おもちゃのアイデアが盛り込まれた「変形型月面ロボット」が月に行く!!
株式会社タカラトミーは、JAXA (国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)等と共同開発した超小型の変形型月面ロボット「SORA-Q」(ソラキュー)を発表した。「SORA-Q」はJAXAプロジェクトでは「LEV-2」の名称で、小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」に搭載されて月面に行き、画像の撮影やデータの取得を行う計画となっている。タカラトミーが「SORA-Q」の画像と動画を公開した。
おもちゃのアイデアが盛り込まれることで、世界でも珍しい球体から変形する探査ロボットが誕生した。
JAXAの「宇宙探査イノベーションハブ」共同研究提案公募の枠組みの下、2016年から JAXAおよびタカラトミーが筐体の共同研究を開始し、その後、2019年にソニーグループ株式会社が、2021年に同志社大学が加わり、4者で共同開発を進めてきた。JAXAとその共同研究チームは、この変形型月面ロボットLunar Excursion Vehicle 2「LEV-2」の愛称を「SORA-Q(ソラキュー)」に正式決定した。
「SLIM」とともに月に行く「SORA-Q」
JAXAが「小型月着陸実証機「SLIM」及び小型プローブ「LEV」の記者説明会」をオンラインで開催したことは既報の通り。
その計画では、JAXAの「SLIM」(スリム)がロケットで宇宙に打ち上げられ、その後、自身の推進機構で月まで移動し、着陸する実証を行う。着陸の直前に「SLIM」に搭載された「LEV-1」と「LEV-2」(SORA-Q)を射出する。
「LEV」は2種類のプローブで構成されていて、そのうちの小さい方が「LEV-2」。「LEV-2」は月面に着陸したら、変形してレゴリス(月の表面を覆う砂)上を走行し、動作ログを取得して保存、着陸機周辺を写真撮影、良い画像を選定して、画像データ、走行ログ、ステータスを 「LEV-1」を通じて地球に送信することがミッションとなる。
月面は、地球と比べて重力が 6 分の 1 であり、またレゴリスに覆われた路面等、地上とは異なる特殊な環境。将来の月面における有人自動運転技術および走行技術等の検討に向けて必要な月面データを取得してくることを取得することを目指す。
■SORA-Q、JAXAとタカラトミー等の共同開発によって生まれた、超小型の変形型月面ロボットの映像
「LEV-2」SORA-Qとは
「SORA-Q」は、直径約80mm、質量約250gの超小型の変形型月面ロボット。月面に着陸後、瞬時に球体が左右に拡張変形し、月面を走行する。そして搭載された前後2つのカメラで撮影した画像を別の探査機を経由して地球に送信する計画だ。
開発にはタカラトミーの玩具作りにおいて培われた小型化、軽量化の知見と、変形機構に関わる技術が活用されたという。
「SORA-Q」という名前は、宇宙を意味する「宙(そら)」と、宇宙に対する「Question(問い)」「Quest(探求)」、「球体」であること、横からのシルエットが「Q」に似ていることなどから名付けられた。
「宇宙ってなんだろう?」「月には一体何があるのだろう?」 人類が問い続けてきたこれらを探求するロボットとして、そして子どもたちがこれまで以上に自然科学領域に興味を持ち、宇宙の面白さを知ってもらうきっかけとなってくれるように、との想いが込められている。
タカラトミー「SORA-Q」公式サイト
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。