NVIDIAが描く Beyond 5G と 6G通信の未来 GPUとDPU搭載のコンバージド「Aerial A100」でテレコム分野に本格展開へ

GPUやディープラーニング関連技術で知られるNVIDIAは、「5G/Beyond 5G」「6G」などの通信テレコム領域にも注力し、本格的に展開していくことを日本の報道関係者向けに本日発表した。GPUとDPUを両方搭載した次世代コンバージド アクセラレータボード「A100」を今年後半にも発売する。

エヌビディア合同会社 デベロッパー リレーションズの野田真氏が登壇


NVIDIAがなぜテレコム領域に?

グラフィクスやAIに注力してきたNVIDIAがなぜテレコム領域に? と疑問を持つ読者も少なくないだろう。NVIDIAがテレコム領域に注力する最大の理由は、同社が新しくリリースした「DPU」や、既に市場に普及している「GPU」が、この分野にとってとても有効な技術となるからだ。「5G」のサービスは各キャリアとも通信可能エリアを拡充している最中だが、テレコム業界の話題は既に次世代の「Beyond 5G」や「6G」についてへ移行している。これらの分野で、DPUやGPUの需要が大きく見込んでいる。

今まで既にNVIDIAは様々な分野でイノベーションを起こしてきた。特にグラフィクスとAIの領域では他社の追従を許さない技術力とシェアを持つ


「DPU」とは? CPUの役割を軽減してパフォーマンスを向上

「DPU」はData Prosessing Unitの略で、高度な演算処理能力を持ったICチップ、 NIC(ネットワークインターフェースカード)に搭載される。製品としては「NVIDIA BlueField-2 DPU」が発表されていて、これをネットワークサーバ等に装着することで、CPUのネットワーク関連の作業を代行させ、CPUの負荷を大きく軽減(オフロード)できる。

NVIDIA BlueField-2 DPU ネットワークボード

NVIDIA BlueField-2 DPUの利点(上画像の左)

こうしてCPUが本来作業すべきタスクに集中することで、全体のパフォーマンスを向上させることができる。NVIDIAの見立てでは、CPUは本来の作業以外に約30%のリソースが使われているとし、それをDPUに代替することで効率化していく考えだ。

左が従来のCPUの作業内容(青色の部分)とNICの作業内容(紫色)、右がCPUの作業を一部DPUに代替(紫色)してオフロードした場合のCPUの作業内容(CPUのネットワーク関連の作業が軽減され、その代わりに本来、CPUが専念すべき作業を増やしている)


DPUの開発環境として「DOCA」を提供

GPUの実装した開発を効率化するためにソフトウェアスタックとして「CUDA」(クーダ)を用意してサポートしてきたように、DPUでは開発者向けソフトウェアスタック(フレームワークソフトウェア)として「DOCA」(ドーカ)を用意し、開発が効率的に行えるように支援する


現在、NVIDIAはグラフィクスやAI、ロボティクス、自動運転、スマートシティ、医療などの分野にSDKを提供していて、全体では150を数える。NVIDIAの成功のポイントは、ICチップやボードとしてのGPUを提供してきただけでなく、GPUを使ったAI開発ソフトウェア環境の支援ツールを充実させてきたことにある。

GPUの開発者向けソフトウェアスタックは既に10億に達し、開発者は250万にのぼっている


次世代ファイアウォールの仮想アプライアンスで最大5倍の高速化

このようなシステム展開から、NVIDIAはネットワーク関連分野の高速化に進出しているが、DPUをフルに活用した導入事例(ユースケース)としてPalo Altoネットワークスとの協業、5G網へのインテリジェントセキュテリィ技術を紹介した。Palo Altoネットワークス社は次世代ファイアウォールの仮想アプライアンスを持っているが、その転送の大部分をDPUにオフロードすることによって、最大5倍のスループットの高速化を実現したという。



NVIDIA Aerialによる「vRAN」分野への展開

NVIDIAは、これらの技術で3つのテレコム領域に注力する。NVIDIA Aerialによる「vRAN」、ビッグデータと機械学習による「ネットワーク解析」、そしてリアルタイムAIサイバーセキュリティによる「セキュリティ」だ。


「NVIDIA Aerial」は、ベースとなるハードウェアからネットワーク機能を切り離すことで、柔軟でダイナミックな「vRAN」 (仮想無線アクセス ネットワーク) 環境の実現を目指すシステムだ。「5G」以降、通信は電話やスマートフォンだけでなく、IoTデバイスやロボット、自動運転、VRやAR等を含めた高画質映像等に活用される。これらに対応するために「3GPP」(国際標準仕様を策定する組織)は5G RANの仮想化アーキテクチャでは「RU」「DU」「CU」に分割して定義している。


この3つのコンポーネントの中でも仮想化が困難(演算量が膨大)な5Gの「DU」を効率的に運用するために、NVIDIAはGPUで処理するSDKを2019年に発表した。「NVIDIA Aerial」だ。


今後、無限に増え続けるかのような機械間データのトラフィック急増に応えるため、ネットワーク・リソースのスマートな制御が求められ、これにNVIDIAは、GPUとDPU、そしてCPUの構成で対応していく考えだ。


具体的な製品も予定されていて、GPUとDPUをワンボードに搭載した「コンバージド アクセラレータ」の「NVIDIA Aerial A100」を今年後半にリリースする。



「vRAN」のアクセラレーションに「GPU」を選択すべき理由

野田氏は「vRAN」のアクセラレーションに「GPU」を選択すべき理由も述べた。それは既にある開発ツールを活用できることによる開発効率の高さと、もうひとつは汎用性だ。この汎用性についてが大きなポイントで、例えば、「ローカル5G」や「エッジAI」に活用する場合と、「Cloud RAN」で活用する場合では、GPUに必要とされる機能が異なることになる。その場合でもそれぞれに特化した器材を用意するのではなく、「ローカル5G」では「AI」のリソースを多く、「Cloud RAN」では5G RANのリソースを多く振り分けることで、同じハードウェアで対応していける可能性が高いことをあげた。NVIDIAは「5G」によって高度化するAIの推進を具現化するコンセプト「AI-ON-5G」を掲げているが、ソフトウェア・リファインドで実現できるハードウェアとして「A100」が最適であることもアピールしている。


目的に合わせてGPUの作業分担(帯域)をシームレスに調整できるメリットを紹介

野田氏は「スケールさせればさせるほど、GPUの演算処理の高さや拡張性/汎用性の高さがメリットとして顕在化する」と強調した。

「A100」を活用したvRANソリューションは、既にパートナー企業との協業が始まっていて、その一例として富士通とのプロジェクトを紹介。今年の秋を目処に「DU」の信号処理をGPUにオフロード(下の画像左)することを目指し、以降順次、A100へとオフロードしていく作業を拡大、継続して進行していく考えだ。


ロードマップ

A100の展開はクラウド事業者との連携も視野に入れていて、そのひとつが「Google Cluod」との連携だ。両社は「AI-on-5G Lab」を共同で設立することを発表している。
DPUとGPUでテレコム分野に本格展開を表明しているNVIDIA。Beyond 5G と 6Gへの注目が高まる中、今後の動向にますます目が離せなくなった。


ロボスタFacebookで最新ニュースが届く【フォロワー2万5千人突破!!】
ロボット、AI、スマートスピーカー、ビッグデータ、自動運転、xR、ドローンなど最新情報が満載
ロボットスタート「ロボスタ」 Facebbok公式ページ

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム