AWSが自動運転のAIロボットカー「DeepRacer」のレースを開催!強化学習の完全自走型レーシングカーの新モデル「Evo」も披露

アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは、9月25日に一般にAIロボットカーとも呼ばれる「AWS DeepRacer」(ディープレーサー)を使ったスペシャル企画「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」を開催した。コロナ禍のため参加者や観客はオンラインで参加した。

「DeepRacer」は強化学習の完全自走型レーシングカー。「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」は1台ずつ複数周回して最も速いタイムで競うタイムアタック方式

「DeepRacer」の前景。後部のように見えるが、こちらが車両の前部。搭載されているカメラが見える

タイムアタックとはいえレースではすべての参加者が同じ機体を使用するので、勝敗は強化学習やスロットルやコース取りなど、AIの操縦・制御、つまりソフトウェア面での精度で決まる。

参加者もリモートで参加(右)。左はMCのnicoさん

解説は、AWSの機械学習ソリューションアーキテクトの大渕麻莉さん


また、今回正式に初披露となる新型モデルの「AWS DeepRacer Evo」のデモ走行も行われた。(記事の後半で紹介)

新型モデルの「AWS DeepRacer Evo」。進行方向(車両前部)は右


「DeepRacer」と「AWS DeepRacerリーグ」

2020年もDeepRacerによる「AWS DeepRacerリーグ」が開催されている。現在開催中のオンラインレース「AWS Summit Online サーキット」にエントリーしている参加者の中で、フィジカル リモート レースに参加表明していることが参加の条件で、更にその中から上位5名が選出され、この「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」に出場した。

■AWS DeepRacer フィジカルリモートレース – AWS Summit Online

「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」のルールはひとり持ち時間4分で、DeepRacerを走らせ、4分の中で最速の周回ラップを記録とする。


日本でもドンキーカー、JetBot、JetRacerなどAIロボットカーと呼ばれるディープラーニング技術を活用して走る小型の自動運転カーが注目されている。AWSでもAIロボットカーを運搬(宅配)に活用することを想定した競技「AWSロボットデリバリーチャレンジ」を開催していて、その記事は先日ロボスタでも掲載したばかり。この競技の場合、AWSはロボットカー自体は供給していない。(関連記事「学生たちが自律移動ロボットで自動運転とAIの技術を競う「AWSロボットデリバリーチャレンジ」開催!優勝は千葉工業大学」)

一方、「DeepRacer」は日本ではまだ知名度は高くないものの、AWSがグローバルで注力している強化学習の完全自走型レーシングカー(AIロボットカー)だ。ハードウェアとディープラーニング強化学習の開発サービス込みでAWSが供給している。2018年11月に開催されたAmazonの年次イベント「AWS re:Invent」で初めて公開された(日本では2019年5月に正式に披露)。AWSが提供しているAIの強化学習関連サービスを活用してもらい、普及に弾みをつけたい考えだ。

「DeepRacer」の車両イメージとロゴ。何度もいうが、これは車両の後部

「Intel Atom」プロセッサを搭載し、4GBメモリ、ストレージは32GBを標準で装備する。そのほか、Wi-Fiや4メガピクセルのカメラ、ジャイロセンサー等、自動運転に必要なデバイスと技術を搭載している。



世界大会では日本人が1位と2位を獲得

今回の「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」の解説の前に、もうひとつ注目しておきたいトピックがある。実は「AWS DeepRacerリーグ」の世界大会にあたるファイナルイベントでは日本人が1位と2位を獲得している。

そのときに2位となった「Fumiaki」さんが、今回の「AWS DeepRacer フィジカル リモート レース」に出場、コースも同じため、本命とみられているが、他の参加者がどのように対抗するか、競技前の興味の焦点はそこに絞られた。

今回参加した5名

タイムアタックが始まる。シミュレーション上で走らせるのと実機で走ることの違いや、リモートで基本的な速度(アクセル値)が現場で設定してる点も走行を難しくしているようでコース上を正確に走ることさえ難しく、コースアウトが続出。


コースを外れるとスタッフがコース上に戻して走行を再開する。


結果は本命の「Fumiaki」さんが13.55秒で優勝、「YMZK-DENSO」さんが21.19秒で2位に輝いた。


■AWS DeepRacer フィジカル リモート レース | 2020/9/25 (金) 動画 (約1時間18分)


優勝者「Fumiaki」さんインタビュー

優勝したFumiakiさんは普段、ソフトウェアエンジニアとしてスマートフォン用のアプリの開発やユーザー向けのソフトウェア開発等を行っている。また、新しい分野の最新技術調査も行っていて、そのうえでAI関連(ディープラーニング)に対する興味自体はあったものの、実際には2019年にDeepRacerリーグに参加したことがきっかけになった。「仕事としてAIを使いこなしているほど熟練はしていない」と語る。

優勝した「Fumiaki」さん

編集部

このレースに参加したきっかけと難しかった点を教えてください

Fumiakiさん

もともとDeepRacerリーグに参加したきっかけは、所属している会社(DNPデジタルソリューションズ)がDeepRacer関連の研究を行っていて、イベントに参加しやすい環境があったことです。また、今回のレースについてはコロナ禍でイベントの多くが中止になっていたので、フィジカル リモート レースの情報を聞いて参加しようと決めました。
昨年のラスベカスのレース(成績は第2位)は世界中から参加者が集まっていて、AIモデル自体に大きな差は感じませんでした。むしろスロットルの細かい調整などが勝負の決め手になっていたと感じています。今回のコースは前回出場したラスベカスのコースと同じだったので、実機を走らせるモデルのノウハウはあったので有利だったとは思います。ただ、難しかったのはそのスロットル(スピード)の調整です。通常はカーブの手前でスピードを落としたり等の調整を細かく行いますが、今回はリモートということで細かい調整ができずにも現場の方にお願いしたり、そのタイムラグがあったりで難しかったです。



FumiakiさんはDeepRacerをきっかけにディープラーニングや強化学習に触れて興味を持ち、社内では部署全体でAWSのクラウドサービスが既に利用されていたこと、AWSのサービスに触れる機会が推進されていたこともあって、DeepRacerの研究・学習・開発する環境には恵まれていた、とした。

編集部

AIロボットカー全般に興味がありますか?

Fumiakiさん

仕事ではなく趣味で、ドンキーカーやJetsonに興味を持っていて、情報の収集等をしているものの、まだ実際に購入したり開発等の活動はできていません。

編集部

DeepRacerの強化学習を丈夫に行うコツやレースに勝つポイントはどのような点でしょうか?

Fumiakiさん

DeepRacerで機械学習(強化学習)するには「報酬関数」が重要です。犬に芸を教えるときのように「どんな行動をとったらどんなご褒美をあげる」といったことで学習を進めていきます。それを関数で行ないます。例えば、シミュレーション上で、コーナーを効率的に曲がればより高い報酬がもらえる、ということでAIはより高度な走行を学習していきます。バーチャルのレースではトレーニングの環境とレースの環境が同じ(どちらもシミュレーション内)ですが、実機のレースだと誤差が出るのでシミュレーション通りにいかない点が難しいので、安定した走行で、かつ速いモデル作りを各チームが行なっていると思います。

編集部

Fumiakiさん、優勝おめでとうございました


新型モデルの「AWS DeepRacer Evo」のデモ走行

イベントの最後に、DeepRacerの新しいモデルとなる「AWS DeepRacer Evo」のデモ走行が行われた。2台で走行し、ヘッドtoヘッド、テールtoノーズのレースを行っているかのようなイメージ走行も披露された。

「AWS DeepRacer Evo」登場

2台によるデモ走行

「AWS DeepRacer Evo」の最大の特徴はLiDAR(レーザーセンサー)を搭載していること、そしてカメラを2基搭載している点だ。

AWSから提供された「AWS DeepRacer Evo」の写真がなぜか後部のものばかりで見づらいが、この写真がゆいいつ前部が写ったもの。左が前で二眼カメラが見える

後部の写真。車体の上部に見えるのがLiDAR。自動運転車でも利用されている重要な技術だ

■AWS DeepRacer Evo デモ走行

今後は「DeepRacer Evo」によるレースが開催されるかもしれないので、その点も楽しみだ。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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