「メタバース」は学習効果にどう影響するか? 学生15名がアバターの姿で授業に参加する特別授業 デジタルハリウッドが実施

ICT関連及びデジタルコンテンツの人材養成スクール・大学・大学院を運営するデジタルハリウッド株式会社とNSGグループで福島県郡山市で専門学校5校を展開するFSGカレッジリーグ 国際アート&デザイン大学校(以下、A&D)は、アバター生成・着用アプリケーション「beCAMing」(ビカミング)を活用し、学生・教員共に全員がアバターの姿で授業に参加する「メタバース授業」の実施に向けて連携を開始し、その先駆けとして2022年5月23日にbeCAMingを使用した特別授業を実施したことを発表した。


アバターの着用が学習効果にどのような影響を及ぼすか

デジタルハリウッドでは現在、「オンライン授業と対面授業の二項対立から脱した質の高い教育を実現」するための「メタバース」活用方法とは何か、並びにメタバースを活用した授業の学習効果検証に取り組んでいる。その先駆けとして、5月23日に福島県郡山市の専門学校「国際アート&デザイン大学校」にてbeCAMingを使用した特別授業(実証授業)を実施。当日は地元メディアによる取材も行われた。デジタルハリウッドによると今回のような実証実験は、専門学校では初めての取り組みとなる。

NSGグループでは教育のICT化を担当するEd-Tech推進室が、コンテンツのデジタル化やICTを活用した効果的な授業の在り方をグループの専門学校と進めている。その一環として、今後はA&DならびにEd-Tech推進室とデジタルハリウッドが協同してアバターの着用が学習効果にどのような影響を及ぼすかの検証をすすめ、レポートを続けていく予定。

NSGグループについて
教育事業と医療・福祉・介護事業を中核に、健康・スポーツや建設・不動産、食・農、商社、広告代理店、ICT、ホテル、アパレル、美容、人材サービス、エンタテイメント等の幅広い事業を展開する110法人で構成された企業グループです。それぞれの地域を「世界一豊かで幸せなまち」にすることを目指して、「人」「安心」「仕事」「魅力」をキーワードに、地域を活性化する事業の創造に民間の立場から取り組んでいます。


beCAMingを使用した特別授業(実証授業)

「beCAMing」(ビカミング)は2021年11月にリリースした、デジタルハリウッド、キッズプレート、Pocket RDの三社協同による学発プロダクトで、オンライン授業のためのアバター生成が簡単に行え、オンライン上で装着できるアプリケーション。デジタルネイティブの価値観に寄り添う、オンラインファーストの学校づくりを支援することをミッションとした文教向けのサービスで、専用機材が必要なく、安価に使用できるところが大きな特徴。

beCAMingを使用し、アバターを動かしている様子

5月23日に実施した特別授業の講師は、デジタルハリウッド大学大学院 佐藤昌宏研究室研究員の小林英恵氏が務めた。授業のゴールを「学生がオリジナルのアバターを着用の上、オンライン上で2分間のプレゼンテーションを行うこと」と設定。「自分をどのように演出するか」「どう見られたいか」をテーマに、それぞれ外見・性格・口癖等を決めキャラクターシートを約40分で作成。その後VRoid Studioを使用し約1時間でアバターをデザインし、beCAMingを通してアバターを着用したうえで、学生が一人ひとり作成したキャラクターの自己紹介プレゼンテーションを行った。また、アバターを着用することで変化する心境や行動、発言内容の変化などについても講義を行った。


アバターの持つ外見的個性が、着用者の行動にも影響を与えるという実験結果について、学生らは驚きながらも「陽気な見た目のアバターを着用すれば、授業中ももう少し積極的になれそう」とコメント。アバターを通したコミュニケーションについて理解を深めた。


授業中の学生の様子

参加した学生は声優科に所属する1、2年生の計15名で、「自分らしさ」を詰め込んだ思い思いのアバターを作り、オンラインでのコミュニケーションを楽しんでいる様子だった。授業の前半ではカメラオンにし実写で参加、授業の後半はbeCAMingを使用してアバターで参加した。アバターでの参加は実写での参加に比べ、講師の呼びかけや他の生徒に対する反応がより多く見られたという。beCAMingの機能であるスタンプを使ったリアクションのほか、拍手・挙手等のコマンドを使用し、積極的にコミュニケーションを図る姿が見られ、2時間半に及ぶ特別授業が「あっという間だった」との声も寄せられた。


アンケート結果と学生・教員の声

【アンケート結果】
授業満足度平均4.7点(5点満点)

【学生の声】
・アバターを用いることで授業が受けやすくなったり、キャラクターに愛着が湧くということが分かりました。(声優科 1年)

・アバターになることで、授業内で発言がしやすくなりそうだと感じました。また、カメラをオンにしなくてよいので、プライバシーを守れるので良いと思いました。(アニメ声優科 2年)

・今後オンライン授業や、授業外の活動として、アバターを使った配信などでbeCAMingを活用して行きたいと思いました。(声優科 1年)

【教員の声】
国際アート&デザイン大学校アニメ声優科 教員 矢田部翔子 氏
バーチャルライバーとして顔出しをせずに声や歌の活動をしてみたいという学生の声もあり、今回の特別授業は非常に学生満足度の高いものとなったと感じています。アバターを作成したり、beCAMingを使ったコミュニケーションにより、普段以上に意欲的に取り組む学生の姿がありました。今後、学生のYouTube等でのバーチャルライバーデビューや動画作成、オンライン授業等さまざまなことにアバターを活用していきたいと考えております。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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