「スマートデバイスプロジェクト」「その他プロジェクト」のいずれかに参加できる。


オプティムはスマート農業、スマート林業を推進

発表会の冒頭では、オプティムの菅谷俊二氏が登壇した。「オプティムは世界で一番、AIを実用化する企業を目指している」として、「AIはすべての産業を間違いなく一変させる」と展望を語った。

株式会社オプティム 代表取締役社長 菅谷俊二氏

オプティムの取り組みは農業だけではない。医療では診断をAIが支援すること、駅のホームのセキュリティをAIが監視したり見守るシステム、AIが監視する無人店舗などの取り組みに触れた。その上で、AI・ロボット・IoTを使って最も変わる産業は「農業」だと強調した。





コマツの建機が農業と林業の効率化に取り組む

続いてコマツ(小松製作所)の取締役会長である野路國夫氏が登壇した。コマツとオプティムはリモートテクノロジー分野で業務提携し、建設生産プロセス向けのプラットフォーム新会社としてLANDLOG社を設立している。

小松製作所の取締役会長 野路國夫氏

野路氏は、石川県より「農業や林業の改革をして欲しいと言われた」ことに端を発し、今では「最先端の建設機械と農業アタッチメントを使って、従来の農業ではできなかったことを実現したい」「農業のイノベーションを起こしたい」という思いがあるとした。オプティムは農業のビジネスモデルを変えようという姿勢が素晴らしいと語った。



スマート農業のビジネスモデル

では「オプティムが変えようとしている農業のビジネスモデル」とはなんだろうか?
簡単に表現すると、オプティムは利用する建機やICT機器は無料で提供している。農家が収穫した作物はオプティムが全量を買い取り、付加価値を付けて市場に販売、その利益を折半するシステムを作り上げている。


「ピンポイント農薬栽培」による商品名「スマートえだまめ」がその代表例だ。ドローンによって枝豆の栽培地を撮影し、必要な箇所にだけドローンで農薬を撒く技術を導入した。画像解析にはディープラーニングの技術も使われている。

圃場に農薬を無作為に撒くのではなく、画像から撒く必要のある箇所を特定する

害虫や病気の部分だけに農薬を散布することで、農薬の量を90%削減、したがって残留農薬も激減、農薬のコスト削減にもつながった。収穫した枝豆には市場価格の3倍の価格をつけて販売し、すべて完売した。その収益を同社や農家等で分配するシステムだ。

減農薬のスマート枝豆は3倍の価格でも完売した



建機をどのように農業に使うのか

コマツは建機を使った水稲生産コストの削減の実証結果として、コシヒカリの田植え移植栽培の1.5倍、コストは4割削減を実現したと報告した。建機を田んぼでどのように使うのか、収穫量や付加価値を上げるとはどういうことなのか、その一例が次の動画で紹介されている。


■コマツの建機をスマート農業に活用

■コマツの建機をスマート農業に活用 その2




ドローンや建機を活用したスマート林業

菅谷氏は「日本は世界的に見ても森林大国にも関わらず、従事者は高齢化し、年々減っている」と解説した。
では、ドローンや建機をどのようにスマート林業に活用するのか?
ドローンを飛ばして画像を撮影し、それをエッジコンピュータ機器に入れて解析させると地形や樹木の数のデータを解析できるという(森林資源の見える化)。林業では人が山林に入って調べる必要があったが、ドローンを飛ばすだけで把握することかできる。

木の数を解析している例

■林業が楽になり、人手不足が解消できる

コマツの野路氏は、大切なことは「AIやロボット化という言葉が氾濫しているがそれらに踊らされてはいけない。本当に役立つのか、収益に繋がるのかが大切。ロボット化、自動化をしさえすれば儲かると思ったら大間違いで、AIやICTを使うことが目的になってはいけない。あくまで付加価値を上げ、生産性をあげて儲かる新しいしくみを作ることが大切だ」とした。




「スマート農業アライアンス」への参画を呼びかけ

菅谷氏は「キャベツの市場価格100円に対して減農薬キャベツはひと玉280円で売って完売した」ことを例に挙げ、「ピンポイント農薬散布テクノロジーは今後、世界の農法の主流になる」とした。「有機農業の面積は日本の農地全体の0.5%に過ぎない。
有機農業は良いことだと解っているのにバカバカしいほど手間がかかる。農業や林業で、バカバカしいほど手間がかかっていたことをAIやロボットによって簡単にできるようにしたい」「オプティムはスマート農業テクノロジーを生産者の方に使い倒して頂き、生産者の方に新しい市場を作りだしていきたい」「20兆円に膨らむ大きな市場を生産者の方々と山分けしていきたい」とし、「スマート農業アライアンス」への参画を呼びかけた。

コマツの建機を含め、AIやドローンなどICT技術を使った新しい農業がはじまっている。

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム