ANAホールディングスとエアロネクストが市街地における「物流ドローン」サービスの開発に向け業務提携 法整備の提案も視野に

ANAホールディングス株式会社(以下ANAHD)と、株式会社エアロネクストは、有人地帯での補助者なし目視外飛行(空の産業革命 レベル4)に向けた物流ドローン「Next DELIVERY」の共同開発を目的とした業務提携の開始を発表した。

Next DELIVERYには、エアロネクストの重心制御技術「4D GRAVITY」を搭載。ドローン機体の中から飛行部と搭載部を物理的に分離し、ジンバルで結合することでそれぞれを独立変位させる「分離独立構造」が特徴。モーター、プロペラ等の運動部と貨物等の荷重が集中する箇所を分離させることで、姿勢変化による重心移動を少なくすることで、航続距離や機体の運動性能を向上させている(詳細は後述)。

ドローンの機体は傾いても、荷物は傾かない




両社が目指す未来とそれぞれの役割

小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会は2022年には空の産業革命 レベル4、市街地などの有人地帯で、補助者なしの目視外飛行に関する規制を解除していくというロードマップを示している。

小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会資料より

「補助者」とは、機体及び周辺住民などの安全を確保するために配置する人員で、飛行経路全体を見渡せる位置で、飛行状況や気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行できるよう必要な助言を行う役割を負う人。
また、「目視」とは、操縦者や補助者の肉眼での観測のことで、「目視外での飛行」とは、自動操縦システムを装備し、機体のカメラ等で機外の様子を観測しながらの飛行を指す。

目視、補助者の両者に関する制約が完全に解除されることで、遠距離飛行による輸送ソリューションなどへの適用がようやく可能になる。

この「空の産業革命」の第一歩といえるレベル4に向けて両企業はどのような点で力を合わせていくのだろうか。

ANAHDはレベル4の前段階であるレベル3、無人地帯で補助者なし目視外飛行に関する実証実験を、福岡市や五島市などで実施、ドローン物流サービスの事業化に向けた検証を継続している。

福岡市にて行った海産物を輸送した実証実験ルート

これは、国土交通省や経済産業省、実験地域との太いパイプの存在や折衝能力などを示し、新興企業などが多い機体メーカーなどには難しい分野だ。
(筆者も実際に大型ドローンの実験をした際には実験場所について非常に苦労し、最終的には海外での実験となった。)
それに加え、機体整備や運行管理に関するノウハウなど、ANAHDは大手の航空会社ならではの知見を多くもっていることが期待できる。



4D GRAVITYとは

エアロネクストの武器は、独自の機体設計技術だ。
ドローンは一般に、飛行において、浮遊や重心、姿勢の制御に関わるエネルギーの消費が航続距離に影響することが指摘されてきた。特に物流ドローンは、貨物を運んでいるときと、空荷の状態で大きく重心位置が変化することなどでその追従はさらに難しくなる。
しかし、4D GRAVITYは貨物の搭載部と機体の間をジンバルでつなぐことにより、重心位置の移動を最小に抑えることができる。
また機体姿勢に関わらず荷物を水平に保つことも可能になり、物流サービスとしての品質の向上にも寄与するという。

4D GRAVITYによる重心制御技術のイメージ。エアロネクスト社ホームページより

今後は両社によって開発した機体をベースに、国内外のドローンメーカーとも連携して量産化を行い、将来的な輸送インフラの一部として社会普及することを目指す。

コロナ禍により航空産業に大きなダメージがあるなか、逆に需要が増していく小型小口貨物の新たな輸送手段を開発していくという、両者の力強いタッグに大きな期待がかかる。

ABOUT THE AUTHOR / 

梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

PR

連載・コラム