日本航空(JAL)は2つのAlexaスキルを既にリリースしている。5月31日に開催された「Voice UI Show 2019 Spring」(主催はVoiceUI Show運営事務局)の基調講演にJALが登壇し、スキル開発を通して感じたこと、苦労した点、振り返れば意外と順調に作れたと感じたことなど、開発事例を具体的に解説した。また、今後の展望やVoice UIについてのキーポイントも語った。
通常はJALのウェブページ関連の業務に携わり、運行情報の配信などを行っているが、ウェブに限らず、顧客にJALを快適に、かつ繰り返し利用してもらうための施策を行っていく部門でもあるため、ウェブに限らず、顧客に提供する情報サービスのひとつとしてAlexaスキルの開発にも取り組んだと言う。
JALが提供している2つのスキル
JALはAlexa対応のVoiceUIアプリとして、「JAL」スキルと「ジャル子ちゃん」スキルという2つスキルを提供している。
「JAL」スキル
「JAL」スキルは、JALの国内線の最新の運行情報、路線ごとの発着情報を検索することができるスキル。2017年11月からリリースしていて、2018年6月にはEcho Spotなどの画面月デバイスにも対応。今後の機能拡充も基幹スキルとして開発していく予定と言う。
Alexaに「羽田の運行情報を教えて」と話すと、Alexaを通じてJALのWEBシステムのサーバーに情報を打診し、問合わせのあった地域の運行情報をサーバーからAlexaを通じて発話して返すというしくみだ。
■JALスキルの会話例(運行状況の確認)
「ジャル子ちゃん」スキル
現役CAの生ボイスでコミュニケーションできるスキル。旅がもっと楽しくなる豆知識やお役立ち情報、航空業界CAのトリビアを現役CAの声に乗せてクイズ形式で紹介する。JALに親しみを持ってもらうことを目的に開発したという。
こだわったポイントとしては、現役CAを実際に起用したこと。現場と交渉してCAをアサインしてもらい、録音スタジオで収録したという。このスキルもEcho Spotに対応していて、CAを使って空港で映像コンテンツの撮影を行った。
飛行機の主翼の先端に赤や緑のライトが光っているのをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。左が赤、右が緑のライトと決められています。さて、このライトの名前はなんでしょう? (一部抜粋変更)
Voice UIの現状を知り、可能性をはかるためにはとにかく作ってみる
Alexaスキルを開発、サービス提供を行うに至ったきっかけは初めてスマートスピーカーと音声インタフェースに触れたときに未来を感じたこと。もちろん、この技術が普及するかどうかは未知数だったが、「とにかくやってみて、Voice UIの現状を知り、今後の可能性を社内ナレッジ化することが重要」と考えたという。また、現在、JAL社内にはチャレンジする姿勢を後押しする体制「チャレンジJAL」があり、その風土が背中を押してくれたと言う。スマートスピーカーは生活を豊かにするだけでなく、生活スタイルを劇的に変化させる可能性があるとした。
スキルの開発には中井氏を含めて4名があたり、フロー設計に0.5ヶ月、プログラムの開発が1ヶ月。開発のハードルは低いと感じていると言う。むしろ一番手間取ったのは、録音スタジオやCAのアサインなどの社内調整で、1ヶ月程度要した。
今後は、顧客体験や情報提供サービスだけでなくeコマースも検討し、JALの会員ID連携と連携してマイレージの残高確認や商品交換など、事前チェックインや搭乗に関わるサービスへの展開していきたい、と抱負を語った。また、音声インタフェースと画面を組み合わせることで表現力が操作の幅が拡大するので、画面付きデバイスの有効性に触れるとともに「Voice UIとGUIとの組み合わせが今後のカギ」になると締めくくった。