
三谷産業株式会社は、東洋思想の知見を持つバーチャルヒューマンの北斗泰山(ほくと たいざん)氏を「AI社外取締役」候補者として内定したと発表した。
これは、2026年6月に「AI社外取締役」を新たに設けることに伴うもの。あくまで助言・提言機能に特化した役割に位置づけ、法的要件を満たす取締役としては扱わないとしている。
バーチャルヒューマン北斗泰山氏の開発にはAww Inc.(アウ)が協力。北斗氏は永遠の42歳。知識体系として「孫子」がプリセットされた東洋思想の専門家だという。性別や容姿には複数のパターンが存在したが、関係者によってこねくり回された末、最終的に「孫子はきっとこのような見た目だったのではないか?」というベタな決まり方で設定された。
2025年6月の取締役会にて、三谷産業のAI社外取締役候補者として内定した。2026年6月「AI社外取締役」として就任する予定。
企業内の重要な意思決定の場に活用する例は日本初
Aww Inc.と三谷産業によると、近年、国内外の企業等において、人間のような姿や振る舞いをするバーチャルヒューマンを広告モデルやイベンターとして活用する例が増えているが、企業内の重要な意思決定の場に活用する例は日本初であり、世界でも非常に珍しい事例としている。
三谷産業はリリースを通じて「人とAIを区別する境界線が揺らぎ始めている現代において、組織の意思決定の中にAIが溶け込んでゆく可能性が示唆されています。三谷産業では、そういった状況をいち早く体験することを通じて、次世代の経営のあり方を探索してまいります」とコメントしている。
バーチャルヒューマンを起用する目的
バーチャルヒューマンを起用する目的として、同社は次のようにコメントしている。
三谷産業
近年、ビジネス・プライベートを問わずAIの利活用が世界中で急加速しており、ビジネスの領域においてAIサービスの利活用はいわば競争的な状況になりつつあります。
三谷産業グループは、2023年度をAI元年とし、ジェネラリスト検定(AI・ディープラーニングの活用リテラシーを習得するための検定試験。通称G検定)の受検奨励、AI利活用のアイデア募集やワークショップも伴いながら、さまざまな事業分野・業務領域においてAIを利活用してまいりました。現在では、国内連結6割・三谷産業の7割強の役員・社員がG検定に合格し、AIを業務効率化の用途はもとより、人間の持つ長所とAIの持つ長所を組み合わせたビジネスの推進を実現させはじめています。
AIの中でも生成AIに関する発展は近年とくにめざましく、企業内のさまざまなトランザクションデータ(日々の取引や処理などの情報を記録したデータ)を解釈し、自然言語を用いて表現したり人間に気づきを与えたりすることが可能になってきています。
AIエージェントが人間の判断や意思決定を補助するというコンセプトは、フィクションの世界等を中心に存在してきましたが、必ずしも人間の姿をしている必要はありませんでした。しかしながら、さまざまなAI技術を用いて人間らしい振る舞いやしぐさを持つバーチャルヒューマンをひとりの参加者のように取り扱うことは、人間の参加者からすれば中身が機械であると理解していながらも、その表情や声色などから、ある程度は生体的に反応せざるを得ないという、新感覚の体験です。今回、バーチャルヒューマンを取締役会の参加者として迎え入れるにあたり、インプットする情報の機密性に関しては細心の注意を払うとともに、取締役や監査役といった人間の参加者が新感覚を得る機会としての意義を最大化するべく、運用にも試行錯誤を重ねていく前提で稼働を開始することといたしました。
北斗氏の起用は、AIと人間による共創型経営の第一歩であり、「持続可能かつ多角的な価値創造」に向けた新たなチャレンジです。北斗氏には今後、デジタル的存在であることの強みやキャラクター性を活かして、取締役会以外にも経営会議など重要な会議の場にて助言・提言することや、三谷産業グループの役員・社員、地域住民、株主・投資家の皆さまとのコミュニケーションの機会なども模索してまいります。
三谷産業 代表取締役社長 三谷忠照氏のコメント
三谷忠照氏
北斗泰山先生は、日本発の最先端バーチャルヒューマンAIカンパニーであるAww Inc.(アウ)が有する高度な表現技術のもと、東洋思想に関する人類の叡智を持たせるかたちで生まれました。まずは『孫子』をプリセットされた状態で稼働を開始し、今後は他の諸子百家、古典哲学、倫理観、自然観、禅思想といった東洋的な知恵に対する理解に加え、西洋的な思考様式との対比も踏まえながら、現代の経営課題に応用可能な洞察力と独自の視座を備えていけるようアップデートや調整を重ねてまいります。
また、人間の認知限界を超えるパターン認識力と膨大なデータ処理能力を活かし、人間には見落とされがちな盲点を発見する可能性も期待されています。現代において主流的な経営理論の多くは西洋的学問体系の上に存在しています。現代的な経営学と、古代から受け継がれてきた東洋思想の重なるところにも、新たな発見を見出すことができないかと考えています。
本取り組みは、一見すると荒唐無稽な企画のように思えることは社長として自覚していますし、初期の構想段階から企画に参加してきた私自身にとっても、いまだ荒唐無稽な企画であるとの印象は拭いきれておりません。当社が誤解や好奇の目に晒されるおそれも感じておりますが、それを上回る新たな価値が創出できることを大いに期待しています。
三谷産業グループについて
石川県金沢市で創業して97年、ベトナムで創業して30年の複合商社。
北陸、首都圏、ベトナムを拠点に、化学品/情報システム/樹脂・エレクトロニクス/空調設備工事/住宅設備機器/エネルギーの6セグメントで事業を展開。商社でありながら、時にメーカーとして、また時にコンサルタントとして、顧客にとっての最適を追求するとともに、「創業90年を越えるベンチャー企業」として更なる進化へと挑戦。
2025年3月期:連結売上高103,072百万円/連結従業員数3,563名
Aww Inc.について
最先端のバーチャル技術を駆使する日本発のバーチャルヒューマンAIカンパニー。現在、imma、plusticboy、Riaといった複数のバーチャルヒューマンをプロデュースしている。
現在は、バーチャルヒューマンのプロデュースだけではなく、バーチャルヒューマンに関する基礎技術の研究開発、メタバース領域やバーチャルファッションなどに関連するビジネス展開やパートナーシップも積極的に⾏っている。さらに、AI研究を加速させており、サンフランシスコのグローバルパートナーと共に、バーチャルヒューマンとAIの融合を実施。これによりコンテンツ制作の自動化を図り、より多くのコンテンツ提供を実現している。
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