【速報】ボストンダイナミクスが四足歩行ロボット「Spot」の新機能と活用事例を発表 自律移動/遠隔操作/運用管理/アームを強化

ボストンダイナミクスは2月3日午前1時(日本時間)、四足歩行ロボット「Spot」に関するローンチイベントの動画(Launch Event: Meet Spot’s Expanded Product Line)をYouTubeで配信。3種類のプロダクト(サービス)について紹介した。動画は約25分。その内容を抄訳で紹介したい(詳細や確認は配信動画で確認してください:記事の末尾に掲載)。


Spot enterprise
工場やプラントなど、現場でのデータ収集や見回り確認を支援するロボット、リモートでも操作が可能。

Scout
WEBベースのアドオン・ソフトウェア。いつでもどこからでもSpotを操作可能にする。

Spotアーム
キャビネットからものを取ったり、ドアを開けたり、スイッチの操作等、リモートによるマニュピレーションをより簡単に行える。


ボストンダイナミクスはこのローンチイベントに先駆け、YouTubeでSpotのパフォーマンスを披露する動画を昨日公開している。関連記事「【速報】犬型ロボット「Spot」の新動画をボストンダイナミクスが公開 部屋の片付けや庭の手入れはお任せ
Spotは現在、40以上のパートナーで400台が利用されている。動画ではBPやNational Grid、Woodside Energyなどの事例が紹介された。


工場やプラント等でのDXにSpotを活用

動画では「私たちのゴールは、Spotを最適なデータ収集やマニピュレーションのプラットフォームにすることです」と語られた。

「危険が伴う仕事において、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、問題をより早く発見したり、オペレーションやメンテナンスを改善するために重要な課題です。
しかし、高度な技術を持つ企業にとっても、膨大な量のデータにアクセスしたり、リアルタイムで確認をすることは、今までそうだったように簡単なことではありません。」



「Spotを導入することで、いつでも多くのデータを収集することができるようになります。オペレーションを効率的にするだけでなく、リスクを減らすこともできます。Spotはデータコレクションの問題を解決します。モビリティやオートメーション、従来のロボットが機能できなかったエリア(場所、区域、広さ)であっても移動して収集が可能です。
また、フレキシビリティがあるので、多くのタスクに柔軟に対応できます。例としては、センサーを搭載したSpotが、原子力発電のプラント、地下の鉱山などで作業したり、工事現場の進捗状況を確認したり。このような現場でSpotが動き回る映像を観たことがある人も多いでしょう」


同社はクライアントがSpotを活用する様子を見て「更に拡張できるのではないか」と考え、開発を進めたという。


Woodside Energy社は、オーストラリアの自然ガスを扱う大企業。ガスのプロセシングは複雑で、危険になりうるため、継続したモニタリングが欠かせない。作業スタッフは危険な場所に入り、センサー類を設置したり確認することを余儀なくされているが、Spotがその作業を代行することでリスクを減らした。
そして、これら現場の状況を管理センターから遠隔操作で確認することも実現した。現場にいくだけでも数時間かかるケースもあったが、Spotが数100マイル離れていても遠隔操作できるので距離に関する課題を解決した。



Spot Enterprise

Spot EnterpriseはWoodsideのようなクライアントのために開発された。遠隔操作だけでなく、完全な自律動作で移動したり作業することができる。バッテリーが少なくなると、ドック(充電器)を自分で探して充電。マニュアル操作でSpotがドックをみつけられる位置まで動かせば、あとはSpotが自動でドッグに入る、そんな風にも使える。Spotはタブレットで遠隔操作することができ、フル充電はわずか2時間で完了する。


また、従来からある「Basic Mobility」機能に加えて、ハードウェアをアップグレードすることで安全性やコミュニケーション能力を向上させた。高性能なWi-Fi、Ethernetコネクションに対応し、大量のデータの取得も可能になった。




Scout

「ScoutによってSpotはオペレータの目と耳となるでしょう。Scoutを活用することで、センサーやメーター、機器の確認ためだけに遠方や危険な現場を巡回する必要がなくなります。オペレータが「Virtual Control Room」から操作することが可能になりました。」


「Spotに命じたことをブラウザから見守ったり、データをリアルタイムで確認することができます。Spotは必要とするデータを収集、現場のドキュメントを作成、アセットマネジメントを行うことができます。Spotに30倍のオプティカルズームを装備し、オペレータは画面上でカメラ映像をズームインして、ゲージやメーターを確認することができます。マイク機能で周囲の音を聞くこともできます」


「Touch To Go」機能を使えば、画面上の場所をタッチすることでSpotを動かすことができる。動画でも解るとおり、階段の登り降りにも対応する。

「Spotは転倒しても、自力で立ち上がることができます。Spotには自動でものを避ける機能「built-in obstacle avoidance」があります。もし、オペレータが何かにぶつかってしまうような操作をした場合でも、Spotはそれを避けて通るでしょう。この機能は調節可能で、大きく回って回避するか、ギリギリを通るかも選択することができます」

Spotは、通信が届かない場所に行ってしまった場合、Wi-Fi等が届く場所まで自律で戻る機能も装備されている。

Scoutはひとつのシステムで、複数のユーザとロボットを管理することができる。
「1台のSpotを操作できるのは一人のオペレーターだけですが、Spotの映像などのデータは複数のスタッフが同時に視聴して共有することができます。例えば、現場で何かが漏れているのを確認した場合、その映像のリンクをスーパーバイザーに送信するだけで共有できます。VPNにも対応しています」





Spot アーム

Spotは搭載したアームを使ってドアを開けたり、バルブを開け閉めすることができる。APIが提供されるので、開発者が独自にモバイル・マニュピレーションを開発することもできる。



Spotの前身として、2013年に開発された「Big Dog」の映像が流れ、ハイパーフォーマンス・アームのデモとして、コンクリートブロックを5m投げている様子が再生された。Spotのモバイル・マニュピレーションはこの技術をコアとして開発されてきた。


更に昨日公開されたSpotによる縄跳びの動画が流れ、ハードウェアとソフトウェアのコーディネーションのデモが披露される。縄跳び自体は産業では必要のない動作かもしれないが、Spotのモバイル・マニュピレーションの有能性と制御をアピールするには充分なものだ。


Spotアームの重量は約8kgだが、5kgまでのものなら運ぶこともできる。これにより現場にある物体を移動させることができる。その例がコンクリートブロックを引きずる動画だ。その速さは毎秒10m。


デプスセンサーや4K RGBカメラを搭載することで、作業中の映像をオペレータに見せたり、検査業務に活用できる。
アームの操作はSpotと同様、タブレットでシームレスに操作することができる。APIによってXR機能や独自の操作画面を追加することもできるという。

■ Launch Event: Meet Spot’s Expanded Product Line

(Featured Ayuka Alyson Kozaki)

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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