日本の農業者の平均年齢は67歳。高齢化が進むと共に、農業の担い手不足という危機を迎えている。農家の実態を調査したところ、農家は農作業の50%以上の時間を収穫・出荷作業に費やしており、農業所得を向上させるためには、収穫作業を省力化・効率化する必要がある。
このような現状の中、農業ロボットの開発事業を手掛けるAGRIST(アグリスト)株式会社は、宮崎県児湯郡新富町の若手農家がスマート農業の実践と収益拡大を目指して開催する勉強会「儲かる農業研究会」の会員でもあり、JA児湯の理事を務めるピーマン農家・福山望氏と、AIを活用したピーマンの自動収穫ロボットの共同開発を行い、2020年1月から福山氏の農場(ビニールハウス)でロボットの運用を開始。
従来の地面を自走する方式の収穫ロボットの課題を解決する、農家の声から生まれた「ハウス等で使用し、野菜等を自動で収穫できる吊り下げ式のロボット」として同ロボットのPCT国際特許出願を行い、同年春から生産販売を開始することを発表した。
特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PCT)に基づく国際出願(PCT国際出願)は、直接出願の煩雑さ、非効率さを改善するために設けられた国際的な特許出願制度だ。同出願では、国際的に統一された出願書類をPCT加盟国である自国の特許庁に対して特許庁が定めた言語で作成し、1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国(2019年8月時点で152ヶ国)に対して「国内出願」したことと同じ扱いを受けることができる。(※出典:特許庁ホームページより)
従来の収穫ロボットの課題を解決する新しい収穫ロボット
農家と共同開発を行うにあたり、従来の地面を自走する方式の収穫ロボットの課題について意見交換と議論を重ねた。「地面を走って収穫を行う場合、圃場が平らでないためにロボットが転倒してしまったり、圃場にある機械や装置が邪魔になり移動ができなかったりする可能性がある。更に、従来のロボットアーム型の収穫機では、価格も高くなり、保守管理も大変になるのではないか。」という農家の声から生まれたのが、今までにない「吊り下げ式ロボット」だ。
同社は、AIを活用した同ロボットを農家にレンタルサービス提供することで、1反あたりの収穫量の20%以上改善とパート人件費の50%削減を目指す。更に、ロボットで収集するデータを解析することで、病気の早期発見が実現可能となり、その結果、利益を最大化した状態で、農家が規模拡大できるようになると述べている。また、農業の現場から農家と共に、シンプルで低価格な自動収穫ロボットを開発し、生産者の収益を2倍以上に向上させ、日本の農業所得の向上に貢献することで、持続可能な農業とまちづくりを目指すとしている。
AGRIST株式会社