ロボットバトルのイベント「RoboMaster 2019 Japan Winter Camp」が、京都のけいはんなロボット技術センターで行われるということで観戦に行ってきました。想像以上に熱かった白熱のチーム戦、その様子をレポートします!
「RoboMaster 2019 Japan Winter Camp」とは
まずはこのイベントについて簡単に説明します。ドローンで有名なDJI社は次世代ロボットコンテストの国際大会「RoboMaster」を深センで毎年開催しています。ロボコンとeスポーツが融合したようなようなチーム戦のロボットバトルの国際大会で、ワールドワイドで大人気なんです。そして、その登竜門となる日本大会の交流戦としての位置づけが「RoboMaster 2019 Japan Winter Camp」です。
RoboMaster日本委員会副会長でニワカソフト株式会社代表古賀さんによると、「自分自身NHKロボコンを視察した経験などありますが、RoboMasterという大会はエンジニアがヒーローになれるキラキラした大会で他のロボコンとは違う感じです。FUKUOKA NIWAKAチームとして現地大会にスポンサーとして参加して肌で感じたことは、この大会を日本でやることによって日本チーム全体のレベルアップをはかり、いつか日本のチームが深センの大会で優勝したら面白いな、と思いDJIと協議して今年6月に日本での開催権利を獲得しました」と日本開催への熱意を語って頂きました。
来年3月に「Japan Open」を開催予定
世界大会は毎年8月に中国深センで行われ、中国国内はもちろん日本、香港、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど海外チームも参加する非常に大きな大会です。今回のWinter Campの位置づけは日本国内チームでの技術交流戦で、来年3月に開催予定のJapan OpenではRoboMaster 2020 国際予選への推薦枠がかかっているため、各チームの機体とチームの技量を測る大事なタイミングでもあります。
RoboMaster 2019 Japan Winter Campに関する情報はロボスタの別記事もありますのでそちらも合わせてご覧ください。
Winter Campでの競技ルール
・フィールド上で2チームに分かれてロボット同士で球を撃ち合う射撃戦です。
・ロボットは歩兵ロボット、ヒーローロボットの2種類を操作し、自陣の基地ロボットを守りながら相手の基地ロボットを攻撃します。
・各ロボットは、ルール判定用のRoboMasterサーバに接続するパーツ、球を発射する砲塔、遠隔操作用のカメラなどを装備。
・各チームロボットをフィールド内に、操作者はフィールド外にてPCモニタを見ながら遠隔操作。(もしくはAIでの自律操作)
・基地ロボットのHPが2000から0になったら負けとなりゲーム終了。時間切れの場合はより残りHPの少ない方が負け。
今回は最大構成で3台のロボットが参加可能で(ヒーローロボットX1, 歩兵ロボX2)1ラウンド5分間、2ラウンド制のリーグ戦で実施されました。
Winter Campでの基本戦略
最初にロボットを配置する始動エリアの奥に基地ロボットが配置されています。基地ロボットの装甲パーツが攻撃を受けてHPが0になると負けです。始動エリアの左右が通路になっていますが、向かって左側は段差になっているので、今回のフィールドでは基本的には右から攻め込み左側から降りる流れになります。
またバンカーエリアからは攻撃力・防御力が上がるので、バンカーを占領しての相手ロボットとの撃ち合いの際有利です。
ヒーローロボットを持っているチームは攻撃力で有利ですので、いかに早くヒーローロボットを相手の始動エリアに入りこみHPを削るかが基本戦略です。逆にヒーローロボットを持たないか力の弱いチームは自陣右の斜面の上に陣取り敵を通さないようにできるかがカギになります。
Winter Campの試合の見どころ
1.ヒーローロボットの迫力
Summer Campでは歩兵ロボット同士での対戦でしたが、Winter Campでは42mmの球が撃てるヒーローロボットが追加になっています。
現場の対戦を見ているとゴルフボール大の球がバンバン飛んできてド迫力です!
