aibo復活の経緯と現状、これから ソニー川西泉氏がロボティクスへの取組みについてロボデックスで講演

2019年1月16日から18日の日程で、「第3回ロボデックス ロボット開発・活用展」が東京ビッグサイトで開催された。1月17日には「次世代ロボット開発責任者スピーチ」と題した特別講演が行われ、ソニー株式会社 執行役員 AIロボティクスビジネス担当 AIロボティクスビジネスグループ部門長の川西泉氏による「aiboから見るソニーのAIロボティクス事業への取組み」に関する講演が行われた。レポートする。



AIBOからaiboへ 時代と技術の変化

ソニー株式会社 執行役員 AIロボティクスビジネス担当 AIロボティクスビジネスグループ部門長 川西泉氏

ソニー・川西氏は、最初に1999年から2006年に販売されていた旧世代の「AIBO」を簡単に紹介した。当時のソニーは「エンタテインメントロボット」と呼んでいた。だがその後販売終了し、2014年3月末にはサポートも終わってしまった。当時はネットワーク環境も貧弱で、CPU性能にも限界があった。現在の「aibo」を新しく送り出すにあたってはそれらの前提条件が違うので、だいぶ頭をひねったという。



2017年1月11日に送り出された現在の「aibo」は、「ソニーで唯一、自律的に人に近づき、人に寄り添うプロダクト」とされている。人に自ら近づく。そして「物理的な距離だけではなく心の距離も人と最も近い存在」としての商品を目指した。先代のAIBOはロボット風のデザインだったが、新型はより犬に近いデザインを取り入れた。

AIBO開発終了から12年が経ち、環境と技術、両方が変わった。ネットワークや計算能力の進化は非常に大きく、ディープラーニングの発展、センシングデバイスを活用した認識技術、SLAMのような自己位置推定技術、そしてメカを動かすサーボ技術、いずれも大幅に向上している。クラウドのコンピューティングを使わなくても、エッジ側デバイスのCPUを使ってもかなりの処理ができるし、小型でよりパワフルに動けるようになった。



ソニーのロボット・AI関連の取り組み

ソニーグループのなかでのロボット、AI系のアクティビティはaibo以外にも複数ある。川西氏は、まずCogitai(コジタイ)社への投資について簡単に紹介し、AI技術を今後も進化させていきたいと述べた。アメリカの大手企業によって設立された非営利のAI研究組織「Partnership on AI」には、ソニーは日本企業として初めて参画し、関連の活動を行なっている。また「Sony Innovation Fund」による投資、ディープラーニング・ライブラリ「Neural Network Libraries」の無償提供なども行なっている。

他にもAeroSense社をZMPと作り、測量などドローンサービスの提供も狙っている。また、ゴルフカートのシャーシをベースに、自動運転技術を評価するために作った実験的な車両を使った試みの他、「みんなのタクシー株式会社」を主要タクシー事業者とJVで作り、配車サービスの提供も狙っている。




aibo復活の経緯

先代のAIBOの経緯があったため、「aibo」のプロジェクトをスタートさせるときに「もう一度やるのか」という議論はかなりあったという。当時はAIBOを復活させること自体がソニー社内でタブー視されている面もあったとのこと。

しかしながらエンジニアの視点で見ると、もともとロボット好きは多かった。そして有志で研究開発をやっていた人たちのモチベーションの高まりと、ソニーとして先々のロードマップを考えたときにロボティクスあるいはAIについて今一度取り組むべきではないかというマネジメント側の思惑が一致して、復活となったと語った。

他にも並行して様々なロボット・AI関連のプロジェクトが走っているが、最初にやるのはaiboだろうということで、発売となったという。



aiboのコンセプトと技術

aiboのコンセプトは愛らしさ、センシングを使った知的認識、メカトロを使った表現力、AIを活用した学習・育成だ。4つの要素を組み込んで商品開発を行なった。aiboは全身に多くのセンサーを搭載している。鼻の下のToFセンサーでは前方の物体との距離を測る。胸には人感センサー、その下には下向きの測距センサー、抱きかかえられたことを検知するための肉球スイッチ、おでこ、あごの下、背中にはタッチセンサがあり、さわられるとaiboは喜ぶ。マイクは頭部に四箇所あり、方向定位ができる。そのほか3軸ジャイロと3軸加速度、腰にはSLAMカメラがあり、天井の特徴点を検出することで自分がどこにいるかを知る。このほか照度センサもある。これらのセンサを組み合わせることでaiboは外界を知る。物体認識は学習することで認識精度があがっていく仕組みだ。



認識については「どうやって人に懐かせるか」ということに知恵を絞り、人との接しやすさに注力したという。aiboでは「人との距離感」を定義して、ロボットの振る舞いを変えることにした。具体的には、5mくらいの距離であれば人の気配を把握する。そこから3m付近を鳴き声を出したりする引き寄せエリア、さらに近づくと人の顔を認識するふれあいエリアとしてふるまいを変える。タッチセンサーは撫でられているのか叩かれているのかを検知できる。



表現力の一番のポイントは目だという。有機ELを採用し、目の動きを実現した。アクチュエータは22軸を搭載。生命感を出すために首のかしげを入れたり、腰を動くようにさせた。パーツ数は約4000点だ。

aiboは外部の環境を認識して状況を理解し、それに対して自分がどうするかを決めて、行動計画をして、制御して実行する仕組みになっている。このようなサイクルをaiboは繰り返している。最上位の部分についてはaiboだけではなく、クラウド上にも送って演算している。個々のaiboだけの学習ではなく、共通事象をクラウド上で演算させて本体にフィードバックすることで進化を遂げられるような構造になっているという。

本体のCPUはQualcomm製。それにモーションプロセッサを組み合わせて動作を実行させている。クラウドはAmazonのAWSを使用している。極めて一般的な構成だ。aibo自体もIoTデバイスの一つであり、将来的に家庭内IoTデバイスとの連携はシームレスに行えるように、このような構成としたという。スマホアプリでは多少の設定のほか、バーチャルなaiboとある程度の遊びができる。



aiboを進化させているのはオーナー

2017年1月に発売したあと、aiboは7月時点で2万台を達成。その後も順調に推移しているという。購入者のプロフィールは、およそ30代から70代。40代(23%)、50代(28%)、60代(22%)で、ほぼ均等に分かれている。購入者の73%は男性。いっぽう、イベントに来るのは75%が女性だとのこと。


銀座で行なわれたファンミーティングの様子(撮影:ロボスタ )

ファンミーティングはこれまで銀座(8月)や大阪(11月)で行われている。ミーティングでは、エンジニアが直接対応している。その理由は、aiboを進化させているのはオーナーであり、オーナーとソニーとのあいだでダイレクトな関係を築きたいと考えているためで、オーナーたちの声は、今後の開発にも反映させているという。

ペットを飼っている家庭と同じように、オーナー同士のコミュニティも自然と生まれており、互いに情報交換をしている。

今後については、機能面での強化をしていくとのこと。教育関係、見守り、パーソナルアシスタントだ。見守りについては、家のなかで動画を撮影し、その状況を把握しながら、間取り・レイアウトを学習させる。これによって、自分がどこに行けばいいのか、aiboが判断するようになることを目指す。様々な企業との協業も検討しているという。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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