ロボットでストレスフリーな社会を ユニバーサル未来社会推進協議会 ロボットショーケース
文部科学省 ユニバーサル未来社会推進協議会は、2021年7月30日、オンラインイベント「ロボットショーケース」を開催した。「ユニバーサル未来社会推進協議会」とは、東京オリンピック・パラリンピック開催に併せて2015年に発足した協議会。76企業/団体が参加しており、「先端ロボットが活躍し、老若男女、身体の状態に関わらず、さらに国籍も超え、全人類が皆、ストレスフリーな生活の実現に必要な幅広いサービスを享受できる社会」を「ユニバーサル未来社会」とし、その実現を目指した体験エリアの構築を目的としていた。
本来は東京オリンピックに合わせて「日本の優れた技術・社会システム等を国内外にアピールするショーケース」としてのリアルイベントをお台場近辺で実施する予定だったが、新型コロナ禍によって計画を変更。オンラインで行われた。レポートする。
オリパラ、コロナ禍、ロボット
はじめにユニバーサル未来社会推進協議会会長で、東京大学 教授、慶應義塾大学 教授の鈴木寛氏は、新型コロナ禍に触れ、「新しい技術のプラットフォームの普及を進め、ライフスタイル、ワークスタイル、価値観の転換のきっかけとなった。あとから歴史を振り返れば、大きな潮の流れが変わった年として記憶されることになると思う」と挨拶した。そして「厳しい研究環境のなかだが、それぞれの主体が努力して進化進歩している。その現場を共有し、新しいヒントや縁がここから生まれれば。この活動自体は節目を迎えるが、新しい縁が広がるといい。集った人たちが良かったなと思う未来になれば」と語った。
続けて、副会長3名が挨拶した。日本障害者スキー連盟常任理事/日本パラリンピアンズ協会(PAJ)会長の大日方邦子氏は「多様な人たち誰もが生き生きと暮らしやすい社会をどうすれば実現できるか側面からお手伝いをしている。障害がある私たちにとってはまだ、動きにくい、生きにくいと感じることがある。AIや技術の力を使って良くなってきてはいるが、より良くなることはまだまだ期待できる。オリパラも予定とはだいぶ違うかたちで開催されている。これから8月にパラリンピックが開催される。そのなかで先進的技術を使ってどのような未来を提示できるのか。それがどのように人の行き方を変えていくのか。期間を問わず皆さんに考えてもらいたい」と語った。
一般社団法人アスリートソサエティ代表理事の為末大氏は「オリパラがきっかけでもないと私がこういった活動に参加させて頂くこともなかったと思うので感謝している。オリパラには色々な賛否がある。改めて感じているのはオリンピックはもともと平和の祭典だということ。世界平和のために行うものだということをスポーツ界がうまく伝えられていなかったことを反省している。今回、協議会で、ロボットの技術と人間の関係を考えるということに共感をしている。なんのためにやるのかを考えて技術を追求することは素晴らしい。願わくは平和で多様な人間同士が包括しあいながら調和を求めていくことに技術が貢献することに期待している」と語った。
工業デザイナーで東京大学教授の山中俊治氏は「この会は未来志向からスタートした。残念ながら開会式のドローンも日本の技術ではない。しかし聖火トーチや聖火台などには日本のものづくりが生きている。ブルーの表彰台もリサイクルプラスチックを使った3Dプリンターで作られているし、鮮やかなジャケットにも最先端の無縫製ニットが使われている。ものづくりはイベントを支えている」と語った。
心・身体・社会を循環させて「世の中をわいわいと動かす」ロボット技術
基調講演はユニバーサル未来社会推進協議会 副会長で、千葉工業大学 常任理事・未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏が行った。古田氏は「ロボット技術はバーチャルとは違う、現実に働きかけるもの。新型コロナ後の世界でイノベーションのきっかけになれば」と語り、fuRoの成果を紹介した。
まずは、乗りたくなるパーソナルモビリティとして「ILY-A(アイリーエー)」が紹介された。利用シーンに応じて4種類に変形するモビリティである。古田氏らは「生活ツールにしたかった」という。しかしながら「これを買うかと妻に聞いたら『買うわけない』と言われてしまったというエピソードを紹介。「これでは単なる移動機構でしかなかった。これは本当にイノベーティブか?と考え直した」と続けた。
