東芝デジタルソリューションズ、放送局やメディア向けに顔認識AI「カオメタ」サービスを提供 映像の本人確認やトラッキングに

放送局では、取材、制作、編集、オンエアなど多くの業務で「映像のどのシーンに誰が映っているか」を非常に重視している。特に、意図した人物ではない別の人物の映像を放送したり、別の人物の名前をテロップ表示するなどの「誤報」は社会的な影響が大きい。そのため番組制作現場では、多くの時間と人手を割いて、映像の人物確認を行っている。本人確認作業が間に合わないと、放送素材をオンエアするタイミングを逃してしまうこともあり、番組制作における確認作業の正確性向上と効率化が課題となっている。

そこで、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、放送局をはじめとするメディア向け顔認識AI「カオメタ」のサービス提供を2020年4月14日から開始することを発表。同サービスは、映像に映る人物の顔を高い精度でリアルタイムに認識し、人物特定することで、迅速かつ正確な番組制作などの業務をサポートする。(冒頭の画像は公式ページより引用)


顔認識AI「カオメタ」の概要

同社が提供を開始する「カオメタ」は、映像から人物を特定する顔認識AIで、メディア側からのニーズが高いリアルタイム性を重視したオンプレ(on-premises)版サービスだ。同サービスは、NIST(米国国立標準技術研究所)主催の顔認識ベンダーテストWild部門で、国内ベンダー1位(世界6位)の成績を記録した東芝 研究開発センターによる独自の顔認識技術を活用している。

※ NIST(米国国立標準技術研究所)主催の顔認識ベンダーテスト(Face Recognition Vendor Test Ongoing)評価指標の1つである、顔向きなどの撮影条件を制約しないWildデータセットの評価で、国内1位、世界6位(2019年6月時点)

さまざまな撮影環境や顔の向きに対して高精度でリアルタイムな認識を実現。また、照明や顔の向きや表情といった多くの変動要因を含んだ画像からでも、正確に人物を特定するための情報を抽出できる技術を有しているため、複数枚の顔画像を用意する必要はなく、一人につき1枚の顔画像を登録するだけで高精度な顔認識が可能だ。さらに、検出した顔の領域を追跡することで認識を途切れさせない人物トラッキング機能や、複数の映像を同時に扱うマルチ画面に映し出された小さな顔の認識など、放送局に特化した機能もあり、さまざまなシーンに柔軟に対応している。



顔認識処理フロー

システム概要図

なお、今回のサービス提供にあたり、日本テレビの協力のもと、選挙特番をモチーフにした以下の実証実験を行っている。


実証実験内容

プロトタイプ版を日本テレビの放送システムに接続し、2019年7月に放送された生放送特番「2019参議院選挙特番」において、映像に映った立候補者の人物名確認作業などに適用したところ、本人適合率99.74%の精度で顔を正しく認識し、本人確認作業時間が大幅短縮されたことで、映像素材のオンエア率が倍増した。

日本テレビ、参院選特番での「AI顔認識システム」活用実験実施について【vol.1】
https://www.screens-lab.jp/article/19009
日本テレビ「AI顔認識システム」活用実験から見えた、これからの人間の働き方【vol.2】
https://www.screens-lab.jp/article/19041

同社は、今後も、番組制作現場の負荷軽減に向けた放送システムとの連携や、システム環境を意識せずに利用可能なクラウドサービス化など、放送局の業務に寄り添う機能の拡充を進めていくとのことだ。また、リアルタイム認識に加え、今まで対応が難しかった大容量の過去の映像に映る人物特定(メタデータ付与)など、さらなる放送映像の活用に貢献していくとも述べている。

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ロボスタ編集部

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