ニトリも導入した自動搬送ロボット「バトラー」物流倉庫の自動化を加速!4.2倍のピッキング効率を達成するしくみ

自動搬送ロボットとAIによって、物流倉庫の入出庫・発送業務の自動化が加速しそうだ。
そのロボット「バトラー(Butler)」は、出荷する商品が収納されたラック(棚)の下に潜り込み、ラックごと持ち上げてスタッフの元に運んでくる。スタッフはバトラーが運んできたラックから商品をピッキングし、バーコード・リーダーをかざした上で同梱発送用のパレットに入れる。
ニトリホールディングスの物流子会社、ホームロジスティクス社が大阪の物流倉庫に導入した結果、人と比較してバトラーのピッキング効率は4.2倍を達成したと発表した(2017年12月)。

倉庫で活躍する自動搬送ロボット「バトラー」。棚とセットでシステム構築を行う


ロボットが棚ごと商品を運んでくる

オンラインショッピングの増加により、様々な倉庫では商品の発送業務の迅速化や効率化、自動化が求められている。従来は担当するスタッフがシステムの指示通りに倉庫内の棚を回り、発送予定の在庫商品をピッキングしていた。その歩行距離は平均して一日一人あたり11kmに及ぶケースもあると言う。そこをまず自動搬送ロボット「バトラー」は改善する。バトラーの導入によりスタッフは歩いて棚を回る必要はなくなり、PPSと呼ばれる作業ステーションにいながら同梱する商品のピッキング作業ができるようになった。バトラーがラックごと商品を手元まで運んできてくれるからだ。

注文内容に沿って、出荷予定の商品をバトラーはラックごと運んでくる

複数台のバトラーはぶつからずに同時に運搬作業をこなす。PPSにいるスタッフの元には次々にバトラーがラックを次々に運んでくる。8〜16件の注文を同時進行で処理していくことが可能だ

ラックごとPPSに到着したバトラー。ディスプレイ画面には、どの商品をピックして、どの注文枠に入れるか、スタッフへの指示が表示されている

スタッフはバトラーから指定の商品をピックしてバーコードを読み取って確認する

システムの指示通り、同梱用枠に入れて作業完了


ニトリの物流倉庫で約80台が稼働

開発しているのは、インド発でシンガポールに本社を置くベンチャー企業のGreyOrange(グレイオレンジ)社だ。海外では既に多くの企業による利用が進んでいて、日本でもニトリの物流倉庫を含めて3社がこのシステムを導入、100台以上のバトラーが稼働している。

バトラーの最大積載重量は専用ラックを含めて500kg。時速4kmで移動できる。フル充電で約8時間の稼働だ。システムに従って複数台のバトラーはぶつかることなく同時に移動・運搬することができる。単体でも赤外線センサーを備えているため、通路に障害物がある場合は検知して停止したり、異常をスタッフに通知することができる。


AIなど機械学習でインテリジェント化

特筆点は多彩なインテリジェント性能だ。AI関連を含めて機械学習技術を使った知能化がはかられている。
出荷頻度に合わせてシステムが最適なラックの配置を算出し、最も効率的にラックを並べる。日本の場合、四季がはっきりしているため、季節ごとに売れ筋商品が変わってくる。システムはそれも考慮し、売れ筋商品をPPSに近い位置に自動的に配置するようになる。
また、売れ筋のシャープペンは売れ筋のシャープペンの芯と同時に購入されるケースが多い。それらの在庫製品は同じラック内に置いたり、近い位置にラックを配置した方が効率的な配送作業に繋がる。それをAIシステムが解析して自動で最適化をはかっていく。
更には、専用ラック内の収納位置さえも最適化する。最も売れ筋の商品はスタッフがピッキングしやすい胸の高さ付近、ホットスポットに配置するようシステムが指示をする。スタッフはシステムが解析したとおりに配置することでシステムとの整合性をとれる。

■ バトラーの特長と知能化のしくみ


ピッキング用ロボットも実証実験が進む

また、GreyOrange社はピッキングを自動化するアーム型ロボット「ピックパル」(PickPal)も商品化する予定だ。PPSでピッキングする作業の一部をピックパルに置き換えることで、更にコスト削減を推進する。

ピックパルのイメージ。PPSにバトラーが運搬してきたラックから商品をピックアップして同梱用パレットに次々と入れていく

■ ピックパルの動画


自動倉庫システムにフレキシビリティを

倉庫などの物流業務を効率化させるのには「AS/RS」と呼ばれる立体自動倉庫システムが注目されている。天井に届くような巨大なラックにクレーンやモノレール、ロボットアーム、移動ラック、コンベアなどの機器を駆使して自動化をはかるシステムだ。
現状の「AS/RS」(Automated Storage/Retrieval System)にはどのような課題があるのだろうか。
そして、バトラー・システムはそれを解決するソリューションとなるのだろうか。

