「メタバースは本当に次のキーワードとなるのか!?」アクセンチュアが最新の5つのトレンドを発表 人々の興味や社会はこう変わる

アクセンチュアは、生活者の視点から、社会やビジネスにおけるトレンドをまとめた最新レポート「Fjord Trends(フィヨルドトレンド)2022 ~新たな日々を織り成すもの~」を発表した。このレポートでは、社会の在り方がコロナ禍を経て2年間で大きく変わり、人々と仕事、消費生活、テクノロジー、地球との関係に変化をもたらしたことで、企業はビジネスのあり方を再設計する必要があると論じている。
技術面では「メタバース」や「デジタルツイン」に触れているので、その点にフォーカスしてレポートしたい。

左は、アクセンチュア株式会社 インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター 兼 Fjord Tokyo 共同統括 グループ・デザイン・ディレクター エドアルド・クランツ氏、右は、アクセンチュア株式会社 インタラクティブ本部 シニア・マネジャー 小町洋子氏


5つのトレンド

「Fjord Trends」は、アクセンチュア インタラクティブが発行する年次レポートで今年で15回目となる。
今回の「Fjord Trends 2022」では、アクセンチュアのクランツ氏と小町洋子氏が登壇し、文化、社会、ビジネスに影響を与えるであろう人々の行動、働き方、技術トレンド等、5つの項目で紹介した。「あるがままに」「飽くなき欲望に終止符」「次なる開拓地」「真実の拠り所」「「ケア」を大切に」の5つ。

「Fjord Trends 2022 ~新たな日々を織り成すもの~」の5つのトレンド


「次なる開拓地」としての「メタバース」

この中で興味深かったのが「次なる開拓地」としての「メタバース」だ。Facebookが社名を「Meta」に変更して、メタバース開発に軸足を置くなど、近年急速に注目されているキーワードだ。一方で懐疑的な声も多い。



デジタルツイン

似たような技術に「デジタルツイン」があるが、これはBtoB市場で展開している。大規模なシミュレーション技術によって、工場や倉庫の効率化、シフト管理、商品開発等に具体的な効果を出している。BMWやメルセデスが採用していることでも知られている。NVIDIAも「Omniverse」でデジタルツインを推進していく構えだ。


メタバース

一方で「メタバース」はどうだろうか。アクセンチュアは起業して次のように見ている。
「文化的な爆発が起こると言われるメタバースは、人々がやりとりする情報、インターフェイス、空間を統合し、インターネットの「次なる開拓地」となるでしょう。メタバースは新たなビジネスの場を提供し、新しい職種を生み出し、ブランドに無限の可能性を与えます。人々は企業がメタバース上での案内人になることを期待するでしょう。メタバースは、スクリーンやヘッドセットを通してのみ存在するのではなく、物理世界での体験や場所ともつながるようになります」と。


クランツ氏は「人々はメタバースで新しいスタイルを探している」とする。「Fortnight」や「Robolox」などのゲームタイトルの潮流をトレンドとして既に無視することはできないし、「Patreon」はクリエイターとファン、パトロン(支援者)を繋ぎ、膨大なビジネスを創り出しつつある。



Qculus Quest 2の累計販売台数は1年間で460万台

クランツ氏はこれを「プレイして稼ぐ」「学んで稼ぐ」「創りだして稼ぐ」といった新しいビジネスモデルの生成がはじまっていると語り、「メタバースは単なる流行語ではなく、それを超えた存在として捉えるべきだ」とした。
更に「日本でヒットしているポケモンGOのNianticがPunchdrunk劇団と提携して、劇場での体験をARを用いて劇場の外へも展開しているし、MetaのVRヘッドセットQculus Quest 2の累計販売台数は1年間で460万台に達した。
そして渋谷のハロウィンフェスのバーチャル会場には55万人超が参加した」と続けた。
年配のビジネスマンにとってはピンと来ないかもしれないが、若者を中心に拡大していくこれらのうねりは、今後のビジネスにとって無視することはできない潮流になっていくのだろう。
そしてクランツ氏は「最近の調査では日本でも10人中3人がNFTを認知し、興味を示している」という結果を紹介した。
なお、アクセンチュアは競争環境において企業の成長を支援するため、新組織「アクセンチュア メタバース コンティニウム ビジネスグループ」を設立したことを先日発表している。


メタバース人口がもっと必要

ただし、クランツ氏はロボスタ編集部からの質問に対して、メタバースの現状と課題に対して「メタバースはBtoCで、まだ黎明期にある。アーリーアダプタを中心に注目が高まっているものの、もっとメタバース人口は増える必要があるだろう。メタバースは人が集まることが重要だ」と答えた。また、成功しているユースケースとしては「ファッションブランドやアーティストがメタバースの中でエンゲージメントをはかり、認知度を向上する活動を積極的にはじめている。例えば、ファッションブランドでは、バレンシアガ、モンクレール等がメタバースに参入している。またアクセンチュアのグループ会社であるMackevisionがCGIのマーケットリーダーとして活動し、メタバースにおける上質な体験を構築している」と語った。




アクセンチュアが発表した【5つのトレンド】


あるがままに

パンデミックから2年が経過するなか、人々の主体性の意識が高まり、働き方、人との関わり方や消費に対する考え方に影響を与えている。人々は「自分自身とは何か」「自分は何を大切にしているのか」を改めて問い直している。「組織・集団」よりも「個人」を優先する意識により、企業が社員をどのように導き、価値を提示するのか、そして顧客との新たな関係の構築について、見直しを迫られている。




飽くなき欲望に終止符

この1年、多くの人が品不足や光熱費の値上げ、日常的なサービスの不足を経験した。サプライチェーンの混乱は一時的かもしれないが、その影響は今後も続く。環境への意識の高まりや、スピーディに便利さが手に入るという「飽くなき欲望」に終止符をうつべきだと考える人が増えるだろう。企業は、世界中の人が経験した、入手困難な状況に対する不安に応えることが求められる。





次なる開拓地

文化的な爆発が起こると言われる「メタバース」は、人々がやりとりする情報、インターフェイス、空間を統合し、インターネットの「次なる開拓地」となるだろう。メタバースは新たなビジネスの場を提供し、新しい職種を生み出し、ブランドに無限の可能性を与える。人々は企業がメタバース上での案内人になることを期待するだろう。メタバースは、スクリーンやヘッドセットを通してのみ存在するのではなく、物理世界での体験や場所ともつながるようになる。





真実の拠り所

人々は今、ボタンをタップするだけで、あるいは音声アシスタントとの短いやり取りだけで答えを得ることができる。簡単にすぐに答えが得られれば、人はより多く質問をするようになる。企業から見れば、顧客から受ける質問内容やチャネルが多様化している。質問にどのように回答するかはデザインにおける大きな課題であり、信頼を得るための原動力です。また今後、競争力の源泉にもなっていくだろう。



「ケア」を大切に

昨今、セルフケア、他人のケア、ケアに関するサービス、デジタルおよびアナログのケアなど、あらゆる形態でのケアが着目されている。健康や医療に関する資格の有無にかかわらず、ケアは企業やブランドにとってチャンスであり、課題でもある。自分自身や他人のケアに関連する責任は、今後も重要であり続けるだろう。デザイナーも企業も同様に、顧客や社員との接点においてケアの要素が十分に組み込まれているかを見直すことが求められる。



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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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