2.無限回転機能など新機能の実装
各チームで工夫を凝らした新機能を実装しておりそれが対戦でどう影響しているかが一つの見どころです。
今回は特に車両部分が回転し装甲パーツへの攻撃を当たりにくくする「無限回転」機能の実装が目立ちました。
またクローラーやサスペンションなど足回りなどで工夫してくるチームもあり、各チームで何を変えてきたかがわかるとより楽しめると思います。
3.各チームの機体の個性
各チームの機体の個性も見ていて面白いです。今回良かったのはOOEDOSAMURAIチームの甲冑のような装甲がデザイン性も兼ね備えていてカッコイイと感じました!全チーム通して全体的に黒っぽい印象が強いので違う色も観てみたいなーと思います。
筆者が選んだWinter Campのベストバウト
都合により筆者は2日目からの取材になりましたが、筆者の選んだベストバウトと見どころをご紹介します!
ChromeCastなどお持ちであれば大画面テレビにキャストして観戦してもらうと迫力が伝わると思います。
1.FUKUOKA NIWAKA vs OOEDO SAMURAI
見どころ:1ラウンド目後半からストリーミングが始まっていますが、OOEDO SAMURAIが強豪FUKUOKA NIWAKA相手に1ラウンド目先取したところが見どころ!
2.NAGOYA SHACHIHOKO vs KYOTO Challenge
見どころ:両チームとも歩兵ロボット2台同士の戦いで戦力は拮抗しています。1ラウンド目は途中NAGOYA SHACHIHOKOのロボットの動作が不調のためKYOTO Challengeが先取。そして2ラウンド目、段差を降りる際にNAGOYAのクローラーモデルが転倒してしまいます。残りの機体で相手基地ロボットを果敢に攻撃し、引き分けに持ち込みます!
3.Scramble vs FUKUOKA NIWAKA
見どころ:Winter Camp上位である両雄の激突!ヒーローロボットと歩兵ロボットがそろっているためフル構成でのバトルが見られます。Scrambleの機体はヒーロー、歩兵ロボットともに無限回転しながら移動できるモデル。両者とも柱の障害物を利用したり巧みな戦術と連携で攻撃をしています。結果的にはFUKUOKA NIWAKAの勝利となったがロボットを倒したり見ごたえある試合内容になっています。
Winter Camp終了後の各チームへ独自インタビュー
全試合終了後に各チームにWinter Campに向けて準備してきた事と3月のJapan Openへの抱負をお聞きしました。
第5位 KYOTO Challengeチーム
「今回、他のチームからの混合チームでの参加だったので難しかった。あと台数が少なかった(歩兵ロボのみ)のが不利だった。でも他のチームのロボットがたくさん見られて勉強になった。」
(3人で参加ですか?の問いに対し)「他のチームのメンバーもいるのですが、寮にいたりなどで今回参加できなかったです。次回はこのメンバーで参加するかどうかはまだわからないです。」
(筆者):5チーム中5位という結果からか、多少気落ちしている感はありましたが4位と僅差だったのと、関西混成チームということや機体が2台という不利な中頑張ったと思います!是非別チームとしてでもJapan Openに参加してほしいです!
第4位 NAGOYA SHACHIHOKOチーム
「うちはもともと経験者の少ないチームで、他のチームは無限回転とかサスペンションとかやってくるのはわかってる中で、比較されて詰めの甘さで負けてしまうのはちょっと嫌だなーっていうのはあったので、クローラーという手を使ったのですが最後ああいう感じになっちゃって(最終戦でロボットが転倒してしまった)詰めの甘さがすごく出たなと思いました。機械系の技術検証をしたいのと回路開発で確実に動く回路開発をしたいと思います。」
(筆者):最終戦、キャタピラロボが転倒してしまったのは残念でしたが、他チームと違うトライをしたのはナイスチャレンジだと思います!名古屋の学生さん、企業さん是非NAGOYA SHAHIHOKOを応援してあげてください!
