個人でもAI自律移動ロボットが作れる情報をNVIDIAが公開!「Jetson Nano」をAIやDNN教育用ツールとして活用推進へ

空前のAIブームとは言え、個人が簡単にAIを試せる製品やリファレンスキット的なものは今までなかったのが現状だ。しかし「Jetson Nano」によって、ようやく価格的にも機能的にも最適なものが登場した印象だ。

「GTC 2019」の展示会場では「Jetson Nano」を搭載した自律走行車が稼働展示されていた。「Jetson Nano」はNVIDIAが発売した小型のAIコンピュータボードだ。GPUを搭載し、NVIDIAが提供している汎用並列AIプラットフォーム「CUDA」(クーダ)が利用できる。CUDAはNVIDIA製GPUを使ったAIプログラミングモデル共通のコアとなるものだ。

Jetson Nanoで作れるロボットを「見本」として公開

■JetBotプロジェクト自律移動ロボットの展示

そしてNVIDIAは「Jetson Nano」の活用事例となるJetBotプロジェクトとして、第一弾となる自律走行車を「GTC 2019」の展示会場で展示するとともに、ユーザー自身がこれを作るためのマニュアルをGitHubで公開した。サーボーモータやモバイルバッテリー等の購入や3Dプリンタ制作、ハンダ付けなどの作業は必要だが、AIで動作する自律ロボットを自身で制作することができるものになっている。

「Jetson Nano」を使って自律走行ロボットを作成するための情報が「GitHub」で公開されている。http://github.com/NVIDIA-AI-IOT/JetBot

なお、展示はもうひとつ、街のジオラマの中で道路のセンターラインに沿ってロボットが走るライントレースのデモも行われていた。ディープラーニングを使ってラインに沿って走るネットワークの他に、道路上に障害物を検知すると停止するというネットワークが併行して稼働しているシステムだ。

■ライントレースで走るロボット、障害物があると停止する

デモ展示ブースには、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが訪れ、障害物認識機能を試した後(上記動画参照)、担当スタッフからのJetsonプロジェクトの説明に耳を傾けていた。

Jetson JetBotブースでプロジェクトについて熱心に耳を傾け、担当者と会話するジェンスン・フアンCEO


「JetBot」はAIの開発が体験できる入門用教材プロジェクト

NVIDIAの会場ブースで、「Jetson Nano」と「JetBot」が学習や教育ツールとして、また、AI開発入門にどのように活用できるのか、プロジェクト担当者に詳しく聞いた。

編集部

そもそも「JetBot」とはなんでしょうか?

NVIDIA

JetBotはプロジェクト名です。Jetson Nanoは開発キット$99と低価格を実現し、幅広くたくさんの人に使ってもらいたいと考えています。それを具現化するプロジェクトが「JetBot」です。Jetson Nanoを使って、このロボットを作る方法がオープンソース化していますので、誰でもこれを簡単に作ることができます。

NVIDIAの小型のAIコンピュータボード「Jetson Nano」。開発キットは99ドル。サイズは80x100mmと、とてもコンパクト。ロボットやドローン、カメラなどに内蔵できる

編集部

「Raspberry Pi」(ラズベリーパイ)のようにいろいろなシーンで利用されることを見込んでいるんですね

NVIDIA

はい。多くの人に使って頂くことが目標のひとつです。JetBotの場合はリアルな「AI」を使って、本物の「AIアプリケーション」が作ることができます。AIで何ができるのかを学べる開発者にとってもSTEM教育にとっても最適なツールにもなると考えています。

編集部

「Jetson Nano」を使って自律走行ロボットを作成するための情報を「GitHub」で公開したのはそのためですか

NVIDIA

私達は性能を語るだけではなく、JetsonとJetBotを使って実際に動くものを見てもらったり、作ってもらうことが大切だと考えています。そこで、「どんなものが見て解りやすい見本になるかな」と考えたとき、AIを使った製品はカメラなどの画像認識技術を使ったものは多々ありますが、認識技術だけでなく、モーターの駆動の仕方などを含めた制御技術の応用にも繋がるこのようなロボットがいいだろうと思いました。この自律型ロボットが入門となってJetsonを使ったAIプロジェクトが企業や学校などで推進されれば嬉しいです。