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古田氏らが次に開発したのが「CanguRo(カングーロ)」だ。レーザーセンサーを使ってSLAMを行い、人についてきたり、時には人に寄り添い、時には乗り物となる。「パートナーにもなる馬のようなロボットを作りたかった」という。
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古田氏は「未来の乗り物の可能性を作りつつ、ロボット技術を届けないといけない」と語り、パナソニックのロボット掃除機「ルーロ」でのコラボモデル「MC-RSF1000」を紹介した。古田氏は、この「ルーロ」に実装されたSLAM他の技術は「CanguRo」で開発されたものと共通していると述べ、「我々は皆さんに技術を届ける義務がある」と語り、ドローン開発の様子も示した。従来のものよりも高精度な地図を作れるという。
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そして「技術はなまもの。新鮮なうちにみなさんに届け、デザインして、進歩させていかなければならない。世の中の全体設計をし、利用シーンを考え、サービスを考えなければならない。デザインは技術、サービス、利用シーン、全部のデザインが必要」と述べた。そして「技術は心に向かうべき。ただ便利さのサポートだけではいけない。心、身体、社会をどんどん循環させ、コンヴィヴィアル(共生)な世界を実現し、もっとユニバーサルで、世の中をわいわいと動かすことが重要」と語った。
弱い教師データからも学習でき、因果推論できるAIへ 理研AIPの取り組み
続けて、ユニバーサル未来社会推進協議会 副会長、理化学研究所 革新知能統合研究センター長、東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授の杉山将氏が、次世代AIの開発を行う理化学研究所 革新知能統合研究センター(理研AIP)について紹介した。理研AIPでは機械学習をベースに、新しい理論構築を行う汎用基盤研究、社会実装を進める目的志向研究、社会研究を進めている。特に、がんや再生医療、材料科学、防災減災、高齢者ヘルスケアの解決に挑んでいる。
目的志向研究の成果としては、前立腺病理画像からのがん検出などが行われている。AIと病理医の組み合わせは特に有効だという。また南海トラフ地震の周期予測にも取り組んでいる。摩擦パラメータを決定するのは困難であり教師データも集めにくいので、シミュレーションを活用して推定精度を高めている。文章の自動評価にも取り組んでいる。半教師つき学習や自己学習を活用して人の作文を自動で評価する。人と同レベルの評価性能を達成しているという。
社会研究では、AI倫理指針の策定や、個人データ管理モデルの提案や実装に関わっている。企業や政府が主導する海外とは異なり、理研AIPでは個人主体のデータ管理・共有を推進している。リスクを低減でき、低コストで実現できるという。
汎用基盤研究では、脆弱性やデータ収集コストの高さ、膨大な学習時間などの深層学習の弱点を克服し、次世代の機械学習手法を開発することに挑んでいる。ネットワークの最適化は非常に難しいが、深層学習を数学的に解明して、さらなる性能向上に挑む。従来手法では「正しい教師データ」が必要だが、アプリケーションによってはそのようなデータを集めること自体が困難だ。そこで「弱い教師データ」からも正しく学習できる理論体系を構築している。因果推論にも挑んでいる。相関ではなく、因果を推論する。そのためには隠れた要因の扱いが重要で、そのような要因があるなかでも全体構造が推定できる方法を確立している。
AIは様々な分野で活用され、期待されている。今後、理研AIPでは単に賢くなるだけでなく「人間社会にインクルーシブ(包括)されるAI」が重要だと考えており、そのためには人間の知識・創造性・文化・倫理を融合する必要があると考えていると語った。
山形大学 ソフトマターロボット研究
このあと、9機関からZoomのブレイクアウトルーム機能を使ったオンラインプレゼンテーション形式で、各ロボットが紹介された。山形大学はソフトマターロボット研究から、忠犬ハチ公をモチーフにした柔らかい素材のコミュニケーションロボット「ゲルハチロイド」、3Dプリンターにより制作された柔らかい素材のクラゲロボット「ゲルクラゲ」、柔らかい繊毛を振動させ狭い配管内を移動し内部の状態を監視するロボット「配管探査ロボット」を紹介。
