アクセンチュア株式会社は、総合コンサルティングのツールとして、AIによる経営判断支援ソリューション「AI Powered Management Cockpit」(エーアイパワード マネジメント コックピット)の本格展開を2月7日より開始したことを発表した。同社が「AI Hubプラットフォーム」上で提供するAI Poweredサービスのひとつ。
AIがKPI可視化から予測、シミュレーション、警告、対応策の提案も
このソリューションの最大の特徴は「KPI可視化とアラート検知」「AIによる予測」「シミュレーション」をひとつのツールで集約して表示することができること。AIによる予測とシミュレーションで目標の設定を促すだけでなく、現状の成績とも照合し、目標の未達になる見通しの場合にはAIがアラートを出し、達成に向けた対応策を複数提示する機能もカバーしている。
既に複数の企業で「AI Powered Management Cockpit」の導入がはじまっていて、そのひとつとしてメガネブランド「JINS」を運営する株式会社ジンズも導入したことを同日公表した。また、このソリューションの効果を含めて、欠品による販売ロス(売り逃し)を約65%削減、廃棄ロスを約10%削減した、同社の取り組みの成果を発表した。
この記事では、ジンズが抱えていた課題とその解決施策、「AI Powered マネジメントコックピット」の特徴などを詳しく解説したい。
ジンズが抱えた「多品種・多モデルのラインアップに伴う課題」
ジンズは、多くの顧客の要望に沿った最適なメガネを提案するため、小ロットでバリエーションに富んだの「アイウエア」を多数展開している。しかし一方で、膨大な品種とモデルになるため、顧客の需要を予測しづらいという側面があった。また、アイウエアは使用年数が長いため、買い替え予測の精緻化が困難という課題を抱えていた。
これまでは業務担当者の知見や経験則を体系化することで、課題に対して需給コントロールの改善を繰り返してきたが「追加生産が間に合わず、やむなく欠品」してしまうことや、「在庫消化が予測通りに進まず、商品の過剰在庫が発生する」ことを完全に防ぐことはできなかった。
「AI Powered Management Cockpit」導入して効果を確認
商品の欠品は「売り逃しによる収益減」につながる課題でもある。過剰在庫は最終的に商品の廃棄につながり、サステナビリティの観点からも改善が必須と同社は判断した。
そして、この状況を改善するために、アクセンチュアが開発したAI経営判断支援ソリューションを同社向けにカスタマイズした。
具体的には、アクセンチュアが提供しているソリューション「AI Powered Management Cockpit」を活用した。
経営目標や管理指標に対する進捗状況を一覧画面で表示し、未達になる見通しの場合にはアラートを出して、達成に向けた対応策をAIが複数提示する。さらに、それぞれの対応策を講じた場合の効果も併せてシュミレーションする。
欠品による売り逃しを約65%削減、廃棄ロス約10%削減
1年強にわたるPDCA高度化の試験の結果、欠品による販売ロス(売り逃し)の約65%削減(粗利金額ベース/2019年比)、廃棄ロスの約10%削減(除却・評価損含む/2019年比)が確認された。(※過去実績との比較結果。このツールの施策だけではなく、全体での効果)
こうした試験運用を経て、AIと人による経験則を融合し、検証結果も反映してカスタマイズした独自システムの本格運用を、将来的な海外事業での活用も視野に2月7日より開始する。
ジンズはリリースを通じて「お客様のご要望にお応えできる商品供給体制を確立し、事業のさらなる成長とともに持続可能な社会の実現に取り組んでまいります」としている。
アクセンチュア「AI Powered Management Cockpit」とは
アクセンチュアが開発した「AI Powered Management Cockpit」は、さまざまな経営指標を可視化し、AIによる目標達成予測と、それに基づく対策シミュレーション等を、見やすく一元的に表示することができる。
経営目標に対する進捗状況を一覧表示し、未達になる見通しの場合にはアラートを出して、達成に向けた対応策を複数提示する。さらに、それぞれの対応策を講じた場合の効果シミュレーションも併せて提示することで、データに基づく未来予測型の経営判断を支援する。
AIが現状のリスクを検知し、対策の提案を複数提示
例えば、欠品や過剰在庫といった指標でリスクを検知した場合、追加発注や倉庫間の移動、売値の変更など、様々な対応策をAIが提示する。さらに、経営層に向けては、市場動向やサプライチェーンの情報など、まだ顕在化していない将来的なリスクも踏まえた効果のシミュレーションも併せて提示する。
また、意思決定者がAIの提案と違うアクションを取る場合も、その判断によって売上や利益率、在庫状況などの各指標への影響をAIがシミュレーションを提示し、結果を予測する。
さらに、決定された経営判断は、接続されている基幹システムを通して関係各所とリアルタイムに連携され、シームレスなアクションにつなげることが可能となる。このように、意思決定の結果をも蓄積していくことで、継続的な予測精度の向上と提案の高度化につなげることができる。
アクセンチュアは今後、AI Powered Management Cockpitを需給や顧客ロイヤリティ指標などの業績関連数値のシミュレーションだけでなく、サステナビリティ関連などの非財務指標も含めた幅広い企業価値シミュレーションへと機能拡張、幅広い業界に導入を進めていく考えだ。
データを基にした未来予測型経営への改革をAIで支援
AI Powered Management Cockpitの本格展開にあたり、アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 AIグループ日本統括 AIセンター長 マネジング・ディレクターで博士(理学)の保科学世氏は次のようにコメントしている。
保科学世氏
将来の不確実性がこれまで以上に増す中、データを基にした未来予測型経営への改革をAIで支援することで、ビジネス成長のみならず、現場社員の業務負担の軽減などの働き方改革や生産資源の効率化などのサステナビリティといった、幅広い価値の提供につなげられることを喜ばしく思います
■AI POWEREDマネジメントコックピット