ソフトバンクが自律清掃ロボットに参入した理由、自律運転ソフトウェアを他社製品にも供給可能

ソフトバンクロボティクスは19日に、「AI清掃PRO」シリーズとして2機種めとなる自律運転の清掃ロボットを発表し、清掃業界に本格的な参入を果たした。清掃業界の企業が集まる展示会イベントである「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2018」(東京ビッグサイト)にも展示ブースを設けて、8月に発売した大型のスクラバー(床洗浄)「RS26」と、先日発表したばかりの中型の乾式バキューム掃除機「Whiz」(ウィズ)を展示した。
「Whiz」については30分ごとに展示ブースでデモンストレーションが行われ、来場者から高い注目を集めていた。

「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2018」のソフトバンクロボティクスの展示ブース。新製品を見ようと多くの人が来場した

数日前に発表したばかりの乾式のバキューム型自律運転掃除ロボット「Whiz」。本体前面の上部(黒い縦線状の位置)にRGBカメラと3Dカメラ、下の横線状の中央にLiDARを搭載している。腹部の丸い部分にペーパーバッグが収容されている

本体上部の青いLEDは右左折時に黄色く光るウィンカーの役割をする。背部の丸い部分は排気ダクト。エアフィルター内蔵なので排気をクリーンに保ち、高齢者施設などでも安心して利用できるよう配慮されている。その下の背面のカバー部を開けると着脱式のバッテリーが内蔵されている

■ クリーンエキスポでの「Whiz」のデモンストレーション

「RS26」と「Whiz」は同様の自律運転機能を持っているが、いずれも米国Brain社が開発しているOS「BrainOS」を搭載しているからだ。「BrainOS」については、国内の清掃機器製品への組込提供も可能だと言う。

展示ブースで稼働展示されていた大型のスクラバー「RS26」


なぜ、ソフトバンクグループが清掃ロボット業界に参入したのか

なぜ、ソフトバンクグループが清掃ロボット業界に参入したのか、ロボット化に注力する同社はどのような未来を描くのか、Brain社の自動化システムとはどのようなものか、同展示会の最終日にソフトバンクロボティクスとBrain社による講演が行われ、それが明らかになってきた。


ソフトバンクロボティクスが描くロボット化のマイルストーン

朝一番の講演にも関わらず超満員にふくれあがった会場では、ソフトバンクロボティクスの吉田氏による講演が行われていた。吉田氏はまず「シンギュラリティ」に触れ、人間の知能を凌駕する超知性の誕生に向かってICT技術は進化していくこと、その上で近い将来、ロボット化が進むマイルストーンについての見解を語った。

ソフトバンクロボティクス株式会社 Chief Business Officer 事業推進本部 本部長 吉田 健一氏

同グループが傘下に納めているボストンダイナミクス社が開発している、
驚異的な身体能力を持つロボットにも触れた上で「人間と同様のロボットを作ることは極めて困難であり、要介護者を介護できる自律ロボットなどはこれから30年以上も登場しないだろう」とした。
ただし、顔、脚、手の各機能をロボット化して社会に実践利用していくことは現実的であり、「顔」(表情や会話を含む)の部分は「Pepper」で同社は既に着手した。また器用で細かい人間の「手」を再現できるロボット化は当分先の未来の話で、それよりも「脚」、モビリティはすぐにでも実現できることを強調した。


顔はPepperで実現した。手の実現は極めてまだ難しい。脚はすぐにでも着手できると考えた(吉田氏)

「タクシーやバス、トラックなどが自動運転車となり、公道を走る時代があと7年でやってくる」と予測した上で、公道の自動運転はまだ先の話だが、屋内や限られた範囲内での「脚」のロボット化、すなわち自律運転は既にもう実用的な技術水準にあり、それをすぐにでも着手できるのが「清掃業界」であり、ここから参入していくべきと、結論づけたという。

清掃業界は現在、深刻な人手不足と高齢化の課題に直面している。吉田氏は「ある調査によると、有効求人倍率は一般の職種が1.35なのに対して清掃業界は2倍、平均年齢は一般が42.1歳に対して清掃業界は52.6歳とされているが、実際の肌感はどちらの数字ももっと上ではないか」と語った。

現在、同社が発売している2種類の自律掃除型ロボットの最大の特徴はどちらも「手動」と「自律運転」の両方が出来ること。通常、自律運転するためには「ティーチング」と呼ばれる走行ルートの学習等が必要だが、同社の機種の場合、初回は操縦したり(RS26の場合)、手押しして(Whizの場合)、手動で清掃することができ、次回からは同じルートを手動で走行したルートをトレースして自律走行ができる。もちろん、人が飛び出したり、障害物が置かれている場合はLiDARやカメラ、センサー類がそれらを検知して、避けて掃除を継続したり、中断して管理者に通知を行うことができる。

「手動で掃除しても、自動でやっても、どちらでもユーザーが好きな方を選択できる。現状のロボットができる清掃作業は人がこなせるほんの一部にすぎない。その一部をロボットで自動化し、あとは人がやるという役割分担が重要だし、ロボットと人が協働するとどのように作業することが効率的か、ビジネスを再構築、再定義していくことが重要」と語った。

清掃会社やテナント企業が自社で清掃する場合でも、床の掃除機清掃は全体の40%程度。そこをまずは自動化していこう、という提案となる


他社の既存製品に自律運転ソフトウェアを提供できる

この自律運転や自動化のソフトウェアは前述のとおり、サンディエゴにあるBrain社が開発を担当している。米国では既にウォルマート、コスコ(日本の名称ではコストコ)などの大型店で導入されているほか、空港、病院、大学などでも採用されている。
続いて同社のCEOが登壇し、「私達の技術は、タイヤがついてさえいれば、あらゆるものを自律運転化することができる」と強調した。

Brain Corporation Co-Founder & CEO  Dr. Eugene M. Izhikevich (ユージーン・イジケビッチ)氏

その上で「日本には清掃業界などで、信頼性の高い多くの機器が使われている。それらの製品の中に自律運転技術を追加したいと考えている企業があれば、ソフトバンクロボティクスを通じて私達に相談して欲しい」と呼びかけた。


「AI清掃PRO」で今後検討したい機能

最後に質疑応答で、吉田氏は自律清掃ロボットに今後追加したいと検討している機能をあげた。まずはモップがけの機能。Whizはバキューム機能の掃除ロボットだが、先端にモップのようなオプションを装着することで拭き掃除の機能も追加できるのではないか、とした。また、エレべータと連動して、階を超えた自律清掃を実現することも今後の視野に入れていることも明らかにした。


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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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