「ゲルハチロイド」は実際の生物同様、目がゲルで構成されている。研究担当者は「目はロボットでも重要で印象を決定づけるものになっている。本当にゲルでやってみるとどうなるか」と考えて試してみたとのこと。水分を含む材料でできているので涙を流すこともできるし、黒目から三白眼に変位していくようなこともできるという。また透明素材を使うことで「モナリザ効果」、すなわちどの角度から見ても目が合うような効果を出すこともできる。「目の表情をゲルで置き換えると、意外と本物に近い、生物感が出せる。触ってみて初めて気付く部分と材料自体が持つ表層の美しさなどを統合すると生き物に近づけられるのではないかと考えている。今後はもっと知的で生活空間においても遜色ないロボットを目指して研究を進める」と語った。
ゲルクラゲは高分子ハイドロゲルを使った観賞用。モチーフはミズクラゲだ。NDソフトウェアから販売されている。大きさは直径7〜8cm。このほか、山形大学ではゲルの臓器モデルやゲルによる食品モデルを作ってロボットによる作業そのほかのテスト用にも提供している。
山形大学で開発されている配管探査ロボットは振動モーターによって繊毛を震わせて推進するタイプ。振動によるたわみと復元の繰り返しで前進する。9軸センサを内蔵して3次元地図を作れるものや回転するツノを持ったものなど、大きさの違いも含めて様々なタイプのロボットが開発されている。車輪を組み合わせた配管探査ロボットとのハイブリッド型の開発なども視野に入れている。また、全体を柔らかい生分解性材料で作ることで、万が一パイプ内部で詰まってもやがて分解してしまって自然に還るロボットを作ろうとしているとのことだった。
RSi 芝浦工業大学グループ コミュニティサービスロボット
RSi(ロボットサービスイニシアチブ、http://robotservices.org) 芝浦工業大学グループは、様々なロボットを共通通信仕様でネットワーク連携した遠隔ロボットシステムを紹介。なるべく共通のインターフェースで様々なロボットを使うことで、提供するサービスの多様化とサービス全体のコストを下げようというのがコンセプトだ。RSi(ロボットサービスイニシアチブ)は、様々なロボットをネットワークで繋ぐための仕組みづくりと検証を行っている団体で、RSiが提案する共通プロトコル「RSNP」を使ってロボットをネットワーク化している。
デモでは、深川の江戸資料館で実験中のコンシェルジュロボット、東京都立産業技術研究センター、会津大学、青山学院大学相模原キャンパスなど各所に置かれたロボットを遠隔操作する様子が示された。サーバーは青山学院大学附置情報メディアセンターに置かれており、ロボットへの指令や画像の配信は常にそのサーバーを経由して発せられる。
東京都立産業技術研究センター(都産技研)は…評価環境の提供や委託金を出して事業化を支援している。ロボットは様々なシステムから構成されるが、事業化のための技術全てを中小企業が持つことは難しい。そこで都産技研ではロボットの要素技術を整備して提供できるようにしようとしている。また見本としてシステム化したものをデモしている。その一つが今回のデモでも使われた自走式案内ロボットの「Libra」だ。
会津大学は移動ロボット「メガローバー」を使用。会津大学ではクラウドロボティクスの研究を行っており、サーバー側で大局的経路を設定したり、ビジネスアプリケーションとロボットの自動連携を目指している。
青山学院大学では、人形浄瑠璃ロボット「OSONO」が紹介された。これは「どうすればサービスロボットが人を引き付けられるか」という趣旨の研究の一環で、東京都立産業技術大学院大学の成田雅彦氏と青山学院大学附置情報メディアセンターの中川幸子氏が研究している。人形浄瑠璃の技能(人形のしぐさや操法のわざ、演出の手順など)を、サービスロボットの身体性へとりいれる手法を研究しているという。ふりは国指定重要無形民俗文化財「相模人形芝居下中座(神奈川県小田原市)」による「艶容女舞衣-酒屋の段-」の上演を撮影し、そのシーンの一つを分析して抽出したしぐさ・動作をもとに、限られたモーターを使って実装している。