第3位 OOEDO SAMURAIチーム
「僕たちの今回の準備の仕方ですが、他のチームと比べてメンバーも少なく十分な練習場所も確保できない状況でしたので多拠点開発(地域ごとにチームに分かれて開発)をしていました。前回はそれが上手くいかなくてサンプル機と借りた機体で参加することになったが、今回は開発がうまくいって自分たちの機体を試合に出せてよかったと思います。
今後の課題、他チームと比べて圧倒的に人的リソースが足りないのでどうにかして人を増やさないといけないなと考えています。それ以外の技術部分に関しては負けているとは思っていないので!(笑)頑張ります!」
(筆者):OOEDO SAMURAIさんは関東からの参加ということで個人的には頑張ってほしいチームです!
堂々3位ということで3月のJapan Openにも期待大です!
第2位 Scrambleチーム
「準備してきたこととしては、サマーキャンプの後歩兵ロボットを大改造してたんですけど、ウィンターキャンプで終わりじゃなくて、目標は国際予選突破して中国チームというのがあるのでWinter Campはそれを試す場にしようということで、無限回転を搭載したりとか、ヒーローロボットも最初から無限回転で設計したりとか新しい技術を取り込んでそれを試す場として準備してきました。
ただその結果として戦略や機構の細かい詰め、射撃の精度とかの詰めが甘くてNIWAKAさんには負けてしまい個人的に悔しい思いでした。次は技術と戦略や精度の詰めの両方をやって行かないといけないなと思いました。
Scrambleは今のところ国内唯一のいろいろなロボコンに参加していてロボコン好きな学生が集まっている団体なので今後もScrambleの活動にご注目ください!」
(筆者):Scrambleは奈良・京都を中心に活動しているロボコン団体で技術力は折り紙付きのチームです!実際Summer Campでは1位でしたし技術実装は一番進んでいるのではないでしょうか?Japan Openではリベンジを狙っているはずなので楽しみです!
第1位 FUKUOKA NIWAKAチーム
「ロボットの加速度を早めるためにスーパーキャパシタというコンデンサを積んで挑んだのがかなり工夫したところです。それと自動照準を今回のWinter Campでは搭載して挑みました。自動照準は前も搭載したことはあったんですけれども実用までに至らなかったのですが、今回勝利に貢献できたことがかなり良かったでした。
Japan Openに向けてはスーパーキャパシタの効率を上げる回路を作ることと、自動照準の精度を上げて相手ロボットの動きを予測できるところまで持っていきたい。またヒーローロボットの足回りを無限回転できるようにしたいです。」
(筆者):今回1位だったFUKUOKA NIWAKAさん!新技術もそうですがやはり世界大会経験という安定感を感じました!おめでとうございます!
Winter Camp観戦の感想
RoboMasterの試合は今までの国内学生ロボコンともまた違うエンターテインメント要素を取り入れた現代風なイベントとなっており、観戦は球をバンバン打ち合うので実際に見るとスゴイ迫力です!
またロボティクス技術だけでなく、回路設計、制御・AIなどのソフトウェア開発、機体のオペレーション、戦略の連携などチームとしてやることが多いためかなりの人数とチームワーク、それを支える練習場所や遠征費用などの資金面のサポートも学生たちだけで行うのはかなり大変なように感じました。それでもこれだけの人数を短期間で集めたということはRoboMasterという大会に今の学生たちを引き付ける魅力があるのだと思います!
中国ではRoboMaster自体が十分認知され大学ごとにチームを組み、教授が顧問に就き力を入れているそうです。
日本でもこのような取り組みをしている大会運営やチームの認知度をあげて支援していくことが世界で通用する若手エンジニア育成に必要なことではないでしょうか?
来年3月のJapanOpenで各チームの次の成長がとても楽しみです!
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高橋一行Forex Robotics株式会社 代表取締役。NVIDIA認定 Jetson AI Specialist。AI、機械学習、ロボット、IoTなどのシステム開発を行いながら、コミュニティ活動やLTにも精力的に活動。 最近、那須塩原にサテライトオフィスを設立しました!