Pepperの会話機能はどう変わった? 会話力アップを活かせ!多言語&通訳含めた3者会話も 「SoftBank World 2019」で紹介

最新のPepperの導入実績数は2500社となった。
PepperはAndroidOSに対応し、いくつかの機能が進化して「Pepper for Biz 3.0」にバージョンアップされている。以前、ロボスタの記事でもPepper進化のポイントをお伝えしたが、「SoftBank World 2019」ではPepperの改良点がセミナーやワークショップで紹介された。


新しくなったPepperの機能。顔認識機能、ノイズキャンセラー、メンテナンス関連のロボットスイート、AI会話機能、遠隔ビデオ通話、認知範囲拡大、などがあげられている




Pepperはどこが進化したか?

Pepperの新機能や機能の強化ポイントは、講演プログラム「3年間の実績から生まれた新型Pepperとは~コミュニケーションロボットの社会実装~」で紹介され、展示会場の奥のワークショップコーナーでも1日数回、紹介された。

ワークショップに登壇したソフトバンク株式会社 法人事業戦略本部 AI・ロボティクス事業推進部 ロボティクス推進課 直野廉氏

Pepperのユーザにアンケートをとった結果、「もう少し会話ができるようにして欲しい」といった会話力の向上が一番多かったと言う。

多くの消費者やユーザーがコミュニケーションロボットの会話対応力に不満を抱くというのはサービスとしては残念な状況だが、それも現実だ

そこで「Pepper for Biz 3.0」では、人を認識し、音声認識を確実に行い、返答できる範囲を拡げる、という3点が強化された。同社の表現によれば、これは「接客機会増」「傾聴力向上」「会話継続率向上」ということになる。

Pepperは大型のコミュニケーションロボット、最も得意なところは、人を惹きつけ、共感を獲得し、アプリで情報等を提供するという流れだが、今までその会話の対応力に不満を持つ人も多かった

「Pepper for Biz 3.0」では会話力の強化がはかられた

具体的には、どうすれば会話の対応力が上がるのだろうか。そしてPepperではどのようにして向上させたのだろうか。



周囲の人に反応しやすくなった

まず人の認識範囲を拡げた。Pepperが周囲の人を発見・認知する能力の向上だ。


従来は身長120cm以上の人にしか反応していなかったが、新機能では70cm前後、小さな子どもも認識が可能になった。
また、Pepperの後方センサーで人が近付いていることを感知できるようになり、人を認識する能力が向上させることで、会話を始めたり対応できる範囲が拡大することになる。



人が話す声を聞き取る精度を向上させた

音声認識も向上させた。ハードウェア的には大きな変更はないものの、Googleの技術と連携して、音声認識の精度を向上、80デシベル程度の音声も聞き取ることができるようにした。これは展示会やイベントなど、雑音が多い環境でも会話を聴き取る精度の向上にも繋がる。




雑談エンジンが後ろに控える会話システム

返答機能を強化した。返答できないケースは主に雑談が多いため、雑談専用のエンジン(チャットボット・システム)を会話エンジンのバックに用意した。雑談のシナリオとして53万通りの会話パターンを準備し、企業が作る業務用シナリオにない質問(雑談)を受けたとき、雑談エンジンのシナリオから回答することで、会話を続けることができる。

53万通りの雑談会話シナリオを装備。業務シナリオで対応できない会話を雑談エンジンがカバーする

雑談の例をあげよう。観光案内やトイレの場所などを案内できるPepperを配置したにもかかわらず、観光客が「食べ物は何が好き?」といった日常会話には対応ができなかったため、会話が継続せず、観光客もPepperとの会話をすぐに諦めてしまう。

中国語での雑談対話の例。観光客が好意を寄せて「好きな食べ物は?」と聞く

新機能ではこれに対して「電気」と回答し、会話を継続できる




観光ソリューションとして活用して欲しい

同社はこの新しくなった会話機能を、例えば「観光ソリューション」等に活用して欲しいと考えている。
2020年の訪日外国人(インバウンド観光客)は4000万人にのぼると推定されている。観光業界はその対応に追われている。そのひとつが情報提供だが、課題となっているのは外国語だ。観光客が使う言語は主に英語と中国語が多い。韓国語にも対応できれば、概ね9割がカバーできるとしている。


とはいえ、外国語に対応する方法として、外国人スタッフの雇用やバイリンガルのスタッフ雇用が考えられるが、どちらもコスト高に繋がるし、そもそも人手不足が叫ばれている中では簡単なことではない。そこで翻訳機かロボットの出番だが、ロボットは利用するのに壁が少なく、タブレットやサイネージ等の画像や動画と連携した効果が期待できる。

同社は、Pepperの多言語対応によるコンシェルジュを提案する。Pepperの雑談は英語・中国語でも1000通りの雑談会話を用意した。

また、3社対話による通訳機能も提供していく予定だ。つまり、店頭で来店客に中国語で話しかけられたとき、Pepperを通じて通訳のオペレータと接続し、オペレータを通じて通訳をしてもらう方法。既に数年前からサードパーティが実現している機能だが、新しくなったfor Biz3.0環境でPRを行っていく。

PH1(フェーズ1)では、店員と外国人観光客との間にPepperを通じた「遠隔オペレータ」が入って3者で会話をする。将来はPepperとAIがすべて多言語会話を受け持ったり、Pepperがオペレータにスイッチして会話を継続する、という方向にも向かう予定だ

この機能は今秋に提供を開始する予定だ。

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ロボスタ編集部

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