なお、ロボットのふりそのものは自律的に動いているが、ボタンを押すことで遠隔操作することも可能だ。実際には「上」というボタンを押すと、あらかじめ振りつけられている演技のなかで上を向いているところに移動するといったかたちになっているが、操作者側には「操作している感」があり、自分が演技しているように感じられるという。
大阪芸術大学 中川志信研究室 人形に近づけた構造のヒューマノイド
大阪芸術大学 中川志信研究室は伝統芸能「文楽人形」のメカニズムを先端ロボットで再現したロボット「BR-01」、そして開発中の「BR-02」を紹介。。文楽人形は独自の誇張表現で多くの感情表現を伝えることができる。その誇張表現をロボットで再現することで、ロボットが、人形が表現している生き物のような動きをすることが可能か検討するもの。
文楽人形は服を脱がせると実はほとんど骨格がない。後ろからの巧みな操作によって首が大きく出たり入ったり、胴体が伸びたり縮んだりすることで感情が表現されている。おそれや悲しみは体を縮める、喜びは身体を伸ばすといった具合だ。そこでこの後ろからの操作と胴体の伸縮の動きを再現したのが「BR-01」だ。30cmほど胴体が伸縮する。胴体が伸縮することで感情表現が豊かになることがわかったという。
二号機はロボット内部に伸縮機構を入れており、現在開発中だ。また、腕は肩からではなく腰から出すことで、伸縮自在にしている。このように、「人」ではなく「人形」に近づけた構造にすることで、なめらかな動きを実現できるのかと考えているという。実機デモは1号機「BR-01」を使って行われた。
東京工芸大学 連携最先端技術研究センター
東京工芸大学 連携最先端技術研究センターは「教育コミュニケーションロボット」を紹介した。先生、TA、オブザーバーそれぞれの役割ロボットが教育を支援するというもの。画像・音声・生体情報を取り込んで学生の状態を推定。一般的な知識をデータマイニングしてその知識を用いて 色情報の効果も合わせて学習コンテンツを提示してインタラクションを行う。エージェント技術、巡回しながらのインタラクション、基礎的なコミュニケーション用発話、人を褒めるといった効果を検証しながら未来の教育を進める研究を行っているという。
CYBERDYNE 装着型サイボーグ「HAL」、除菌・清掃ロボット「CL02」
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CYBERDYNE株式会社は人とサイバー/フィジカル空間を融合するサイバニクス技術としてHAL医療用、HAL自立支援用、そして除菌・清掃ロボットを紹介。「HAL医療用」は脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進する装着型サイボーグ治療機器。「HAL自立支援用」は高齢者からアスリートまで、身体機能の維持・向上を促す装着型サイボーグだ。
HAL医療用の一例として、ギランバレー症候群の人が「HAL」を使うことで徐々に歩行ができるようになった事例を紹介した。最終的には走れるようになるまで改善が進んだという。様々な病気に対して医療機器として展開できるよう、診療データが集まっており、退院後は非医療機器ではあるが、自宅で腰タイプなどを使って健康維持・向上を促進することもできる。
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「HAL」は病気だけではなく介護現場の人にも使われている。腰を痛めて退職する人が多いなか、起き上がりや移乗介助を助ける。また、建設や農業・物流などの現場でも使われている。
除菌・清掃ロボットは高性能レーザー及び3Dカメラにより高速自律走行で除菌・清掃できる。
イオンモールの配送ロボット
イオンモール株式会社はショッピング用のモビリティ、配送ロボット、AIインフォメーションを紹介した。イオンモールは140のショッピングモールを運営するディベロッパーである。ライフデザインディベロッパーとして新しい価値の提供を目指して運営している。イオンは2019年に「スマート・イオンモール」という構想を発表した。デジタル技術を使って来館前から帰宅までの顧客利便性をあげていこうというものだ。フロアガイドサイネージやアプリ、決済手段などのほか、ソリューションの一つとして、移動サポート用として電動車椅子のようなモビリティ「SCOO」の活用を進めている。
