【アクセンチュア最新調査】VR/AR/XRが持つ大きな可能性と深刻なリスク

これからのビジネスリーダーは、XR導入の初期段階から、XRツールやビジネスモデルの責任ある設計、開発および市場への導入に積極的に関わることが求められる。

アクセンチュアは、同社による最新調査で、XR(Extended Reality:仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、そのほかの没入型ツールなどを含めた総称)は経済や社会に極めて大きなメリットをもたらしうる半面、従来にはなかった物理的、心理的および社会的リスクをもたらす可能性があることを明らかにし、5月16日に福岡で行われたG20YEAサミットにて発表した。

同社がG20若手起業家連盟(G20 YEA)と共同で作成し、調査レポート「新たなる現実への警鐘:没入型技術の責任ある未来の構築(Waking Up to a New Reality: Building a Responsible Future for Immersive Technologies) 」(英語:日本語版は追って公開予定)では、VRやAR、さらにさまざまな分野に広がる没入型ツールまでを含めた広義の拡張現実であるXRが、ゲームやエンターテイメント領域での活用の枠をはるかに超え、新たな価値を生み出す技術であることを提示。事実、すでに没入型ツールは顧客体験を強化するだけでなく、従業員の生産性向上やトレーニング、メンタルヘルスの治療などにも用いられている。

実際の市場も、企業のXR関連支出は消費者支出を上回っており、IT専門調査会社であるIDCによると、2023年には企業支出は消費者支出の3倍に相当する1,210億米ドルに達する見込みだ。また、アクセンチュアの分析では、2014年から2016年までの間にARやVRに関連する特許出願数は5倍近い6,000件以上に増加しており、この間の関連スタートアップ企業の資金調達額は237%増となっている。

世界のAR/VR支出予想(単位:10億米ドル)




XRツールの持つ新たなリスク

同レポートでは、XRによる新たな体験機会が期待されている一方で、XRツールの持つ威力や親しみやすさが以下のような新たなリスクをもたらす可能性があり、そうしたリスクは既存のテクノロジーによって経験してきたものよりはるかに大きなものになるであろうと指摘している。

■個人情報の悪用:
個人情報やソーシャルメディア上の行動履歴だけでなく、人の感情や行為、判断までもがサイバー犯罪によって盗まれたり、改ざんされたりするリスクをもたらす可能性が存在する。
■フェイク体験:
没入型の体験を通じて得たニュースや情報は、事実とフィクションを切り離すことが困難になり、事実ではない体験が人の行動や意見、意思決定に大きな影響を与えやすくなる。
■サイバーセキュリティ:
サイバー上の分身であるアバターを使ってIDに関連した新たな形態の犯罪が生み出される可能性があるだけでなく、外科手術のように没入型技術への依存度が大きい重要な業務が恐喝の対象になるリスクも生じる。
■反社会的行為:
アバターを使った仮想世界では、ソーシャルメディア上での言葉による脅しから、実際の身体的脅迫まで、さまざまな反社会的行為が生まれると同時に、仮想環境で常態化した反社会的行為が現実社会の行為にまで紛れ込む可能性もある。

アクセンチュア・インタラクティブでコンテンツイノベーション部門統括ロリ・デュボフ(Rori Duboff)氏

XRには計り知れない可能性があり、私たちは過去のさまざまな失敗から学ぶことで、より解放的で責任ある世界や体験をデザインすることが求められます。最終的にXRを成功させるには、戦略チームやクリエイティブチームが多様な視点を持ちより、すべてのひとに開かれたXR体験にする必要があります。







XRを適切に活用していくために

さらに同レポートでは、人々の過度なテクノロジーへの依存や、現実の社会問題との関わりを断つことにつながりかねないと同時に、XR活用機会の差が消費者関係や就業機会を失うことにつながり、社会の分裂を増幅させかねないというリスクを提示するとともに、企業に求められる行動を挙げている。

▼ XRを適切に活用していくために、企業に求められる行動

■独自の早期警戒システムを構築:
ビジネスリーダーは急速なイノベーションのもとですぐに陳腐化するようなルール作りではなく、倫理的視点を日常業務や重要な意思決定に習慣的に組み入れるといった、いわゆる「責任意識のある文化」を醸成すべき。
■責任あるデザインのために多様なエキスパートを動員:
企業は、神経科学やメンタルヘルスの専門家、社会学者、行動理論の専門家などの領域を含めたエコシステムを組織化し、XRツールの責任ある設計や利用の強化、
■従業員の能力の強化に投資:
従業員の生産性向上やトレーニング、創造性にターゲットを定めてXRへの投資を行う必要性がある。自動化の波に最もさらされている職種こそ、没入型技術によって拡張できる場合が多く、「消滅の危機に瀕した職種」を「未来の職種」に転換することが可能だ。

G20YEAサミットにて講演を行った、アクセンチュア・リサーチのプリンシパル・ディレクターであるアルメン・オーバンソッフ(Armen Ovanessoff)は次のように述べている。

アクセンチュア・リサーチ プリンシパル・ディレクター Armen Ovanessoff 氏

XRは早くもVRやARの枠を超え、触覚や嗅覚、味覚といった人間の五感や思考を活用したり、それらを増大させたりするツールを含むまでに進化を遂げています。こうしたツールは、正しく活用すれば私たちの暮らし方や働き方を大幅に向上させることでしょう。私たちはビジネスリーダーや政策立案者、市民社会に対して、XRの責任ある未来を積極的にデザインするために今こそ行動する時である、と呼びかけています。



※冒頭写真提供: 写真AC


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