日本で無人運航船の実証実験が開始 2025年までに開発を目指す コンソーシアムには40以上の企業、団体が参画

日本財団は無人運航船の実証実験を開始することを発表した。今回の実証実験では船舶交通が非常に多い海域の航行、長距離航行、大型船を用いた実証が世界初の試みとなる。

日本財団は無人運航船の実証実験を行うコンソーシアム(複数の民間企業体)を募集し、5つのコンソーシアムに対して支援を行っている。コンソーシアムには合計40以上の企業、団体が参画。2021年度末まで各コンソーシアムによる実証実験を行い、2025年までに無人運航船の実用化を目指している。


5つのコンソーシアムに40以上の企業、団体が参画

現在、自動車の分野を中心に無人運転の実証実験が進められているが、海運については船陸間の通信環境整備や障害物を瞬時に避けることが難しいなどの技術面、開発への莫大な資金が必要などの経済面から、これまで無人運航船の開発はほとんど行われていない。

一方で日本は、IoT、AIや画像解析技術をはじめ、世界的に高い技術を保持していることから、これらの技術を持つ複数の民間企業が共同で技術開発を行うことで、無人運航船にかかる技術開発を飛躍的に進められる可能性がある。

そこで日本財団がハブとなり、2019年10月から「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」の募集を行い、実証実験を担う5つのコンソーシアムを決定。コンソーシアムには合計40以上の企業、団体が参画している。


1.スマートフェリーの開発

大型内航フェリーの実航海において、離着岸を含む無人運航の実証に加え、将来の機関部故障予知実現に向けて監視強化の効果を確認する。


コンソーシアムメンバー:三菱造船、他1社



2.無人運航船@横須賀市猿島

横須賀市の三笠桟橋〜猿島間の小型旅客船を実験船とし、既存の小型船を安く早く無人運航化できる技術を開発する。広く小型船に適用可能な自動操船技術の実現を目指す。


コンソーシアムメンバー:丸紅、他3社



3.無人運航船の未来創造~多様な専門家で描くグランド・デザイン~

東京湾~苫小牧(予定)のコンテナ船を実験船とし、自動運航船分野で国際的にも豊富な実績を有する多彩な専門家集団による無人運航船が支える新時代の国内物流社会の実現を目標としたオープンコラボレーションで取り組む。


コンソーシアムメンバー:日本海洋科学、他21社



4.内航コンテナ船とカーフェリーに拠る無人化技術実証実験

コンテナ船とカーフェリーを実験船とし、自律運航により内航海運業界の喫緊の課題であるヒューマンエラーによる海難事故の撲滅と船員不足常態化・船員高年齢化に対応するため労務負担の軽減に対応する技術の開発を行う。



コンソーシアムメンバー:商船三井、他7社



5.水陸両用無人運転技術の開発~八ッ場スマートモビリティ~

八ッ場あがつま湖で、水陸両用車の自動運航をオープンソースで開発する。水陸両用車は地上から入水し、水上を自動航行した後、上陸して地上に戻る。


コンソーシアムメンバー:ITbookホールディングス、他4社


船舶50%が無人運航船に置き換った場合、年間約1兆円の経済効果

船員の高齢化(50歳以上が半数以上を占める)による船員不足、事故の8割を占めるとも言われるヒューマンエラーによる海難事故の課題があり、無人運航船が実現することにより、これらの課題が解決されることが期待されている。また、無人運航船が実現し、2040年に50%の船舶が無人運航船に置き換った場合、国内で年間約1兆円の経済効果が期待されている。

今後は2021年度末まで実証実験を行い、2025年までに無人運航船の実用化を目指す。また日本財団では、今後も無人運航船に関して実証実験以外にも支援を行っていく予定。今後無人運航船に関する取り組みは「MEGURI2040」と命名し、次のロゴマークを用いていく。




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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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