
NEC(日本電気)とNECプラットフォームズは、自社工場でロボットと映像・音声の共有、ローカル5Gを活用した実証実験を実施したことを発表した。例えば、5Gで映像伝送しながら1人で2台のロボットを制御し、遠隔から8種類の部品をピッキングする作業を実現し、その有効性を確認した。また、5Gの特長を活かして多数のロボットを接続したり、無人搬送車との連携を図るなど、生産ラインへの導入を目指すという。
ロボットの遠隔操作と映像・音声の共有による遠隔作業支援
場所はNECプラットフォームズ甲府事業所。通信帯域は「Sub6」(4.7GHz帯)を使ったローカル5G環境を構築、製造現場のリモート化・自働化に向けた実証実験を行なった。今回の実証実験では、ピッキングロボットの遠隔操作と、映像・音声の共有による遠隔作業支援の有効性を検証した。今後、実用化に向け2022年度までにロボットの操作台数増加など実証規模の拡大を図りながら、生産ラインへ本格導入を目指す、としている。
昨今、製造業において生産性の向上、労働力不足への対応、熟練作業者の技能伝承などを目的にIoTやAI、更には5Gなどの最先端技術を組み合わせたスマートファクトリー化が加速している。こうした中、高速大容量、低遅延、多数同時接続といった特長を持つ5Gの活用が重要になっている。
ローカル5Gを活用した実証実験について
1.環境構築
NECがローカル5Gのコア・基地局など無線設備の構築や運用、5Gを活用した製造業向けソリューションの提供を行い、NECプラットフォームズが甲府事業所内に試験設備の構築とソリューションの実用化に向けた検証を行った。
2.実証内容
(1)ピッキングロボットの遠隔操作
ロボットアームとカメラを取り付けた移動体を遠隔操作して、部品のピッキング作業を行う。ピッキング作業は、多種多様な部品が存在するため自働化するには難易度が高く、ピッキング位置までの移動はロボットが自動で行い、ピッキング作業を人が遠隔で操作することで作業者の負担軽減と自働化を両立する。
今回、5Gで映像伝送しながら1人で2台のロボットを制御し、遠隔から8種の部品のピッキングを実現した。また映像表示・ロボット操作における遅延を検証し、ストレスなく遠隔操作するための目標遅延時間0.2秒以下を達成し、実用化に向けた操作性を確認した。
今後ピッキングロボットの作業の高速化のほか、5Gの特長を活かし多数のロボットとの接続や無人搬送車との連携を図り、生産ラインへの導入を目指す。
(2)映像・音声の共有による遠隔作業支援
現場作業者が着用したスマートグラスを通じて映像・音声を共有するNEC遠隔業務支援サービスを活用し、支援者や熟練者は現場に行くことなく、遠隔からリアルタイムで作業支援を行う。データ量が大きい映像も5Gを活用して通信の安定性を図り、現場作業者の作業効率や正確性の向上につなげる考え。
今回、リアルタイムに状況を把握して作業指示を出すことでライン停止時間と後戻り作業が削減でき、製造現場における遠隔作業支援の有効性を確認できた。またフルHD映像とより高精細な4K映像のそれぞれについて遠隔作業支援の効率性を比較して評価したところ、4K映像の方が支援時間を平均で約20%短縮できたという。
今後、高速大容量といった5Gの特長を活用し、4K・8Kなどの高精細な映像の共有やAR(拡張現実)を利用したコミュニケーションを製造現場で実現することで、さらなる生産性の向上を目指す。
NECは、製造業向けローカル5Gのトータルソリューション化を行い、スマートファクトリーの実現に貢献する、としている。
また、NECプラットフォームズは、国内外の工場に順次ローカル5Gの導入を進める計画で、複数の無人搬送車のリアルタイム制御や大量センサ・映像データの利活用促進、工場内ネットワークの無線化など、工場での5G活用シーンを広げ、生産効率の向上を図っていく。
NECと三井住友建設 リアルタイム多言語音声翻訳のチャットシステムを開発 多国籍の職場環境のコミュニケーション不足の解消に
成田空港と羽田空港 NECの顔認証システムで搭乗手続き「Face Express」実証実験スタート 国際線の搭乗が非接触でスムーズに
日本電気 関連記事 (ロボスタ)
この記事を読んだ人におすすめ
-
【速報】5G通信を使った「レベル4」の自動運転バスを実証運行 NEC、群馬大学らが前橋で通常運行バスとして利用者を乗せて実施
-
ローカル5GやMRで「新たな観光体験」実証実験 NEC/凸版印刷/マクニカらが平城宮跡歴史公園で実施
-
INCJがKyoto Roboticsの全株式を日立製作所に譲渡 物流/工場の自動化向け「3次元ビジョンセンサ」「ピッキングロボット」開発
-
【速報】「動く実物大ガンダム」パイロット視点の景色が見たい ソフトバンク5GのVRドームでコクピットをリアル体験 ガンダムファクトリー横浜
-
ドコモが推進する「対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ」5G自律走行・遠隔制御向けに活用されている映像認識AIとは?
-
デロイトが5Gの認識調査を発表 日本と海外の違い、日本の5G利用は1%未満、VRやスマートスピーカー等デバイス利用は最下位
-
5Gネットワーク障害時にAIが自動復旧する実証実験 KDDI、日立、NEC、OKIとNICTが協業
-
NEC、数秒のサンプル映像を見せるだけでAIが類似の行動を見つけ出す「オンデマンド行動検出」技術を開発 骨格検出を応用
-
スマートロボティクスの遠隔操作ロボット「テレワークロボット」を殺菌/噴霧/配膳/運搬に応用 ドコモが5Gパートナー提供開始