GreyOrangeアジア太平洋のCEO、Nalin Advani(ナリン・アドバニ)氏にインタビューを行う機会を得たので、まずはその点から質問した。

GreyOrangeアジア太平洋のCEO-APAC ナリン・アドバニ氏

アドバニ氏

「AS/RS」は現在、最も成功している倉庫の自動化のひとつです。課題としては商品の収納量や出荷量のスケーラビリティがあげられます。在庫数や出荷量が増えればそれに伴って拡充(スケーリング)が必要ですが、一度大きな投資をして設備を構築してしまうと、更に劇的に増やすことは簡単ではありません。私達のシステムはバトラーとラックを増やすことで簡単に拡張できる「フレキシビリティ」を持っていて、それが大きな特長のひとつになっています。

編集部

バトラーが導入効果を最も発揮できる倉庫の規模はどれくらい以上でしょうか

アドバニ氏

商品点数や出荷量にもよるので正確に答えるのは難しい質問ですね。ただ、あくまで例として申し上げますと、現状で20人前後のスタッフで配送業務を行っている物流倉庫があげられます。その規模の場合、仮に10台前後のバトラーを導入することで同じスループットを約1/3のスタッフで実現させることが可能。バトラーは10台以上の導入でコストパフォーマンスが際だって高くなります。
ちなみにピッキングの能力については人が棚を回って行う作業では1時間につき、だいたい60商品のピッキングが限度だと考えています。バトラーを使うと200ピック以上にまで向上が見込めます。

編集部

なるほど。更に「ピックパル」を導入することで、PPSのピッキング作業もロボット化、すなわち自動化することができますね。それによってスタッフを削減できますね

アドバニ氏

はい。ただし、人を完全に置き換えるようなものではありません。というのも、ピックパルはどんなものでもピックアップできるわけではないからです。ピックパルは自分でピッキングできる商品かどうかを画像認識を使って自律的に判断します。万が一落としてしまったら壊れてしまうもの、どこをつかんでいいか解らないものなどは、ピッキングせずにパスしてスタッフに任せます。人間はとても優れています、どんなものでもつかめますよね。

ピックパルの実際の稼働映像より。この映像ではバキューム式のロボットハンドで商品をピッキングしている

スタッフが行っているピッキング作業の一部をピックパルが代替することで、コスト削減に繋がることを想定しています。先ほどの例では、20人のスタッフの倉庫にバトラーを導入することで1/3のスタッフで業務ができたとすれば、商品類にもよりますが更に最大15%程度までスループットが上がるイメージです。



この部分はとても合理的だと感じた。ロボットによる自動化ですべての作業をやろうとするのではなく、ロボットにできることや、ロボットに向いていることを自動化の対象にし、ロボットにやらせるには無理がある点は人間が補って作業を進めていこうという、人間が補う「協働」をコンセプトの中に感じたからだ。

編集部

導入にはどれくらいの期間がかかりますか? また、どのような手順を踏むのでしょうか?

アドバニ氏

実際にはシステムソリューションなどが伴うので、導入期間や価格は顧客によって異なります。打ち合わせの際、倉庫で管理する商品やその点数を記した「SKUマスター」を作って頂きます。過去の入出庫、配送データなどを考慮して、棚の配置や個数、形状タイプ、バトラーの台数や充電ステーションなどを相談の上、当社から提案していきます。期間をあえて目安として掲げると、だいたい3ヶ月くらいでしょうか。

編集部

バトラーの充電は自動で行われますか?

アドバニ氏

バトラーは充電についてもインテリジェント性を持っていて、とてもユニークです。倉庫では複数台のバトラーが同時に稼働し、繁忙時間はフルで作業していますが、フル稼働する必要がない時間帯も必ずあります。そんな時間帯には自律的に交互に充電ステーションに入って充電していくシステムを取り入れています。解りやすく表現すれば、たとえ短時間であってもヒマな時間があれば自ら充電するしくみを作りました。充電切れを意識することなく運用することができますし、充電のことを考えて必要台数以上のバトラーを導入するように私達から推奨する必要もありません。



細部にわたってインテリジェンスを感じる「バトラー」システム。
GreyOrange社は日本市場に向けて本格的な展開を始めていく。
自動搬送ロボットとAIによって、物流倉庫の入出庫・発送業務の自動化が加速しそうだ。


問い合わせ先 :
GreyOrange社 アジア太平洋(日本語可) apac@greyorange.com
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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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