館内配送ロボットとしてはPudu Roboticsの「Bellabot」を試験導入している。現在、上尾、川口、白山の各イオンモールで実証実験を行っている。配送ロボットの作業はフロアマップなどのチラシ配り、店舗からサテライトスペースへのカフェ配送、ロボット本体でのラッピング広告だ。小型AIインフォメーションは館内インフォメーションカウンター業務をチャットボットで代替しようというものだ。
茨城県・筑波大学 立位移動型モビリティ「Qolo」
筑波大学 門根秀樹准教授は「Qolo(コロ)」という車椅子ユーザーが立ち上がることができる立位移動型モビリティを紹介した。車椅子に座った状態では高いところに手が届かない課題に挑む。「Qolo」はモーターや電気制御を使わず、ユーザーの身体の位置とバネと骨格だけを使って立ち座りをサポートする。
具体的にはユーザーは、膝の部分にバネを備えたロボットを装着することで、体を前に傾けると立ち上がりのサポートが働き、後ろに傾けると座ることができる。脊髄損傷で下半身に全く力が入らない人でも立ち上がれることを実験を通して確認している。筑波大学附属病院で実際の車椅子ユーザーと協力して、屋外を含む環境で実験を行いながら開発を進めているとのこと。
移動自体は電動モーターを使うことで、立ち姿のまま移動することもできる。「手が高いところに届くことで車椅子ユーザーの就労機会も増える。全ての人にとってストレスが少なく選択肢が広がる社会の実現につながるのではないか」と考えて2021年にスタートアップを立ち上げ、2023年を目処に社会実装を進めているという。ズボンタイプのハーネスで体を支えるタイプも開発している。
神奈川県・スマートロボティクス 紫外線照射ロボット
スマートロボティクスは殺菌灯搭載ロボット:紫外線を照射し、非接触で表面殺菌・空気殺菌を行うロボット「SR-UVC」を紹介した。現在、30機ほどが全国の病院でクラスター対策に用いられているという。このロボットについては「ロボスタ」でも何度も紹介されているので、合わせてご覧いただきたい。
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神奈川県・富士ソフト「PALRO」
富士ソフト株式会社はコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」を紹介。富士ソフトでは「PALRO」を2012年から介護のパートナーとなる人型コミュニケーションロボットとして販売しており、現在1400以上の施設で活用されている。PALROを活用して利用者の機能改善やQoL改善、介護業務負担の軽減を進めている。
最近の研究では、コミュニケーションロボットとの応答であっても認知症の早期発見・早期対応に寄与することが可能なのではないかと考えられる知見を得ているという。利用者からも好評で、会話が増える、気持ちが和むようになっていると言われているとのことだった。
「PALRO」はコンシューマー向けにも展開されており、ギフトパッケージとして商品化されている。PALROと高齢者の会話内容は専用アプリを通じて閲覧できる。また感染症予防の啓発や、宿泊療養者とのコミュニケーションそのほかにも使われている。今後は在宅高齢者を対象に、「PALRO」の対話・行動データや、クラウドに上げられたバイタルセンサからの情報との連携を進める予定だ。
ロボットで済発展と社会的課題の両方を解決
最後に文部科学省 科学技術・学術政策局長の千原由幸氏は「多様な人がストレスなく暮らせるユニバーサル社会の可能性を感じる展示だったと考える。『第6期科学技術・イノベーション基本計画』では経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会『Society5.0』が日本の目指すべき未来像として掲げられている。ロボットはサイバーとフィジカルをつなぐ役割を担う。身体をサポートしたりサービスを提供するロボットが未来社会を実現していくものと考える。文部科学省も関係省庁と共に『ロボット大賞』の表彰も行っている。今後も社会実装や技術開発に協力していきたい」と締めくくった。
ユニバーサル未来社会推進協議会
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!