掃除しながら万引き抑止も 清掃・警備・案内の3機能を持つ複合型サービスロボットオムロン「Toritoss」
オムロンは2021年12月6日〜8日の日程で東京ビッグサイトにて行われた「第6回 ジャパンビルド 建築の先端技術展」内の次世代ビル設計・工事・管理に必要な技術を紹介する展示会「スマートビルディングEXPO」にて、ビル設備・空間内の状態をリアルタイムで見える化して点検業務を効率化するソリューションのほか、複合型サービスロボット「Toritoss(トリトス)」を出展した。
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清掃・警備・案内の3機能を持つ「Toritoss」
「Toritoss」は清掃・警備・案内の3機能を持つサービスロボット。大きさは幅 590×奥行 790×高さ 892mm。重さは約90kg。21.5型の大画面モニターを使って案内をし、搭載したカメラで遠隔監視を行うことができる。また、障害物を自動回避しながら床面のゴミを吸引する清掃が可能。3つの機能を併せ持つことで「24時間無駄なくフル活用できる」ロボットだとされている。
清掃能力は理論値で最大600平米/h。壁際は5cm程度まで寄ることができるという。
操作は容易で、マップと作業ルートを最初に手押しで記憶させると、そのあとはルートを自動で走行する。環境側へのマーカー設置などは必要ない。複雑な初期設定を省くことで導入を容易にした。たとえば、毎日決められた時間に起動して自動清掃といったことが可能だ。自動充電機能もある。バッテリーはリチウムイオン電池(35Ah。オプションで70Ahも選択可能)。
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また、基本的にすべての業務をクラウド機能で管理することができる。エリア管理者や現場責任者は、ロボットの稼働状態、稼働エリアや稼働時間などの運用設定、カメラ映像の確認やロボットの移動指示を遠隔で行うことができる。ロボットの機能に問題があるときはアラートで知らせる。急な飛び出しなどにも対応できる安全性により商業施設営業中にも稼働させることができ、メンテナンス面でも全国140拠点のサポート体制で安定稼働ができるとされている。
「Toritoss」はオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社から2019年12月にリリースされた。実証実験を経たあと、翌2020年11月から本格的にサービス提供を開始している。2021年12月からは、東急文化村と共同で、東京・渋谷の「Bunkamuraザ・ミュージアム」で実証実験を行なっていることがリリースされている。また、株式会社全日警と販売パートナー契約を締結しており、こちらは全日警が主体となって販売している。
価格はオプションなどによって多少変わるが、月額約20万円程度のサブスクリプション型となっている。導入施設側からの視点で見ると、特定用途だけだとすると割高だ。費用対効果を出すためには運用を工夫する必要がある。
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現在の導入台数は20台程度、使われ方は掃除から広告、万引き抑止まで
実際にどの程度使われているのか。オムロンソーシアルソリューションズ株式会社 セールスリーダー の乘友洋人氏によれば、2021年12月現在で、20台弱が導入されているとのこと。具体的には、東京都内では今夏から新宿マルイ本店、11月からは有楽町マルイ。営業時間中に、2時間置きにサイネージを表示しながら掃除を行なっている。そのほか四国の愛媛県松前町の大型ショッピングモール・エミフルMASAKI、イオン東北のマックスバリュなどの商業施設のほか、静岡県のファンケル工場などにも導入されて活用されているという。
この他にも導入が予定されている商業施設が複数あり、2022年には順次導入されていくとのこと。施設利用者がいる中でも人や障害物をよけて安全に稼働できる点が評価されているという。なお、発表されるかどうかは導入した顧客次第とのことだ。
複合用途に使えるというのが売りの「Toritoss」だが、具体的にはどんな用途で引き合いがあるのだろうか。「お客様の考え方によって全然違います。オフィスビルですと『サイネージ』と『清掃』が主な用途ですし、『警備』の観点を重視したいというお客様もいらっしゃいます。たとえばスーパーマーケットですと、特売情報を出して売上に寄与する効果を狙うところもありますし、警備員の画像をディスプレイに出して走行することで万引き防止、その抑止効果を期待されているお客様もいらっしゃいます」(オムロン乘友氏)
警備ロボットとしては、詰め所からロボットに搭載したカメラ、スピーカーなどを通して現場の様子を確認したりコミュニケーションすることもできる。このほか、チェーン店の場合は、本部から店内の状態を観察するためにも使われているという。
複合用途で稼働時間を伸ばし、社会課題に応える
競合他社のロボットの違いはなんといっても「複合型」という点にある。特に「清掃しながら他の仕事ができる」という点が評価されているとのこと。清掃機能も独自開発したものだそうだが、オムロンは清掃機メーカーではない。清掃ユニットだけを販売する予定もないそうだ。ロボットも、あくまで「複合型」という点にこだわっていると語る。
「お客様の用途とアイデアによって、いろいろな広がりがありえます。このロボットは、もともと人の雇用確保が困難であるという人手不足に応えるために開発されたものです。社会問題を解決するために清掃機能を考えましたが、それだけでなく、清掃時間以外に動かすことを考えるとサイネージ機能はどうか、さらに動かせるならカメラをつければ警備もできるのではないかと考えました。全てが単独で動くよりも、複合的に動かすことで、いかなる時間でもカバーできます。いずれにしても社会問題を解決することが目的です」(オムロン乘友氏)
今回、オムロンではロボットの他に、現在は紙で管理されているビルの運営・管理負荷をデジタル化技術で低減するためのデータ活用プラットフォーム「Facility log」のほか、センサー類を使ったリアルタイム・モニタリングや故障予兆の発見ソリューションを参考展示していた。これらも「インプットされた社会課題に応える」ことを目指したソリューション群だという。
今回は建設DX関連の展示会だけあって、紙ベースの仕事をデジタル化して管理しようという「Facility log」と同様のコンセプトは各ブースで出展されていた。しかしオムロンのそれは従来のビル管理の発想から出て来たのではなく、もともと同社が得意とする駅関連設備管理の延長として出て来たものだそうだ。これもまた顧客のニーズに応えた例というわけだ。今後の人手不足にサービスロボットがどれだけ応えていけるのか、注目している。
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!