Amazon EchoやAlexaスキルには興味があるけれど「ビジネスに活用できるのだろうか?」「マネタイズの方法が解らない」と感じている人も多いだろう。
Alexaスキルを製品やサービスの販売に繋げる事例が少しずつ増え始めている。それは「Amazon Pay」がキーとなっている。「Voice UI Show」でAmazonが講演し、Amazon Payで音声コマースを加速するプロセスやその狙いを解説した。
5月30日に目黒で開催された「VoiceUI Show 2019 Spring」(主催はVoiceUI Show運営事務局)では、「Alexaスキル向けAmazon Payでのマネタイズ事例とConnected Commerceの世界」と題して、アマゾンジャパン合同会社 Amazon Payチーム Jonathan氏が講演を行った(冒頭の写真)。気になるAlexaスキルのマネタイズ方法には、スキル自体を一部有料化する「Alexaスキル内課金」と、Alexaスキルで製品やチケット、サービスを販売するAmazon PayとAlexaスキルを連携させる方法の2つがある。ここでは後者に焦点を当てよう。
Amazon Payとは
Amazon Payとは、Amazonが提供しているECサイトで決済できるシステム。ECサイトでは多くの企業が導入し始めている。ECサイトでネットショッピングする際、決済時にユーザーは面倒な個人情報やカード情報の入力をその都度強いられることも多いが、それらの煩わしさを「Amazonアカウント」でログイン&決済することでできるだけ簡略化しよう、そんな狙いがある(AmazonのサイトでなくてもAmazonアカウントだけで決済できる:アカウントリンク)。
■Amazon Payとは
Amazon Payは提供開始から既に4年が経過しており、Amazon Payの契約事業者も決済金額も大きく伸びている。
更にはAmazon Payは昨年より、QRコードによる決済にも対応したことで、ECサイトだけでなく店舗でも利用できるようになった。
そして更に、AlexaスキルでもAmazon Payが利用できるようになっている。Amazonではこれを「音声ショッピング」や「Voiceコマース」と呼んでいる。
AlexaスキルにおけるAmazon Pay
ECサイトや実際の製品の販売に繋がる決済として、または、Alexaスキルを通じて製品を購入するしくみとして、出前館やサルヴァトーレピッツア(サルヴァトーレ クオモ)、京橋ワインやメガネスーパーなどが、スキル決済に導入しているのもAmazon Payのひとつの形態ということになる。出前やデリバリー分野などを発端として、今後も伸びていくとみられている。
会場では「JTBおでかけチケットスキル」の例が動画で紹介された。遊園地や水族館など全国約1,500の観光・レジャー施設から、おすすめ情報や行きたい施設を検索、チケットは割引価格の設定もされ、手軽でかつ割安で購入できるしくみを導入した。
■JTBおでかけチケットスキルの例
変わったところでは日本赤十字社の例もある。「日本赤十字社に100円寄附して」と日本赤十字社スキルに話しかけるだけで募金できる。募金や寄付に対するハードルを下げたと評価されている。
Voiceコマースで買い物をする将来イメージ
Amazonのショッピングサイトでは買い物履歴を反映させたリコメンド(オススメ)などが当たり前のように行われるようになっているが、将来的にはそれをAmazon Payが使える他のECサイトや実店舗、Alexaスキルにも反映し、お店と常連顧客との良い関係を(エクスペリエンス)を築いていきたい考えだ。
Alexaスキルで買い物をする自分を想像したとき、手軽に購入できるようになるだろうなと思う反面、商品をいろいろと選びたいときには声だけでは不便だろうな、ということは容易に想像できる。Amazonも、ECサイトやスマートフォンのアプリで行うネットショッピングをAlexaスキルに置き換えようとしているわけではない。
アマゾンのショッピングサイトや他のAmazon Pay対応のECサイトで、予めよく購入する日用品をお気に入りに登録しておいたり、よく注文するデリバリーランチをいくつか登録しておくことを前提にすれば、スキルを利用して音声で手軽に「いつもの商品」を注文するいうケースは、一気に現実味を増すのではないだろうか。
Amazonが狙っているのはまずはそこから、更にはキャンペーン情報などをスキルを通じて顧客ごとにカスタマイズしてスキルを通じて配信するといったところからになる。
アマゾンリンクと「Buyer ID」
AlexaスキルでAmazon Payを活用するには、アマゾンリンクと「Buyer ID」を利用する。既にAmazon Payを導入しているECサイト企業の場合、Alexaスキルでも「Buyer ID」をそのまま利用して決済を行うことができるしくみだ(今春リリースされた機能)。
APIは2つ用意されていて、支払いのセットアップと決済を行うAPIとなっている。
音声インタフェースでも着実にビジネス活用を加速するAmazon。ビジネスにも有効という風邪が吹けば、Alexaスキルの開発に一気に拍車がかかるだろう。