
施設内のあちらこちらにロボットがいて、まるで未来の街を歩いているようだ。
これが正直な感想だ。もちろん、これらのロボットの多くは実証実験中で、本に役立つものになるのはまだ先のことかもしれないが、人の生活の中にロボットが普通に共生している空間を肌で感じることができた。ロボット好きにはたまらない。
羽田空港に隣接するエリアに未来型スマートシティの先駆けとなる大型商業施設「HANEDA INNOVATION CITY」がオープンした。略称は「HICity」(エイチ・アイ・シティ)。敷地面積5.9ha、延床面積が13万m2を超える。
「HICity」の最大の特徴は、ショッピングやグルメ、ライブイベントに加え、日本文化と研究開発中のものも含めた最新のICTが体験できることだ。自動運転バス、ロボット、MR、低速モビリティなど。
「newme」はインターネットを使ったアバターロボット(遠隔操作ロボット)で、期間中は一般のユーザーも体験できる。自宅からパソコンで操作することもできるし、会場では会場内に配置された「newme」を操作して、実際の現場にいる店員やスタッフと会話することもできる。
操作を体験してみたが、とても簡単。誰でもすぐに操作できそう。
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「HICity」は先端産業と文化産業の融合をコンセプトに掲げている。
このシルバーウィーク(9/18~22)はオープニングイベントが2本立てで行われている。「浮世絵 THE WORLD」&「スマートモビリティ&スマートロボティクス実証実験」だ。
日本文化と最先端技術
株式会社SECAIはシルバーウィーク期間、「浮世絵 THE WORLD」を開催する。(イベント情報はこの記事の末尾に)
文化発信として行われる「浮世絵 THE WORLD」では、世界に誇る日本文化である浮世絵をモチーフとし、1万個の紙ろうそくを用いて巨大な浮世絵を作るプロジェクトの他、飲食・物販店舗も出店してコリドーを賑わせる。
夜は10,000 個もの紙ろうそくによる幻想的なアート作品
17時以降から開門される巨大浮世絵エリアでは、大田区内の小学生たちが一部制作協力した約10,000 個もの小さな紙ろうそくで表現する巨大浮世絵“羽田旋風快晴”を展示。ろうそくの揺らぐ光で一度として同じ姿を見せない幻想的なアート作品となっている(残念ながら取材はしていません)。
ロボットたちがいっぱい
ロボスタ読者が特に興味津々なのは、先端技術の実証実験の場として行われる「スマートモビリティ&スマートロボティクス実証実験」だろう。様々なロボットやモビリティがHICityに集結し、試乗や操作を楽しむことができる。
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(都産技研)は、開発協力している「THOUZER」(サウザー)を2種類、展示デモ。ひとつは屋外で人の後を追従して運搬する協働運搬ロボットとして(通常のサウザーの機能)。もうひとつは、都産技研の展示コーナーで、LiDARを搭載した自律移動型のサウザーもデモ走行を行っていた。
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TISはロボットの連携をデモ。会場ではスタンプラリーが行われていたが、タッチパネルを押すと、奥から自律移動できる搬送ロボットがやってくる。そこにはスタンプラリーの景品が載せられている。
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このしくみはロボットの運用管理や制御、連携を実現するTISの「RoboticBase」(ロボティック・ベース)を使って実現している。「RoboticBase」は、複数のサービスロボットを統合的に管理し、複数のロボット同士やセンサーなどの環境や人を含めた相互連携を実現するプラットフォーム。前述した「天空橋」駅改札の警備ロボットにも活用されている。
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都産技研には、専用の展示コーナーが設けられ、複数のロボットが展示されている。
「Tokyo Robot Collection」も開催
期間中、HICityがロボットだらけなのはもうひとつ理由がある。それは「Tokyo Robot Collection」も開催されているため。
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ニューミーに負けじと、もうひとつのアバターロボットが活躍していた。羽田空港でも導入されている遠隔操作ロボット「MORK」(モーク)だ。「Tokyo Robot Collection」の解説をしてくれる。遠隔操作ロボットなのでスタッフが話す会話をロボット声に変換して応対。だからこそ会話の精度はバッチリ。
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民間で世界初の月面探査に挑戦するダイモンの無人月面探査機「YAOKI」はコントローラで月面を動き回って探査する。カメラを搭載していて、月面の映像を地球に届けてくれる。「YAOKI」は2021年に実際に月に行く。地球からコントローラで操作できるというからビックリ。
清掃ロボットたちは休憩中
AI自動清掃ロボットが複数台、「Tokyo Robot Collection」に参加しているが、昼間は待機中。夜になると活動するそうで動作しているところは見られなかった。
MR技術を使用した驚きの体験型「羽田出島|DEJIMA by 1→10」
歌舞伎俳優の市川海老蔵氏がエグゼクティブアドバイザーをつとめる「羽田出島|DEJIMA by 1→10」では、MRデパイス「Magic Leap 1」を使ったプログラム「The Heart of ZIPANGU」(ザ ハート オブ ジパング)を上演。「開国しなかった日本」というコンセプトのもとで展開する、日本の伝統と革新が融合した架空の世界を、演舞と映像美、音楽、そして最新技術で表現。おすすめです(別途、体験レポートします)。
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神崎 洋治
神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。