編集部

具体的にはどのような技術を学ぶことができますか

NVIDIA

OSはUbuntuで、その上でPythonで動作させ、ディープラーニングのフレームワークはPytorchでモデルを回しています。ただし、モーターの駆動やセンサーフュージョンのために特別なロボティクス技術が必要というわけではなく、シンプルな構造で作れるようにしています。例えば、センサーはたったひとつ、カメラだけです。カメラの画像認識とディープラーニングだけでどれだけ知能化できるのか、新しいことを試すという意味合いもあります。
例えば、車輪を使って直進するのには一般的にはオドメトリをとって細かな数字で制御していく必要がありますが、JetBotではディープラーニングと画像認識によって、人間が普段やっているのと同じように、視覚で真っ直ぐ進む方法を実践しています。

編集部

なるほど、このロボットはビジョンだけでルート通りに進んでいて、言わば、曲がっていると認識したら自律的に真っ直ぐに補正して進むように動作しているということですね。

NVIDIA

トレーニングはとても単純です。ライントレースの例では、ラインを中心に置いて進むということを学習させただけで、数値で細かい指定などはしていません。ランダムに動作している例でも、使っているのは2値の画像識別だけです。すなわち「進んでいい画像」か「進んではいけない画像」かを学習させることで、ロボットは自律的に自分が進むべき場所を考えたり判断して動いています。

編集部

教師あり学習ですね。どのくらいの数の画像が機械学習には必要ですか

NVIDIA

機械学習に必要な画像はケースによってまちまちですが、私の家で学習させた一例では「進んでいい画像」と「進んではいけない画像」をそれぞれ400枚程度使って学習させました。その結果、白いカーペットに白い壁の環境でも壁にぶつからない、マットのさまざまな模様に惑わされないで進む、階段でも落ちないように、などをロボットは学習して動作するようになりました。このロバスト性(外部の要因によって影響されにくい性質)もディープラーニングの大きな特徴です。
ディープラーニングを使うとこのように今までのプログラミングの手法とは異なるアプローチでシステムを開発することができます。そしてこれからの開発者の方々はその手法をどんどん活用していくでしょう。それを「Jetson」と「JetBot」でまずは体験して頂ければうれしいです。



展示ブースで公開されていた動画では、カラフルなマットに惑わされずに自律走行したり、机から落ちずぶつからずに走行するロボットの様子や、教師あり画像による機械学習している様子などが流れていた。

■動画 ディープラーニングによって自律走行を学習

編集部

STEM教育にも利用できるとのことですが、このロボットはだいたい何年生くらいから自作できそうでしょうか、目安として。

NVIDIA

個人の興味の度合いによって異なりますが、高校生であれば自作できると思います。中学生でもこういったものに興味がある人なら十分に可能だと思います。


WindowsやMacパソコンだけでもOK

編集部

UbuntuのホストPCは必要ですか?

NVIDIA

必要ありません。今まで、JetsonシリーズはUbuntuのホストPCが必要という点で壁を感じている人も多かったと思いますが、SDカードにシステムを保存してJetson Nanoに挿すだけで動作できるのでUbuntuもホストPCも必要ありません。WindowsやMacのバソコンがあれば自作できます。IPアドレスの設定なども簡単にできるように工夫しています。


AWSブースでも展示

「GTC 2019」の展示会場では、NVIDIAのJetBotブースの隣にあるAmazon AWSのブースでも、JetBotプロジェクトの自律ロボットをベースに独自に改造したロボットが展示されていた。このような形で、リファレンスデザインをベースにカスタマイズしていくことで、盛り上がりを見せていく可能性もあるだろう。

AWSブースで稼働展示されていたJetBotプロジェクトペースのロボット(Jetson Nano搭載)

「JetBot」は今までRaspberry Piを使っていて、AI開発を体験してみたいというユーザーには最適なツールのように感じた。また、WEBアプリケーションの開発者やSTEM教育など、研究から教育まで幅広く利用できそうだ。

各種インタフェースを装備しているので拡張性も高そうだ

ロボスタではレビューを含めて、今後も最新情報をお届けしていきたい。


関連サイト
NVIDIA

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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