職人を助けるための実用ロボット 建ロボテック、全自動結束システムを開発

2022年3月1日〜4日、東京ビッグサイトで「リテールテックJAPAN」などとの併催イベントとして「建築・建材展」が行われた。そのなかで香川県のベンチャー、建ロボテックが、同社が開発中の自走式鉄筋結束ロボット「トモロボ」を用いた「全自動結束システム」を初めて公開出展していたので、レポートしておきたい。


自走式鉄筋結束ロボット「トモロボ」

建ロボテックCEO 眞部達也氏

建ロボテックは2013年創業。創業者の眞部達也氏は建設現場出身で、現場のリアルな状況やニーズにあった「実践的な省力化・省人化ソリューション」の開発を行なっている。特に「実際に使える」ことを重視し、「より便利に。よりやさしく。」を追求しているという。

自走式鉄筋結束ロボット「トモロボ」

「トモロボ」は同社が2年以上試行錯誤して開発して2019年に市場に投入したロボット。鉄筋工事の単純作業である結束作業を自動化する協働型のロボットである。一般的な市販の手持ち電動工具をセットし、鉄筋の上を自走させることで、きつい反復作業である結束作業を自動化する。建築工事に用いられる細径(φ10〜16㎜)の鉄筋のほか、土木工事やインフラ工事に使用される太径(φ19〜29㎜)にも対応する。対応結束パターンは全結束、チドリ結束、2つ飛び結束。

「トモロボ」正面

重さは38kg程度。一回の充電で12時間稼働する。本体価格は220万円(税別)。3月1日までの「トモロボ」シリーズの実績は、派遣実績 69現場、稼働実績 269日、利用企業数は95社とのこと。この実績はゼネコンへのレンタル。導入やオペレーターへの教育まで含めて、すべて建ロボテック社が行なっている。あくまで職人や工務店が使うロボットとして導入されているという。

移動速度は安全性と管理の容易さから現状の速度に落ち着いているという。結束の速度は、8時間稼働で8000箇所。これは相当に速い速度で結束を行う人とほぼ同じとのこと。「ロボットの場合、一回あたりの速度は大して速くないが、休みなく稼働し続けることができる。1日あたりの稼働で考えると人間とほぼ変わらない。これでいいじゃないか」となったとのことだった。

トモロボのオプションも販売されている


「オペロボ」と組み合わせて全自動に

オペロボに載せたトモロボ

「トモロボ」自体には横移動する機能はなく、人の補助が必要だ。そこで今回、建ロボテックでは「トモロボ」の横移動と、人の代わりに監視をする「オペロボ」を開発。組み合わせることで、全自動で広域の鉄筋結束を行うことができるようにした。

■動画

このシステムにより、1人の監視者で、10台のトモロボを同時に運用できるようになり、大幅な省人化が可能になるという

■動画

マスターオペロボとサブオペロボが組みとなっており、相互に位置を確認し、マスターオペロボがWiFi経由でサブオペロボとトモロボに動作を指示する仕組み。

特別な通信インフラは必要とせずWiFiで四台のロボットが連携

あわせて「トモロボ」も新型となり、脱線検知機能、結束機管理機能、2つ飛び結束機能などを追加し、スピードアップした。

動作コントロールはスマホで行う


職人の所得を向上させられるロボット

全自動結束システムで人はより高度な仕事に集中できる

このシステムにより、単純な結束作業を人から解放することができる。建ロボテックでは今後、開発・改良を進めながら、まずはレンタル形式で試験提供を始める。本格提供開始後も、ビジネスモデルとしてはRaaSを想定しているという。2022年後半には遠隔管理システムも提供する予定だ。

品質管理については、あとでトレーサーを引っ張ったり、カメラを付けて後で検査するということも考えているとのこと。実験的には既に進めているが、照明条件の変化が大きいため画像認識は現場では難しいという手応えのようだ。なお現状のトモロボはカメラなどは一切使っていないので、暗闇でも問題なく稼働する。

建ロボテック 全自動結束システムの提供スケジュール

建ロボテックの眞部氏は「僕も以前は現場に出ていた。いま45歳で子供が二十歳。だけど、土日もいつも仕事で、一回も運動会に行ってやったことがない」とロボット開発の動機を語る。「単純な仕事をロボットでやらせることができれば、そのあいだに、人はもっと付加価値の高い仕事をいっぱいやれるようになる。結果的に所得に直接繋がるんです。僕たちは職人さんをなくしたくてロボットを作っているわけじゃない。職人を助けたくて作っているんです」。

建設ロボットながら「WORLD OF CONCRETE 2022」にも出展するなど、とにかく「使える」ロボットにこだわっている同社のコンセプトと思いの原点は、ここにあった。

関連サイト
建ロボテック

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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